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散華のカフカ  作者:
三部 飢餓の弓
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七章 第四首都兵器争奪戦 其の肆

三つの勢力が入り乱れる。

「私達の目の前に立つには役者不足じゃないかしら?」


 「エーギル」の軍勢の目の前には巨大な帽子を被り素顔が見えない二人の黒スーツの姿があった。彼らは何も答えず、武器を構えると声を上げた少女が前に出て彼らに剣先を向けると再び口を開く。


「無闇な戦闘は起こしたくないの。立ち塞がらないなら傷つけない。我々は「エーギル」。第五首都最強の近衛兵隊。そして、私はフレイヤ。勝利者(シゲル)の称号を首都長ニエルドから承った戦士。さぁ、答えなさい。このまま引くか、それとも、戦うか」


 フレイヤはそう言うものの彼らは答える事はなく、また、退こうとする事もなく淡々と立ち続け、彼女はため息を吐くと剣を上空へ掲げ、自分達が率いる軍勢に指揮をするように振り下ろした。


 鍛えられた軍勢達はそれに答える様携えた武器を前にし、口を揃えて声を上げる。


生命開放(オープン)海兵隊(エインヘリャル)


 彼らの武器は全て変化し、それを誇りの様に振り回しながら二人の男女に襲いかかった。本来であれば蹂躙に近い数の兵士が大量の武器を二人に向けるも片方の持つ武器から電鋸の起動音の様な物が鳴り響くと一瞬にして何処からか現れた鎖に絡まらせられ身動きが取れなくなってしまう。


 そして、そんな彼らを二本の剣を持つもう片方が切り裂いていくと最初に襲いかかった十人程は一瞬にして峰打ちを食らったらしく全員が気を失いながら倒れており、それらを無視して他の兵士達に剣を向け、帽子で顔を見せずに挑発した。


 兵士の面々は自らが最強という自負を傷つけられ、彼らに怒りを覚えると陣形を組み直し、一斉に襲いかかっていく。


 巨大な帽子で視線を逸らしながら二つの剣を持った彼女は舞う様に兵士一人一人の体に一撃、一撃と死ぬには足りぬが意識を飛ばすには十分な威力の剣撃を入れ続ける。また、上空から四人の兵士が彼女に攻撃を入れようとするも再び何処からか鎖が現れ彼らを拘束し、それらに峰打ちを入れ意識を飛ばした。


 兵士は減る事なく波状の様に何度も、何度も、立ち向かい、一人残らず、容赦なく気を失わされて行く。フレイヤは痺れを切らし、前線に立とうと剣を掲げるも耳に付けていたデバイスから急に音が鳴り響き、その音で冷静さを取り戻すとそれに答えた。


「どうした?まだ、お前達の番では無いぞ?」


 デバイスからは銃撃音が鳴り響き、フレイヤは自分達が他の者に襲われている事を理解すると直ぐに後ろを振り向くも未だにその姿は見えず、デバイスからの連絡を待った。しかし、そこから聞こえるのは兵士の悲壮な叫び声、銃撃音とほんの少しの斬撃音。淡々と命の灯火が消えていく音のみが聞こえ、最後に持ち主ではない者が喉にありったけの力を込めて叫んだ。


「アルルカンの回し者です!フレイヤ様!早くお逃げになって下さい!こいつ、こいつはバケ」


 声は銃撃音で途絶えられ、そこからは再び殺戮の音が鳴り響く。


***


 カルマは一人ゆらゆらと第四首都の街を彷徨っていた。獲物を取られすっかりやる気を無くしており、背中はいつも以上に元気はなく、彼はグリムを探しに適当にふらふらと歩き回る。しかし、そんな彼は兵士達の軍勢を見つけると新しいおもちゃを得た子供の様に満遍の笑みを浮かべ彼らの近くに歩いて行った。


「なぁ、あんた達何してるんだ?ここはワシの散歩コースなんじゃが」


 危険地帯の夜道に一人の老人。

 それに警戒しない者はそこにはおらず、彼が話しかけた瞬間に五人の兵士が武器を携え襲いかかる。


 既に戦闘態勢に入っており、彼らは武器の開放を行なっていた。一人の老人に五つの凶器が向けられるも彼は笑いながら目にも止まらぬ速度で銃を抜き、槍を持っていた一人の顎に突きつけ引き金を引く。それは最も簡単にあっけなく行われ、五人の内の一人がドサリという音共に倒れると他の四人もほんの一瞬だけ、時が止まった様になる。


 その隙をカルマは逃さず、凶器を向けた四人の鎧の隙間に銃弾をプレゼントすると彼らが倒れる姿を眺めながら嘲るように二つの銃の力を開放した。


生命開放(オープン)執行者(ブレードランナー)叛逆(リベリオン)


 一度引き金を引くと鎧を貫通し、二度引き金を引くと頭蓋を貫通する。二つの銃を向ける度に骸の山が作られていくものの兵士達は引くことなく彼にその刃を向けた。


「良い良い!その心意気!とても、良い!ボケ爺一人に向けるその熱意と殺意!とても、良く練られている!だが、先程の若人には足りぬ烏合の衆。満足出来るかのう?」


 カルマはそう言うと銃を兵士達に向け、再び走り向かっていく。兵士達はこれ以上本隊に近づければ危ないと感じ、必死になりながら武器を振るうもそれをカルマは簡単に避けては銃の引き金を引いた。


 一人であるが故に生まれるその軽い身のこなしは恐ろしい程に彼らの数を蹂躙していく。槍で突けばそれを避け、剣を振りかざせば銃身で弾く。宙に浮いたと思えばいつの間にか刀が手に握られており、それを振るい首を断つ。


 淡々と、淡々と殺されていく仲間達の姿を見て、彼らは初めて恐怖し、そして、怖気付く。その場にいた四十九人を全て一人で殺し尽くすと彼らの本隊がある所を察し、カルマは嬉々としてその場に飛んでいった。


***


 スカディとスペクターの二人は巨大な帽子で素顔を隠しながら襲いかかる兵士達を殺す事なく明確に、的確な捌きで気を失わせて行った。


 顔を見られるのは面倒だと言う事で彼らは魔女が被るような巨大な帽子を被っており、視界が悪いがそれでもその兵士達を止める事は出来、余裕すらあった。


 しかし、その余裕は一人の老人により打ち壊される事になる。


 唐突に二丁の拳銃を携えたカルマが空から飛んで来ると二人と兵隊達との間に現れ、彼らの戦闘を止めてしまった。そして、カルマは二つの勢力の中から最も強い気を感じたスペクターへと闘志の矛先を変え、襲いかかる。スカディはそれを二つの剣で抑えようとすると老人の腕には既に刀が握られており、二つの刃が火花を散らした。


「嬢さんも中々やる方か!ワシの刀を受け止めるなんてそうはおらんぞ」


 カルマはそう言うと右手に刀を左手に銃を持ちながらスカディと打ち合い始める。二つの武器の長さは違く、スカディの片方から放たれた剣撃を刀を振るいながら止めるともう片方を速度を落とす事なく銃で刃を受け止め、それを見たカルマは笑いながら更に速度を上げて行った。


 打ち合いは激しくなり、スペクターは彼を拘束しようとするも兵士達がスカディに攻撃を放とうとする事に気付き、それを電鋸を再び回転させ鎖で動きを止める。激しい攻防戦の中、スカディは被っていた帽子に刃が当たり少しばかり素顔が見え、それを隠そうとするもフレイヤはその一瞬を逃しておらず、驚きと戸惑いが混ざった声を上げた。


「まさか、スカディなの?」


 その一言でその場にいた兵士達とスカディ、スペクターそして、言葉を発した本人であるフレイヤですら戸惑いで動けなくなってしまう。そんな中、その場に居たカルマだけはそれを気にすることなくスカディの首に刃を突き立てようと右手に持っている刀を横に振り切った。


 しかし、その刃を何処からか放たれた銃弾が弾き飛ばし、その場に大量のドローンが現れ、埋葬屋、「エーギル」、カルマ、全ての勢力を光が照らすとそこから落ち着いた声で彼らに話しかけ始める。


「第四首都で争い事を起こした諸君。君達を私は許さない。第四首都首都長ユリウス・シモンがこの場を収めるそこから動くな不埒者共」


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