十七章 首都陥落作戦-第四首都 其の弐-
ラスコーVSスラー!
眠る闘神はいつ目覚めるのか。
ドアを開けるとそこには無数の傀儡が並ぶ場所へと誘われていた。ラスコーを見つけるや否や襲いかかってくると先程まで一緒に居た劃と影縫の姿が見当たらない事にすぐさま気付き、彼は無駄無く武器を開放する。
「生命開放、絶折神」
ブローニャの手を離すと目の前に迫り来る傀儡が一つ残らず粉々になった。しかし、傀儡の破片が舞う瞬間、ラスコーに目がけて手斧のような物が飛んで行き、彼の腕に突き刺さるもすぐにそれを簡単に弾き、それを投げた位置を特定し、高速で距離を詰め蹴りを入れる。
しかし、それはラスコーの渾身の蹴りを素手で簡単に掴み、彼の体を持ち上げ、地面に叩きつけた。
急に自分を支える足から地面が離され空中に浮くとラスコーは反応が遅れ、離れたと思った地面に自らの身体がめり込んでいる。
そして、その腕から足を離す事なく何度も何度も地面に叩きつけ、トドメを刺すように彼の顔に目掛けて拳が放たれた。
「生命開放、絶折神・静」
ラスコーはそう呟き、その拳に触れると対象を紙に封じ込め、再び蹴りを放つ。紙は蹴りと共に吹き飛ばされ、破けるとそこからボサボサの長髪を二つ玉のように結んだ青年が姿を現した。
ツナギの様な服装に身を包んだ青年は気怠気にラスコーを見つめるとため息を吐き、再び彼との距離を詰める。
手には先程と同じく手斧が握られており、それを振り回しながらラスコーに襲いかかった。彼はダガーナイフを取り出すと再び根源に自らを繋げ武器の力を解き放つ。
「生命開放、絶折神・電」
ラスコーはなるべく短いスパンで紙を伝い、自らの速度を上げようと動き出す。
しかし、青年は本能的に何かを感じ取ったのか距離を詰める速度が上がり、加速を不完全な状態の体に斧を振り下ろす。
ダガーナイフと手斧がぶつかり甲高い音がその場に鳴り響く。目で追うことが精一杯の速度で斧が振るわれ、それは何度も何度もラスコーに容赦なく振るわれる。
ラスコーは打ち合いは不味いと感じ、ダガーナイフを投げつけ、隙を作りると背後に紙を投げ、それを伝い距離を取った。
あまりにも高い身体能力により迫り来る死を感じ取るともう一本のダガーナイフを取り出し、ラスコーは青年に喋りかけた。
「お前何者だ?どうして俺の前に立ち塞がる?」
青年は話しかけられた事に驚き戸惑うも再びため息を吐き、それに応える。
「第四首都防衛隊長キリガミ・スラー。理由は名義の通りだ」
スラーはそう言うと手斧を投げ捨て、腰につけていたとある武器を手に取った。そして、両腕には黒色のトンファーが握られており、それを振り回すと目の前に現れた獲物の息を止める為に短く声を上げる。
「生命開放、黒縄」
右腕のトンファーの先が外れ、分銅の様なものがラスコー目掛けて飛んでいく。それを簡単に避けるも目の前には既にスラーがおり、もう片方のトンファーで彼の顎に重い一撃を喰らわせた。
目の前がチカチカするも再び襲いかかるトンファーにギリギリで気づくとすぐさま紙を放ちそれを伝い避ける。距離を取ったがラスコーは自らの顎にぶつかった一撃が思ったよりも重く膝を地面につけるとスラーを睨みながら口を開いた。
「何で目の前にいんだよ?瞬間移動でもしたのか?」
「別に。君が遅いだけだよ。俺はただ移動しただけだ。君が反応するよりも速くな」
スラーはその場でトンファーを振り回すと再び分銅がラスコーに目掛けて放たれる。ラスコーはそれを避ける為に紙を投げ、移動するとそこから一気に加速を行い始めた。
加速を始めると流石のスラーですら追うことが出来ず、その場から動けなくする。しかし、彼は両腕のトンファーの先から垂れている分銅を適当に放ち、それに合わせて呟いた。
「生命開放、黒縄・天誅」
声に呼応する様に適当に放たれた筈の二つの分銅はスラーを中心に伸び始め大きな円を描きながら地面を抉り始める。
加速していたラスコーであったが唐突に足に何かが引っかかると加速が止められてしまう。そして、それがスラーが放った分銅の鎖と気づいた瞬間にラスコーの足に絡みつくと地面に打ち付けられると同時に彼の体を引き摺りながら地面を抉った。
地面はラスコーの体で抉られ、コンクリートに打ち付けられる。引き摺り回された体の右足はあらぬ方向へとひん曲がっており、腕からは大量の血が溢れ出ていた。
四肢の一つ一つがあり得もしない方向へと関節が動いてしまっており、子供に遊ばれ壊された人形の様になってしまったラスコーをスラーは面白味も無く欠伸をしながら見つめると彼に喋りかけた。
「どうだい?関節をあらぬ方向へと曲げられた感覚は?とっても気分がいいだろう?滴り落ちる血、俺を見つめる目、地獄を体現する心地良さ。この生命武器、黒縄は俺が攻撃を当てた奴にこの分銅が当たるまで追尾する。必中の武器だ。君がどんなに速度を上げて移動しようとも僕の一撃が当たった時点でその速さは意味がないものになっているんだよ」
ラスコーは彼が喋っている間に体内の筋肉繊維を紙で伝い、無理矢理繋げることで関節を人の形に戻す事が出来たが想像以上に傷が深く、意識が深く沈む直前を行き来していた。そして、それを見ながらラスコーが立ち上がるかどうかをスラーは待っており、暇を潰す様に言葉を繋げる。
「君、体の治り早いね、思ったより早くてビックリ。早く殺しても良いんだが他の所を当たらせられるのが面倒だからね。俺は面倒ぐさがり屋なんだ。君一人をゆっくり完璧に殺して、他の奴らはティフォンやそれ以外に任せるんだー。てか、そこの女の子は戦わないのかい?俺は二人相手は面倒だから嫌だったんだが動かないなら動かないでそのままにしておいて欲しいな。死体の処理は一つのが楽だからね」
スラーが楽しそうに喋っていると目の前にさっきまでいた死にかけのラスコーが居なくなっていた事に気づく。次の瞬間、スラーが気付くと同時にラスコー同様、彼の顎に拳が放たれ、体が上空へと吹き飛んでいた。
見事なまでのアッパーカットが決まり、スラーは驚きつつも上空に舞う体を捻り、彼に目掛けて必中の分銅を放つ。しかし、ラスコーは血を垂らしながら体に染み着く武器の根源からもう一つの武器を引っ張り出した。
「生命開放、絶折神・吽」
体に張り巡らされた神経を紙を伝い、高速で繋げるとそれは先程の比では反応速度を生み出す。分銅の軌道を完全に読みながら走り回り、一瞬にして間合いに入ると拳を放つ。
トンファーとぶつかり合うと思いきやそれよりも早い速度でスラーの体に放たれ、彼の体を吹き飛ばした。そして、スラーの体に触れた途端、彼を紙の中に封じ込めると再び蹴りを入れ、ビルの壁へと打ち付ける。
ラスコーは目の前に現れた自分と並ぶ程の敵の攻撃により、幾たび死と言う概念に襲い掛かられた結果、かつてそれが隣り合わせであった感覚を思い出し、闘争への意識がこれまで以上に研ぎ澄まされ始めた。
トンファーから放たれる分銅をコンマ数秒の間隔で避け、スラーとの距離を詰める。
そして、彼の攻撃が当たるよりも速く拳を放ち、紙に封じ込め、蹴り飛ばす。この動きを何度も繰り返すごとに自然と紙を伝う速度は加速して行き、更に研ぎ澄まされる。
スラーは何度も攻撃を受けるも自分の体にヒビすら入らない事にうんざりした。しかし、それ以上に何度も同じ攻撃を喰らう事に苛立ちを覚え、トンファーは無理矢理振り回し、ラスコーにぶつけようとするも必中の分銅を最も簡単に避けて、大振りな攻撃により生まれた隙に拳を入れられ吹き飛ばされる。
「動きの鮮やかさ、それが無くなってんな。さっきまでの余裕が無いと捉えていいか?」
ラスコーはそう言うと再び走り出し、彼に目掛けて蹴りを放った。しかし、それは両腕のトンファーで塞がれ、ラスコーは距離を詰めるのを止めるとスラーは彼に目掛けて声を上げた。
「ああ?余裕が無いというよりも苛々してきただけだ。キメるならとっととキメてくれないか?俺は特別頑丈だから速くやらないから本気出しちまうだろ」
スラーはトンファーを振り回すのを止め、口から出た血を手に着けると前に垂れていた髪にそれを擦り付け、後ろにし、オールバックの様な型にした。そして、両腕を前に構えると自身の体に武器を馴染ませるために呪いの言葉を吐き捨てる。
「同化、明王」
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