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散華のカフカ  作者:
三部 飢餓の弓
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十一章 特訓

少年少女は前を向く。

未来に進み、希望を託した者の願いを叶えるために。

 バサラに向かい二人の少年は武器を向ける。一人は刀を、一人はライフルを。互いに息を合わせ大剣を持つバサラに刀を持った少年が走り出し、刃を斬り放つとその一瞬の隙を突き、弾丸が彼に襲いかかった。


 バサラは少年の刀を簡単にいなし弾丸を素手で受け止めると少年に容赦なく蹴りを喰らわせ吹き飛ばす。少年は刀でそれを防ぐも壁に叩きつけられグッと言う声にもならない音を響かせるとバサラはそれを見て声を上げた。


「悪くない。前みたく無闇に突っ込まないで間合いを理解しているのもいい。特に行人、お前の剣に迷いが無いのが分かる。しっかりと殺すつもりで来いという言葉を理解しているからこその飲み込みの良さが目に見えてお前自身を強くしてる。そろそろ絶化の練習に入るから準備しとけ。逆にイェーガー、お前には迷いがある。殺すつもりで来ないなら次から俺がお前を殺すつもりでかかるぞ」


 バサラはそう言うとその部屋から出ていき二人の少年達は地面に寝っ転がる。互いに顔を合わせず、行人は横に寝転がるイェーガーに喋りかけた。


「なぁ、なんで本気でやらないんだ、イェーガー?」


「本気だよ」


「あの人は恐らく埋葬屋の中でいや、俺が会って来た人間の中で一番強い。お師匠とジュダがトントンくらいだったがあの人はその比じゃない。だから、本気でやらないと俺たちがやられるぞ」


「だから、本気ではやってるんだ。でも、自分の力が御せなくなってもしかして最悪の場合があったら嫌だから心と体が追いついて来れていなくて」


 二人は地面に寝転がりながら会話を続けるも互いに一方通行である事を理解した瞬間、起き上がり得物に手を添えるとその場に一触即発の空気が流れ込む。


 行人は刀の柄に右手を、イェーガーは指を引き金に置き、互いに武器の力を開放しようとする。


 しかし、扉が唐突に開くと猫耳を付けた銀髪の少女が姿を現し、二人はそれに気づくや否や武器を仕舞うと行人が彼女に喋りかけた。


(フー)!!もう大丈夫なのか?それとその髪」


 行人は彼女が自分の腰ほどまでに伸びていた髪が無くなっており、ショートボブの様な髪型に困惑し、それを見ながら(フー)は少し悲しそうに微笑むと彼の問いに答える。


「久しぶり、二人とも。行人もイェーガー元気で何よりだよ。髪は戦うのに邪魔だったから切ったんだ、スカディとお揃いで良いでしょ?それよりも今二人とも喧嘩しようとしていなかった?」


 (フー)は彼らがすぐに武器を仕舞ったことに気づいており、二人は追い詰められたのか嘘をついてもバレることを理解し、手を上げ降参のポーズをとった。そして、彼女は彼らが武器を出したことを確認すると再び喋りかけた。


「うん、これからはもっと厳しい戦いが待っているのにそう言う風に無駄な争いはお互いに良くない。でも、二人ってしっかりと顔と顔を、膝と膝を合わせて話し合った事はある?」


 (フー)の言葉にイェーガーと行人は困惑するも彼女が言っている事が正しく感じると彼らは三人でその場に座り込み話を始める。


「なら、私から始めるね。私昔ね......」


 彼らは互いに互いをあまり語らず、互いに互いを知った様に感じていたが、初めて自分の過去を語り合うことで本当の意味で互いを知ることが出来た。


 行き場の無い彼らを埋葬屋の面々が救ってくれ、そこで出会った年端もいかない少年少女達。彼らは自らを語り、そして、絆を深めあっていく。


 (フー)が先ず喋り、次に行人が自分の話を終えた後、イェーガーの目を真っ直ぐ見ながら口を開いた。


「なぁ、イェーガー教えてくれないか?何で本気で戦えない、いや、本気で戦おうとしないんだ?」


 その問いに答えるかイェーガーは迷うも彼らが自らの過去を語り、知ってしまった事で隠す事に罪悪感を感じ、彼は諦めるとため息を吐きながらゆっくりと自らの過去を語り始める。


「ここに来るまで人を殺し続けてたって言ったら信じるか?」


 イェーガーの一言に何も言えなくなる二人を見ながら彼は再び途切れた言葉を紡ぐ。


「物心ついた時から銃を握ってた。知らない奴の頭に弾丸を当てるだけ、簡単な仕事だったよ。当たった頭からは空いていないはずの所から血が溢れたり、花びら見たく咲くんだ。そして、その人体が死にゆく様をマジマジと眺める。最初は嫌だった。泣きながらやった。でも、生きていくためには仕方ない、そう割り切れば何となく人としての感覚を薄く出来た。それをやれば認めてくれる。褒めてくれる。僕はね、生き残る為に人を殺し続けたんだ。そんなある日、ある人物を殺せという命令を受けてそれを淡々とこなしに行った。それがジュダ・ダイナー、僕が唯一殺さなかった男。僕は初めて失敗して、そして、初めて敗北した。そこで初めて恐怖、死という感覚を覚えた。体が震え、自らの血が沸騰する感覚。でも、それと同時にあの人は僕に心を教えてくれた。引き金を引いた途端、銃弾を止め僕の目の前に立った瞬間の死の感覚と優しく抱きしめてくれた時のなんとも言えない感覚。ごちゃ混ぜではあったけどあの時、僕は初めて人は自分と同じなんだって事に気付かされた。その人を殺してた。僕はその事実を後から受け止めた。僕が殺した人達も家族がいたかも知れない、僕が殺した人の中にも恋人がいたかも知れない、他者と繋がりを持っていた人ばっかりを僕は殺してしまっていた。ジュダはそんな僕を拾ってくれてここに来た。その組織の事は知らないどうなっかは分からないが僕はここに来た初めて人間になれた気がしたんだ」


 イェーガーは一人で淡々と語り続け、それを聞いた(フー)が何か言おうとするも行人がそれを止め、口を開いた。


「お前が悩んでのは分かった。ごめん、イェーガー。俺お前の事全然知らなかった。知ってどうこう出来る訳じゃないが知れてよかった。なぁ、イェーガー前の作戦でお前が助けてくれたの全部知ってんだ。お前は何も言わなかったけど俺はしっかり知ってた。お前が殺した人は戻らないが俺を救ってくれた。お前の銃弾は人を救えたんだよイェーガー」


 彼にとって行人の言葉は眩しく輝いており、直視するには目が眩んでしまいそうになる程純粋で不純なモノがないそう思い込んでいた。


 そして、それに常に負い目を感じていたが今全てを知った上で彼と向き合う事により、彼も自分同様悩み苦しんでいる事を理解するとイェーガーは自分がまだ彼らの事を何も知ろうとしていなかったと感じ、自分の未熟さを自覚し行人と(フー)に対して喋りかける。


「少しだけ心が軽くなったよ、二人ともありがとう。僕はもしかしたら小さな世界でしか生きていなかったのかも知れないな。うん、そうか。僕の銃弾は人を救ったのか」


「うん、うん、みんな前に進めて良かったよ。それじゃあ、始めようか」


 (フー)はそう言うと立ち上がり、周りに六つの壁が現れると二人に目掛けて放った。


 行人は刀を抜くと同時にそれを弾き、イェーガーは一瞬で銃の引き金を引き自分に向かう壁の軌道をずらす。


「良い反応だね、二人とも。でも今からが本番だよ。みんなが強くなるから私も強くならないと。さぁ、始めよう二人とも。同世代同士の秘密の特訓だよ」


 行人とイェーガーは今の(フー)に那須川に似たものを感じ、顔を合わせると武器の先を(フー)に向けて二人同時に口を開く。


「「上等!!!!」」


 そして、その場にな互いに自らの過去を知り、前に進み、ある男が未来を託した少年少女の切磋琢磨する姿があった。


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