第5話:異世界到着
「…………」
光りに包まれたままに気を失い、そしてどれくらいの時間が経過しただろうか。
真っ白な景色が少しずつ薄らいでいき、回しの景色が少しずつ鮮明になってゆく。
ここはどこだろうか。
普通の人の場合は気になるに違いないだろう。
が。
「うわースゴイね! まるで西洋の城下町のようだ!」
異様に順応性が高いで評判が高いと言われる葉々見我 勲造。
どんな虫歯も患者さんの都合に合わせて治療していたおかげで耐性がついていた模様。
異世界でもきっと活躍するに違いない。
「ねーママー! あの真っ白な衣服をきた声がやたらデカイおじさんナニー?」
「うーん、お医者様じゃないかしら。うちの国とは少し違うようだけど。それにしても声がデカイわねー」
勲造が目覚めたのは、とある世界のとある国。
その中の、とある城下町のとある噴水広場。
つまりは人がかなり集まる場所である。
そんな中で、いきなり妙な大声を上げれば、大体の人はビクッとなるだろう。
現実世界で言うならば、渋谷パ●コの店内で突然大声を上げているようなものだ。
やべーというか、正直関わりたくないという気持ちになる。
「ねえ、そこのお姉さんっ!!」
「えっ、あっ、はいっ!?」
順応性が高い勲造は、早速目覚めて最初に目に入った一人の女性に声をかける。
先程、声がやたらデカイと評していた子連れの母親のことだ。
人に話しかけるときは笑顔が大事! 患者さんにも安心していただけます。
「ここって何という世界ですか!? どういう国ですか!?」
「……は、はぁっ!?」
例えば渋谷パ●コで店の中でいきなり知らないおっさんから、
ここって何という場所ですかっっ!? なんという国ですかっっっっ!!!!!?
なんて訊かれた日には、ガン無視して逃げ出したくなるだろう。
しかも迷いのない満面の笑みだ。逆に怖え。
――だが、異世界の住人も負けていなかった。
「ここは"シーカイン"という世界で、この国はその統治国家の
一つ"イン・ラプト"という場所です」
「そうなんですねー! ありがとうございます!!」
お礼を言って納得する勲造。
とりあえず聞いたことがない場所だけれど、地名がわかればとりあえずヨシッ!
ちなみに質問に答えた子連れの母親も実は順応性が異様に高い。
普段は商店を営んでいるが、時折万引き犯が窃盗することも有るため、魔法で即座に仕留める機会が多いためである。
得意な魔法は地面から植物を生やし敵の足に絡みつけて抑えるプラントアップ!
絡まった草は最後は火で燃やさないといけないため火炙りの処刑も兼ね備えた残虐な技だぞ!
そんなわけで、勲造のイン・ラプトの探索が始まる。