第3話:業務終了後
そんなこんなで診療を終えた夜7時――
「じゃあ皆さん、本日もお疲れさまでした。治療で沢山の人に喜んでもらえた良かったですね!」
「爽香さんもお疲れさん! 冷蔵庫にプリンが有るから持って帰っていいからね!」
「わぁ、ありがとうございます。でもプリンはもう勝手に全部食べちゃったので、脳内で思い出しながら楽しみますね!」
「えぇっ!? それは早すぎだよぉっ!」
「でもちゃんと口を濯いで高濃度フッ素の歯磨き粉で3分磨きましたから大丈夫です」
「良かった! それなら問題ないね!!!」
「えぇ……勲造くん、それでいいの?」
「勲造さんは歯の事しか頭にない歯科歯科人間ですからねー。会話の時空が歪むなんて今に始まったことじゃ無いっすよ」
「それもそうね」
葉々見我 勲造は歯をきれいに保てているなら大体の事柄は許しちゃう。
甘いものを食べたら、早めに歯を磨いてあげようね!
「あぁそうだ勲造くん」
「はい、何でしょう栄子さん!」
口を開けて第二小臼歯をキラーンと見せる姿を軽く流しながら。
「医院の奥にある開かずの金庫なんだけどね、なんか奥が光ってたみたいなのよ」
「へぇ、なんか怖いですね! エナメル質の乱反射かな!?」
という勲造の言葉を流しつつ。
「確か前の持ち主が夜逃げかなんかでドロンしたときに残ったやつって言ってたっすね。重たくて持ち運べないし、撤去費用がかさむからって」
「はい、その分賃料を安くするからということになっています」
おかげで都内のど真ん中に構えられている葉々見我歯科医院
歯科医院がちょっとボロい賃貸に有るのは、保険診療云々だけだと、あんまり賃料の高い場所を借りられないからだよ!
これは日本の保険制度がちょっとガバなのかもしれないね!
「ま、そんなわけでちょっと気になるから、開けられるなら薫造くん見ておいてもらえない?」
「はい! 良いですよ!」
「このサラリと無理難題を押し付ける人と快諾する人のスムーズさやべえw」
葉々見我 勲造は歯間ブラシしながら爽快にOK!
普通の歯磨きだけじゃ汚れは落としきれないからね!
隙あらば1日1回は歯間ブラシで掃除しようね!
そんなわけで、勲造は皆が帰宅した後に、開かずの金庫を調べることになった。