十三章 首都陥落作戦 -会議-
首都陥落作戦編開幕!
埋葬屋の戦いは新たな局面へ。
そこにはかつて人を裁いた円卓があった。
それはかつて木漏れ日の揺籠でもあった。
そして、今、それはかつて共に歩んだ者への叛逆の狼煙を上げる物へと変わる。
「諸君、我々は七つの首都を堕とし、統合政府を撃ち落とす。戦いの会議を始めよう」
Ⅴの文字が刻まれた席に座る夜の王が立ち上がり、その一言に呼応するように席は埋まっていく。
そこにかつての主人はおらず、それでもその席の殆どに己の理想と覚悟を携え座る。
一人は託された物を守る為。
一人は己の全てを賭ける為。
一人は友との約束を守る為。
一人は主人を見届ける為。
一人は友を見守る為。
一人は過去のしがらみを払拭する為。
一人はある者と決着をつける為。
一人は認めた友を守る為。
一人は契約を遂行する為。
一人は答えを見つける為。
彼らは皆同じ答えを得る為ではなく、自らの覚悟を貫く為に災悪の席に立つ。
「先ず、劃の付き添いの三人は残った三席のXI、XII、XIIIに座ってくれ。闘争の兵器は未だに意識が不明瞭ではあるが作戦には参加して貰う。構わないな?」
バサラがそう言うとXIの席に座ったラスコーが立ち上がり彼の目を見ながら威圧的な態度で答えた。
「ああ、構わない。条件をのんでさえくれれば俺は何でもやる。だが、条件を少しでも破った場合はすぐにでもブローニャと共にここを立ち去る」
「ああ、そうしてくれても構わない。俺は約束を守る男なんでね」
両雄一歩も引く素振りを見せずも信頼に値する事を知っており、彼らはそれ以上何も言わずに目線を背け、バサラが再び声を上げた。
「それでは本筋の話をしよう。俺達は今から第六、第五、第四首都を堕とす。やり方は簡単。三つのチームに分かれてその都市に向かい首都長に俺達の大義名分を認めて貰う。統合政府と最初から全面戦争を行えば俺がいても五分五分だ。しかも、この五分五分には俺達の席が空くことを含んでいる。それは那須と約束した事を破ってしまうからな。それに全首都と戦争れば被害は地下都市にも被害が及ぶ。それもジュダとの契約違反だ。故に先ず三つの都市からの援軍を止める。ここでの最高の結果はこいつらを味方に取り込む事。最悪の結果は首都長を殺して動きを封じる。大将をやられた軍ってのは統率を取るまでに時間がかかるからな、その間に畳み掛ける。だが、その場合は俺達が掲げる大義名分を無くしてしまう可能性もあるから、これは本当に最後の手段だ」
バサラの話がひと段落つくもそれに間髪入れずにスカディが口を開いた。
「第七首都は堕とさなくていいの?あそこの首都長はたしか統合政府によく反発してるわ。あそこを堕とさずに行く理由は?」
「ああ、その事だが実は俺が埋葬屋にいなかった理由の一つでな。実は」
バサラが何かを言おうとすると円卓に音もなく、昔からそこに居たように一人の竜王が姿を現す。それは幼き体にはにつかわぬほどに練られた闘気と胆力、そして、大胆不敵さを携え佇んでいた。
そして、目の前に現れたそれにバサラとブローニャ、リリィ、を除いた円卓の面々は一瞬にして戦闘態勢に入り襲い掛かる。
各々の武器を構え、攻撃を放つまでにかかった時間はほんの僅か。
しかし、彼らはその幼き竜王に触れる事なく吹き飛ばされる。
ドンという音と共に彼らの反射が追いつかないそのコンマ数秒に座っていた者以外を一人残らず壁に打ちつけ、それを満足そうに見渡すと竜王は太々しく声を上げる。
「ようやく来たな!バサラっち!待ったぞ〜!この時をどれくらい待ったか知らないくらい待ったぞ!それと手荒い歓迎ご苦労様。君たちの攻撃までの速さは評価に値するよ!やぁ、初めましてだね!埋葬屋諸君!僕はアガツマ・ツバキ!第七首都を治める者であり、統合政府に反旗を翻す同志さ!」
彼女の元気な口調と打って変わり、吹き飛ばされた埋葬屋の面々は怒りの矛先を向けており、それを見ながらバサラは溜息を吐く。
「流石に意味がわかんねえよ!バサラ!どういう事だ?」
真っ先に行人がキレると周りの面々もバサラに目を向けるも彼は頭に手を置きながら顔を隠し、それに答えた。
「俺が席を外していた理由の一つ。第七首都を一人で堕としておくこと。その結果このガキンチョとやり合ったんだが結論から言うと俺が勝った。だが、こいつはこいつでペトゥロの首を取りたいけど組みたくないって言うもんだから長い期間説得していた」
「僕はペトゥロと戦える場所を提供してくれる事を条件に渋々組んだって訳さ!」
身長はそこそこあるもののツインテールが幼さが際立たせる。赤毛の竜王は誰かが自分を讃えるのを待っていたが誰も話について来れておらず、それに気付くと束の間の沈黙の後に目をうるうるさせながら再び口を開いた。
「何で誰も何も言ってくれないんだよ!僕は第七首都首都長だぞ!それが手を組もうって言ってるのに何で誰も何か言ってくれないんだよ!」
「そりゃあ、そうだろ。急に現れて吹き飛ばされる。そして、味方だって伝えられたら何も出来ねえって、はぁ」
バサラは再びため息を吐きながらツバキに言うと彼女は泣きながら纏う空気が変わりバサラの顔に目掛けて蹴りを入れる。
「バサラっちも僕を虐めるのかい!?もういい!ここの全員の首持って行ってペトゥロに差し出して殺し合う!」
ツバキは最初の蹴りは右手で塞がれてしまっていた事に気付くともう片方の足で蹴りをバサラの顔に入れるもそれも塞がれ、壁に投げつけられた。
しかし、小さい少女の体は壁に叩きつけられる事なく逆に壁を蹴り上げ、バサラに向かい再び拳を放つ。その放たれた拳を大剣を振るい受け止めると両者共に睨み合い、己の根源に繋がった武器の引き出す為にその場の全員にお構いなしに声を上げた。
「生命開放、絶夜王」
「生命開放、絶星竜王」
二人の王が対峙し、一触即発の空気が漂う中、それを切り裂く様に一人の男がツバキの頭にゲンコツを入れた。その男はツバキと同様何処から現れたが分からないが黒いスーツに身を包み、両目をバンダナの様な物で隠している。
ツバキの体に竜の羽と尻尾がついていたのにも関わらず、戦いを遮られてた事に驚き、その方向を見つめると顔を顰めて口を開いた。
「うげえ、メデス、お前なんでここに!」
「バカご主人様のお世話ですよ。何をやっているのですか?俺の武器を勝手に使って移動するなとあれほど言いましたよねバカ竜王様」
「だって、挨拶に行った方が良いかって......」
「挨拶が随分物騒な挨拶ですね、バカご主人様」
「だって、」
「言い訳しない!ほら一緒に戦う仲間なのに吹き飛ばしちゃって本当に申し訳ございません。ほら、頭下げなさい。うちのバカご主人様がご迷惑をお掛けしました。バサラ様も戯れ感謝します」
メデスと呼ばれた男はそう言うとツバキの頭を無理矢理下げさせ、丁寧にお辞儀をさせる。
「自己紹介が遅れてしまいました。私、第七首都首都長補佐兼宰相イカルス・メデスで御座います。我が王の非礼無礼はお詫びさせていただきます。そして、これから共に戦う同志である故に以後お見知り置きを」
新たに現れた竜王とその宰相。
それを見ながらバサラ呆れながらも笑みを零し、声を上げた。
「ごちゃごちゃしたが会議を続けよう。これから首都の落とす方法を教える。これを踏まえて意見を聞きたい」
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