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散華のカフカ  作者:
三部 飢餓の弓
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十八章 首都陥落作戦-第四首都 其の参-

闇に染め上げるは黒き執事の決戦場。

 影縫は自分がビルの上から自らの体が自由落下している事に気付くとすかさず影に潜るとビルの一部に入り込み、全員の安否を確認した。


(全員生体反応には○がついておりますね。ラスコーさんとブローニャさんは一緒の所に居ますか。一先ずは安心していいかと。さて、ここからどういたしましょうか。(クアク)さん、ラスコーさんと合流をしたい所ではあるのですが、御二方、些か遠いですね)


 影に潜りながら考えていると唐突にビルの一室のドアが開き、光が照らされる。すると影の中に居た影縫は影が消されたことにより、影の中から強制的に追い出されるとそれに向けて銃弾が放たれていた。


生命開放(オープン)絶影海(カゲウミ)


 短く呟くと影縫はその弾丸を止める為に自らの下に生まれた影を動かし、吸い込む。そして、自らを襲った弾丸が放たれた方向を見つめ再び口を開いた。


「私が影を使うという情報を知っていてここに向かい入れたのでしょう?流石の手際ですね。ユリウス様」


「ユリウス様?笑わすなよ影縫。お前を殺すのにあのお方のお手を煩わせる訳ないだろう」


 低い声はドアの暗闇からすると黒いスーツに身を包み、両腕に二丁拳銃を携えた執事姿の男が姿を現した。


「久しいな、影縫。覚えてるか?」


 カツカツと足音を立てながら影縫の近くに立つと銃を頭に突きつけ引き金に指を置く。


「お久しぶりですね、クロードさん。ダルタニャン様の所を去ったぶりでしょうか」


「ああ、そうだよ、覚えていてくれて何よりだ。そして、残念だ。もうお別れになるとはね」


 そう言うとクロードと呼ばれた男は引き金を引くことに躊躇は無く、一瞬にしてそれは引かれ、ドンという音と共に影縫の頭を吹き飛ばした様に見えた。


 しかし、それを影縫は既に開放していた影を使い弾丸を再び吸い込み、彼に向けて蹴りを入れて距離を取ると自らの影を広げて攻撃を放つ。


 影は部屋一杯に広がるもクロードは避ける事なく、堂々とした態度で己の武器の力を引き出した。


生命開放(オープン)絶光臨(コウリン)


 光の輪が背中に三つ現れるとそれが影の海を蒸発させ近づけさせず、圧倒する。


 クロードは三つの輪を地面に放つと光は実体化しており、それを伝い飛び回った。そして、一瞬にして影縫の目の前に現れると銃口を向け、引き金を引く。


 影縫はそれを再び自らの影を広げて暗闇に吸い込むと距離を詰めてきたクロードに目掛けて攻撃を放つために彼もまた短く言葉を紡ぐ。


生命開放(オープン)絶影海(カゲウミ)・朧」


 影が腕に刃を作り出し、それを振るうと銃弾を切り裂きそのまま目の前にいるクロード目掛けて刃を振り下ろした。クロードはそれを両腕の銃身で受け止めると近距離で互いの武器の打ち合いを始める。


 影縫が使う絶影海・朧は影を極限まで薄くする事で強靭な刃を作り上げており、銃などは簡単に切り裂けるはずだった。しかし、クロードが持っている二丁の銃は切れる事なく影縫と打ち合い、一瞬の隙を突くと再び引き金を引くと共に光の刃を襲い掛からせる。


 影の刃と光の刃がぶつかると影が一瞬にして打ち消され、弾丸が影縫の肩を貫いた。


「一発目」


 クロードはそう言いながら背後にあった三つの光の輪を影縫に向け放つと吐き捨てる様に呟く。


生命開放(オープン)絶光臨(コウリン)小惑星(プラネット)


 影縫に放たれた光の輪は三つともサイズを変え、同じサイズになると速度が速くなり、地面の影の海を切り裂きながら襲いかかる。


 影縫はそれを影の刃で防ぐもすぐにそれは破られてしまい二つの小惑星が舞う様に彼の体を切り裂いていく。しかし、それをものともせずに影縫はクロードとの距離を詰め、その刃を再び拳銃とぶつかり合わせた。


「自分から距離を詰めるなんて正気か?」


「あなたの首を取るには距離を詰める以外に答えはありませんよ」


 腕から伸びる影の刃と二丁の拳銃がぶつかった瞬間、先程放たれていた光の小惑星が影縫の背後から再び容赦なく襲いかかる。それに気づいた影縫はすぐさま影の壁を作り出し、防ぐとクロードの体に目掛けて蹴りを入れた。クロードの体に放たれた蹴りは両腕で防がれてしまい、彼は直ぐに立て直すと影縫の体に目掛けて銃弾を放つ。


 二つの攻撃が同時に襲いかかり、絶体絶命の影縫であったが至って冷静にその状況を処理し始める。自分の腕の影を鞭の様な形に変えるとそれを部屋の天井に伸ばし、それを一気に元の形に戻し自らの体を跳び上がらせた。


 三つの光の輪は獲物をそこにいたはずの獲物を見失うと浮遊しながらクロードの下に戻って行き、ピタリとその場で動きを止める。すると、クロードは影縫に目掛けて武器を構える事をやめ、天井に張り付いている彼に喋りかけた。


「なぁ、影縫。何で、ダルタニャン様の所を出て行った?」


 クロードの予想外の質問に一瞬戸惑うものの天井から飛び降り、彼と同じ目線に立つと影縫はそれに答える。


「いえ、好きで出て行った訳ではありません。最初はダルタニャン様の命でジュダ様に仕えました。ペトゥロ様のご学友でありながら盟友である人をダルタニャン様はお見捨てになる事が出来なかったのだと思います。私もそれに納得し、彼に仕える筈でした。しかし、ジュダ様とお付き合いさせて頂き、私は自らから彼に仕える事を決めました。理由は一つ、彼はいつも無茶をするのですよ。誰よりも、誰よりも無茶をして、いや、し過ぎるのです。それだから私は彼の横で彼のその無茶のお手伝いをしたくなった。最初は他本意で始まった執事でありましたが今は本意で貴方達と敵対するのです。それ故に、私は今から本気で貴方の首を取ります。ご覚悟を」


 影縫の両腕から再び影の刃が伸びるとクロードはそんな彼を見ながら二丁の拳銃と光の輪を広げて少しだけ満足そうに口を開いた。


「ふん、そうか。なら、ますます負けられないな。かつての俺はお前の事をライバルと思っていた。だが、そのお前には俺が見えていなかったらしい。漸く、ハッキリしたよ。俺はお前を殺して自分の執念から卒業する」


 そう言うと会話は終わり、クロードと影縫は互いに口を紡ぐと再び武器を構え、互いの首を目掛けて走り出す。


 三つの光の輪は地面を切り裂きながら影縫に飛んでいくもそれを彼は自らの影を短剣の様に変え、投げぶつけた。影の短剣は簡単に打ち消されるも少しだけ軌道がずれ、影縫はほんの一瞬だけ生まれた隙で自らの闇の最奥を世界に顕現させる。


生命開放(オープン)絶影海(カゲウミ)深乖(シンカイ)


 影は深い眠りの海を呼び覚まし、辺りを一人で勝手に黒く染め上げる。


 最初にぞくりととした感覚と強烈な違和感がクロードに襲いかかった。


 すると影の短剣に弾かれ、遅れた光の輪は何故か消えていた。


 それに最初に気づいたのは影縫では無く、クロード本人であり、彼の危険信号が赤と告げるや否や、向かってくる影縫から離れようと逆方向へと踵を返そうとする。


 しかし、何か自分に一番身近にあった物に足を掴まれるとその場に転んでしまった。


(な?!さっきまで転ぶ様な物なんて落ちて無かった筈?!これは?俺の、影?)


 自らの足を自らの影が地面から離さずに縛り付ける。幾ら動こうとも、足掻こうとも、それに意味はなく徐々に自らの体が自らの影に侵食されていった。


「影縫!お前ええええええええええええ!真剣勝負の筈だっただろう!?何なんだ?!これは?!!!これがお前のやり方か?認めてやったのに!俺はお前の事を認めてやったのに!」


 クロードは体の殆どが影に呑まれながらも最後に残った右手で影縫に目掛けて銃を握り、それを何度も、何度も尽きるまで打ち続ける。


 しかし、それは無情にも影そのものになった影縫には意味はなく淡々と闇に吸い込まれて行く。


「こんな!こんな決着があり得ていいのか?!こんな事が!こんな!事、がぁぁ......」


 クロードの体は闇に呑まれる直前に頭と首が離れ落ち、ぼとりと彼の頭が転げ落ちた。影縫はそれを丁寧に影に呑み込ませると申し訳なさそうに最後の言葉を残す。


「クロードさん。あなたがこんな私をライバルと見てくれた事にとても感謝しております。しかし、かつての友に引けを取るには行かなかったのです。これは私自身の覚悟を示す物。あなたに本気を出さずに死なせるのは失礼かと思い。この様に酷い殺し方をしてしまいました。この非礼はいつか必ずお詫びいたします。それまで少しばかりお待ちください」


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