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散華のカフカ  作者:
三部 飢餓の弓
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九章 第四首都兵器争奪戦 其の陸

一つの首都に集う長達。

小さな波は共振し、全ての首都を巻き込む大戦への兆しとなる。

 カルマは屍人の行軍をきっかけにその場を離れており、穴だらけにされた体に包帯を巻くとビルの間を駆け回っている。彼は弟子であるグリムを探して走り回り、ビルの中で少しの輝きを見つけその場に近づくと四肢をもがれた青年の姿があった。


「おいおい、グリム。お前がやられたらワシは帰れんだろ起きんかい」


「御師様は私を心配するということを覚えてほしいですね。機械ではあるのですが普通あんなのくらって生きてる方がおかしいですよ。はぁ、強かったな彼」


「ふむ、お前もなかなかいい敵に会えたのか。ワシも古き友人と新たな好敵手(ライバル)に出会えた。それよりも早く第二首都へ帰るぞ。お前があの転送装置みたいの持ってんだから」


 グリムを無理矢理起こし体のポケットにある装置を手に出すもそれは既に木っ端微塵に破壊されており、カルマは少し動揺しなが声を上げる。


「グリム他の予備があるとかだよな? ないとは言わせんぞ」


「ありません、それ一個だけです。はぁ、どうしましょうかね。私達詰んでますよ」


 二人の背中から元気が消え、カルマはとりあえずグリムを背負うと互いにボロボロでありながら生き延びた事に感謝をし、その場を去ろうとする。瞬間、背後を振り向くとそこには仮面を被った長身の影があった。カルマはすぐに腰に差している刀を抜くとその影に襲い掛かろうとするも影はそれよりも速くグリムの体を抱いており、彼はカルマに喋りかけた。


「御師様お待ちを、シャルル様です。アルルカン・シャルル様がお越しになって下さいました」


 カルマはグリムの言葉を聞くや否や、すぐさま刀を鞘に収め、地面に片方の膝を着くとお辞儀をし彼に誠意を示そうとする。


「お久しゅうございます、アルルカン・シャルル様。とても大きくなられましてお元気でしたでしょうか? 」


「ああ、元気にしていたよ、カルマ。グリムも生きていてくれて何よりだ。君達は僕の武器の中でも長い付き合いだからね。心配して来てしまったよ。支配の兵器は居なそうだけど許そう。君達二人が任務を失敗する事なんてそうそう無い。よっぽどの事があったって事だろう? 」


 シャルルが仮面の下から放つ言葉の真意は分からないがカルマとグリムはその言葉に涙を流しており、そんな彼らを眺めながら満足そうにすると再び口を開いた。


「泣かないでおくれ、僕の武器達。戦いはこれからだよ。まだ、始まってもいない。僕らが今から始める宴はこんなものではない。まだまだ沢山の饗宴が待っている。さぁ、宴の準備だ! 笑いながら人を殺し! 笑いながら世界を壊そう! 僕達は平和を望む世界に混沌を望み、混沌を望めば平和を望む。さぁ、さぁ、さぁ、世界は今は何を望んでいる? ペトゥロ・アポカリプス、君は一体何を欲す? 」


 仮面の影は優雅に語り、二つの武器を連れながら第四首都を去っていった。


***


 第四首都に夜明けの光が差し込むと大量の死体に似つかない一人の生者が座り込んでいる。フレイヤは自分のミスで部下の大半を亡くした事にショックを受けているも彼女の目の前に白い礼服に身を纏った青年が現れた。


「第五首都近衛兵「エーギル」軍長フレイヤだな? 中立地帯第四首都にて戦闘を行った事により拘束させてもらう」


「拘束されるのに不満も文句も無いが先ずは名前を名乗るのが先では無いか? 」


 フレイヤはそう言うと青年に敵意を向け、彼はため息を吐きながらそれに答えた。


「俺はティフォン。ペトゥロ・アポカリプス直属護衛軍の一人だ。あんた、いや、第五首都全体にその責任を問うとユリウス・シモン様は仰っている。とりあえず、この場の死体は全部俺が供養する。あんたはすぐに拘束されて尋問を受けるだろうがまぁ、すぐに供養先は教えてやるよ」


「いや、その必要はない、ペトゥロの犬よ。フレイヤは俺がしっかりと持ち帰るからな。安心して家に帰れ」


 唐突に聞こえのない男の声がするとすぐに背後を振り向くもそれよりも早くティフォンの体に槍が突き刺さり、吹き飛ばされる。


 背中に突き刺さる三叉の矛はティフォンの体に痛みを駆け巡らせるも彼はすぐに両腕で槍を抜くと男の姿を見て驚愕した。そこには左腕をマントで隠し、ティフォンをゴミを見るような目で見る第五首都首都長であるニエルドが立っており、彼の右腕には先程自分の体を貫いた巨大な三叉の矛が握られていた。


(何だ? さっきまで生気、いや、闘気を全くと言っていいほどに感じなかった?! いや、それよりも何故ここに第五首都長が?! )


 ティフォンはそんな事を考えているとニエルドは血のついた矛を振り、彼に向け、怒りを込めながら声を上げる。


「俺の妹を拘束するだと? ふざけるなよ。お前如きが俺達の一族を縛れると思うな。俺はこの地に現れた傀儡どもの処理を仕方なく行ってやろうとしたのだ。それなのに俺の妹を拘束するだと? なんとも腹立だしいな。シモンを呼べ。奴と話をつける」


「呼ぶわけ無いなだろ? それよりもこんな所に来るなんて案外暇なんだな、首都長と言う役回りは。暇じゃなければこんな所に来るはずないしな」


 ティフォンが煽った瞬間、彼の目の前にはニエルドはおらず気がついた時には自らの体が三叉の矛に貫かれ壁に突きつけられていた。


 壁に突きつけられた体をティフォンは無理矢理起こそうとするもニエルドはそれを抜かず、寧ろ突き刺さる矛を蹴り付け、その体に更に深く突き刺す。そして、ニエルドはその矛を抜き切るとティフォンにトドメを刺そうとするもその場に一人の少女が現れそれを止めた。


「やぁ、ニエルド。君がここに来るなんて珍しいね。折角来たんだから何かお茶でもしていかないかい? 」


「ふん、お前から来るとは丁度良かった。た色々と手間が省けたよ。そして、お前と話す事などない。今すぐお前を殺してやるだけだ」


「そうかい、なら残念だ。君はここで争った。君はここの中立を破ったからには僕も本気で君の相手をするよ」


「やってみろよ、紛い物の一族が。そこまで言うのであれば俺に本気を出させて見ろ」


 互いの武器に殺意と怒りを込めると根源を殺す悪魔が二体、その地に降臨の産声を上げる。


生命開放(オープン)第四怠惰(ベルヘェゴール)


生命開放(オープン)第五強欲(アモン)


 武器に悪魔が降臨し、シモンはニエルドが動くよりも速く引き金を引くと彼の体に向かい悪魔の弾丸が襲い掛かろうとするもそれを簡単に打ち落とす。しかし、弾丸は打ち落とされると何かに反射し再び彼に襲いかかる。それに加えて引き金を引く度に銃弾は何度も、何度も放たれ、弾けばその弾丸が反射し檻を作る。檻の完成は至って早く形成され、その場からニエルドを動けなくし、彼を追い詰めていくもシモンは気を抜く事なく引き金を引き続けた。


 弾丸は徐々に速度を帯び、既に目で追う事すら出来ない速度へと達しているのにも関わらずニエルドに当たる事はなく、彼に一つたりともダメージを与える事が出来ない。そして、銃弾の檻の中、一瞬の隙間、銃弾と銃弾が混ざり合い弾き合う、ほんの一瞬、ニエルドは携えた矛をシモン目掛けて投げつけた。


 その矛は完全にシモンを捉えており、油断は無かったのにも関わらずニエルドの矛はその警戒と彼女の体を最も簡単に貫こうとする。


生命開放(オープン)絶嵐拳(オーディン)


 ティフォンはそれを見るや否や護衛対象であるシモンの為に自分のありったけを解き放ち、矛と彼女の間に立つと三叉の先を腕に纏う嵐を使い受け止めた。矛は嵐を吸い上げながら力を増すもそれをティフォンは無理矢理掴み取り、腕から肉が削られ血が飛び出ているのにも関わらずニエルドに向けて威力を増した矛を投げ返した。


 矛は先程よりも嵐を吸い上げ威力を増しており、地面を抉りニエルドに襲いかかる。しかし、彼はそれをマントで隠れていた左腕をその場に晒すと自分に向かう嵐の矛を簡単に掴み取り、地面に突き刺した。


 晒された左腕は爬虫類、いや、幻想 (たぐい)の竜の鱗。蒼く、碧く、青い、その腕は嵐に傷一つつけられる事なく煌々と輝いている。


 ボロボロの彼らにニエルドはトドメを刺そうとするもポケットに入れていた端末から着信がなり、それに興を削がれたのシモンに一瞥をやり、踵を返し、声を上げた。


「今日はここまでにしといてやる。次は必ず殺す」


 ニエルドはそう言うとフレイヤを抱え上げ、忽然と姿を消してしまい、ティフォンは警戒と緊張の糸が切れ、大量出血による肉体損傷によりその場に倒れ込んだしまう。そんな彼の下にシモンは急いで向かい救急用ドローンを呼び移動していき、第四首都は波乱の夜明けとなった。


 第四首都にて起きた支配の兵器を巡る小さな小競り合い。

 そして、これが後に大きな波を生み、埋葬屋、統合政府、首都長達を巻き込んだ大戦の兆しとなる事を全ての人間は一人を除いて知るよしも無かった。


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