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散華のカフカ  作者:
三部 飢餓の弓
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十章 狭間

週一更新ですがお許しを泣

白い天使は対峙する。

己を殺し、それを殺す。

自らの犠牲を糧に手にする事が出来るモノは一体何なのか?

「久しいね、(クアク)。一ヶ月ぶりくらいかな?君がここに来なくなって暇していた所だから会えて嬉しいよ」


 青白く、生と死が揺れ動いている光景が広がる世界で骸達の山の上の玉座に座るキリアルヒャは彼女を睨む(クアク)に笑いながら話しかけた。(クアク)はそんな彼女に目掛けて下に落ちている骸の頭を投げつけるもそれは何処からか現れた刀で簡単に切り裂かれ、それを見て怒りを露わにする。


「黙れ!お前は俺の、いや、人類の敵だ。この前の件でようやく分かったよ。お前の本質は悪であり、純粋無垢な心で人を殺し尽くす殺戮兵器って事にな」


 (クアク)はそう言うとこの領域が意識の世界である事を思い出し、自らの装備を具現化させ、両腕に握るとそれを携え玉座の元に走り出す。キリアルヒャはそんな彼を眺めながら武器の雨を放ち、答えるもそれら全てを二振りの刀で最も簡単に切り裂くとものの数分で彼は自分の目の前に立っていた。


「へえ、前までの君ならここで来れなかったんだけどね。ふふ、僕の器としての格が随分と仕上がって来てるね」


「お前の器じゃない、俺は俺だ。それ以上でもそれ以下でもない。俺は東 (クアク)、この世の全ての兵器を殺す物だ。お前も俺が殺す。必ず、俺の手で殺す」


 (クアク)は自分が持てる殺意の全てをキリアルヒャに向け、刀を彼女の頭に振り下ろそうとした。瞬間、(クアク)に向かいこの意識の領域内で彼ら以外に人の形を持った何かが彼に向かい突進をする。


 唐突に横から現れた人型の物体に戸惑い(クアク)はモロに突進を受け吹き飛ばされるもすぐさま立ち直すと目の前に現れた何者かを確認する。


 そこには顔は仮面で隠されているがどこかキリアルヒャに似ているものの髪型がショートになっており、体が機械のような駆動人形の姿があった。体は鎧の様な物で覆われ、両腕には銃、そして、背中には四つの四角い箱を背負っている。


 キリアルヒャはそれを見ながら驚いている(クアク)の為に優しく教鞭を取る様に口を開いた。


「それは支配式機巧蝕號(キリアルヒャ・メレム)。僕の権能を株分けして作った兵装さ!中々いいデザインしてるだろ?ここら辺の造形とか結構こだわってるから存分に遊んでいって欲しいな」


 玉座からウキウキのキリアルヒャとそれとは対照的な怒りを滲ませる(クアク)。何も言わずに彼はその人形を無視し、キリアルヒャに襲いかかろうとする。人形はそんな(クアク)に目掛けて銃を向け無機質に引き金を引き、彼女への道を遮ると彼は自らの手に持っていた刀の一振りを人形目掛けて投げ放った。


 人形は刀を簡単に弾くとその隙に(クアク)はそれとの距離を詰めており、右腕に握っていた刀を振るう。刀は人形の正面を綺麗に的得て、振り下ろされるも背中の四角い箱が一つ開き、そこから片刃の斧が投げ出され、それを握りしめると(クアク)の攻撃を弾き返した。


 (クアク)は弾き返されたのにも関わらず無造作に転がり落ちていたもう一振りの刀を手に取り、再び人形の間合いへ入り込むとまたそれに驚く事なく淡々と対応し、箱が開き、そこから剣が投げ出され両腕に武器を握り、それを振るいながら目の前に立つ敵を殺す事だけ考える。


 骸の山は彼らが武器を振るうたびに地面に落ちている骨が簡単に割れるも減る事はなく、淡々とその頭蓋を、肋骨を、人体を形成するために出来ていた骨をガシャリガシャリとすり潰す。


 すると、人形は彼との決着をつけようとしたのか箱から飛び道具である銃を取り出し、その銃口を彼に容赦無く向けた。引き金は軽く引かれ、その銃弾は獣の様なオーラを纏っており、(クアク)の体を簡単に貫くと一体のみが放たれていた獣は既に四匹になっており、それら全てが彼に襲いかかる。


 (クアク)は一度目の獣に肋骨を抉り取られ、腹部に綺麗に穴を開けられるも残りの四体の獣を叩き斬ると血を吐きながらその場に倒れ込んでしまう。


 血は骸の山に染み込み、白と青の世界に生のある赤が混ざり合うと美しいコントラストを生み出し、(クアク)の横には彼の体から現れた肋骨が転がり落ちていた。そんな彼をキリアルヒャは玉座に太々しく座りながらつまらなそうに、興味がないように眺めており、乾いた笑みを溢すと人形を通じて舞台上の演者の如く喋りかける。


「ああ、(クアク)、可哀想な(クアク)。自分の実力が上がったと錯覚してしまったのかな?僕は決して君が僕に勝てると思っていないんだよ。だけど、君が僕に一矢報いるくらいにはなって欲しかったんだがまだまだだったかな」


 動かない(クアク)に人形は銃口を向け、引き金に手をかけていたがそれを引くことを主人であるキリアルヒャが許可しておらず、それを何も言わずにそれを突きつけ続ける。


 しかし、(クアク)は朦朧とする意識の中、自らの怒りと殺意を織り交ぜながら無理矢理立ち上がると骸の山に転がり落ちている頭蓋を手にし、それを自らの鮮血で赤く染め上げ、彼のボロボロの意思と肉体の穴を埋めるように頭蓋を中心に骨が集まっていき、腕には白い四角が形成されていた。


 それは青白い世界ですら混じる事を許さぬ白であり、染まる事を許さぬ美しさ。(クアク)が作り出した新たな武器を玉座から眺めるキリアルヒャはほんの少しだけ好奇心が湧いたのか再び口を開いた。


「ふむ、この土壇場で支配の力を使いこなして来たのか。いいね、いいね!その武器が僕の人形とどれくらいやり合えるか勝負だ!」


 その声を号令に人形は再び(クアク)に銃口を向け、引き金を引き、襲いかかる獣を彼はその白い四角を壁にし弾くと四角はその弾丸が兆しとなり、武器としての本質を顕現させる。


 四角から両腕で持つパイルバンカーの様な形となり、(クアク)はそれを手に取ると人形の元へと走り出した。人形もそれに無機物的に反応し、(クアク)との距離を詰めると背中にある武器庫から双剣を取り出し彼に向けて振り下ろす。


 (クアク)の両肩に双剣が突き刺さり、体と腕が引き剥がされる。骨は引き裂かれ肉はギリギリ体にくっついていたもののそれは既に腕としての役割は果たすことは許さない。人間であればその状況で動くことなど不可能に近く、無茶苦茶に断たれた神経により伝達されるはずの光は途切るとその場に白い箱が腕と共に骸の上に転げ落ちた様に見えた。


 しかし、(クアク)は自分自身を兵器と無理矢理見立て、自らの痛みを遮断する。千切れ落ちる寸前の筋肉を、繋がれていないはずの骨を、無理矢理、無理矢理、無理矢理、肉体を支配し、削げ落ちた腕を動かすと白い箱に血が滴り落ちながらもそれの引き金に手を添え、相手を呪うように言葉を吐き捨てた。


権能解放(オープン)支配式契砲(キリアルヒャ・バンカー)


 白い箱からは巨大な釘のようなものが勢いよく飛び出すと人形の小さな体に突き刺さり、最も簡単に貫くとそのままキリアルヒャの顔は目掛けて飛んでいく。キリアルヒャはそれを(クアク)が使っている黒い刀を顕現させ、使い切り落とすもその釘は彼女の頬を横切り、擦り傷を負わせた。


 キリアルヒャは自らの頬から流れる赤い鮮血を華奢な指先でなぞり拭くとそれを自らの舌に垂らし、味わうように生を確かめる。そして、自らに傷をつけた(クアク)に彼女は怒りを向ける事も憎しみを向ける事なく純粋なまでの気持ち、敬意と誠意を込め、彼の首に黒い刀を投げつけた。


 それは(クアク)の首を貫くと既にボロボロであった彼を骸の山に突き刺す。彼は体に力が入らず、口を開く事も出来ないほどに人としての原形を留められておらず犬が遊んだおもちゃの様になっており、彼はそのまま暗い意識の底に落ちていった。


 (クアク)の意識はその場で途切れ動かなくなるもキリアルヒャは彼が兵器としての成長を嬉々として受け入れ、彼が壊した人形の下へと駆け寄るとそれを愛おしそうに抱きかかえ口を開く。


「喪失、絶望、君を兵器として強くするにはやはりこれが一番だったね。おかげで僕に手を届けそうなモノが完成したらしい。ふふふ、いい武器だ、実に、実に、いい武器だ。これなら僕もアレを出す日が近いかな。ふふふ、あははは、次来る時はもっと強くなってからおいで。そしたら全力で相手してあげるよ、(クアク)


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