四章 第四首都兵器争奪戦 其の壱
中立を謳う第四首都。
しかし、そこにてアポカリプスシリーズ争奪戦、その狂乱の宴が始まる。
劃は襲いかかる傀儡をまた一つ、また一つと容赦無く壊していく。傀儡に知恵は無く、只々、そこに居る生命に反応し、それらを殺す為だけにその力を払う。
しかし、劃はそれを許す事はなく、自分の目の前にいる人々を殺させたくないと言う気持ちとこれ以上自分が原因で人が死ぬ恐れにより彼は荒ぶる鬼神が如き立ち振る舞いで傀儡を切り裂いていった。
真っ向切り、胴切り、袈裟斬り、切り上げ、二つの刀を巧みに使いこなし傀儡の体を止まる事なく切り裂いてはその場に傀儡が湧かなくなると他の場所に向かい同じように繰り返す。
しかし、一ヶ月、これを繰り返したにも関わらず傀儡が減る勢いは無く、劃は機械のようにそれらを切りおろし続けた。
(体が軽いな、一日中寝たらからなのか疲れが取れた。ラスコーには感謝しとくか。でも、兵器だって言うのに体の作りは人なんだ。限界があるなんて不良品にも程がある)
その場の傀儡を狩り尽くし、月夜に自分の姿が照らされると彼は自分が人の形をして良いのかそんな気持ちになりすぐに暗闇に逃げようとした。そんな時、唐突に二つの影が伸び彼を逃がさない様に青年と老人の姿が現れる。
「御師様、ラッキーですよ。一番乗りらしいです。今のうちにこれを持ち帰ってしまいましょう」
青年はそう言うと両腕を前に構えると劃に向かい蹴りを放った。その蹴りを劃は簡単に避け、腰に収めていた一本の刀を抜くと青年に振り下ろすも彼はそれを拳で受け止める。
「何者だ、あんた? 」
劃はその場で二本目の刀を抜き、彼にぶつけるも二つの斬撃を蹴りと突きで弾くとその問いに青年は丁寧に答えた。
「私はグリムです。訳あってあなたを拉致させて頂きます。ああ、こちらカルマ。ボケ老人ですが私のお師匠です」
グリムはそう言うと再び構え、劃との距離を詰める。拳は真っ直ぐしており、一発一発がお手本のような突きであった。それを一本の刀で捌き、もう一本で彼の腕を切ろうとするもそれを突きと同じくお手本の様な蹴りが弾き返す。
両者とも譲る事ない攻防が続くもそれをカルマは眺めるだけで何もせず、寧ろ、その場でお茶を飲み始めた。
「オイオイ、御師様、それは無いですよ。何でお茶飲んでんですか。いや、さっき買ってあげたのは自分なんですが今飲む必要なく無いですか? 」
グリムの声は比較的に大きかったのにも関わらず、カルマはその戦闘を肴にお茶を飲む。劃は訳が分からないがとりあえず彼を倒してしまおうと放たれた蹴りを片腕で掴み引っ張るともう片方の手に握っている刀をその掴んだ足に振り下ろした。
しかし、刀は弾かれ劃は一瞬、驚くとその隙を突き、両腕を地面に、掴まれた足ともう片方の足を合わせて腕に重心を置き、蹴りを放った。
両足の蹴りをモロに受けて吹き飛ばされるも劃はすぐに立て直し、二本の刀を握りしめる。
「何だ今の硬さ? まさか人じゃ無いのか? 」
「いえいえ、私は人ですよ。ただ四割程機械のだけです」
グリムはそう言うと再び彼と打ち合いを始めようとするもそれを狙ってラスコーが急に現れ、彼の体に蹴りを入れようとする。その瞬間、お茶を飲んでいたカルマの腕には既に銃が握られており、銃弾をラスコーに目掛けて放った。
一瞬の間に放たれた銃弾にラスコーは反応が遅れるも、彼は既に開放を行っており、何とか銃弾を紙に封じ込め、傷を負わずに済んだ。そんな中、カルマは再びお茶を飲んでおり、彼の動きがよく分からずラスコーは動けなくなるもそんな彼に向かい劃は声を上げた。
「ラスコー! スイッチ! 」
唐突に劃が叫ぶとグリムとカルマは全く理解しておらず、それに気づいたラスコーだけが体を立ち上がらせ彼らの下に走って行く。
カルマは再び銃の引き金を引くとそれを劃が切り裂き、もう一方のグリムは彼の背中を追おうとするもラスコーの蹴りが邪魔をする。スイッチは彼らが決めていた互いに敵を切り替える号令であり、そのおかげで互いに一対一の状況を作り出す事に成功した。
ラスコーとグリムはその場に既におらず、二人の兵器が互いに睨み合う。
「ほう、若人。なかなかにやるじゃないか。スイッチは切り替えか。ふふ、小賢しい真似を」
「爺さんに刀を向けるのは気が進まないが敵対するなら叩き切るだけだ」
互いに見合いながらカルマは腰に差していた刀を抜くと彼にその先を向け、再び口を開いた。
「爺だからって舐めてかかるなよ? この時代に生きた爺がいるならそれは強者だと思え」
刀を振り回すとカルマはその秘めたるその力を白い天使に見せつける。
「生命開放、執行者・叛逆」
カルマは右腕に刀を、左腕に銃口が四角形の形をした銃を握りしめ、劃に襲いかかった。
劃に向け、右手に握っていた刀を投げつけ、それを弾くと彼に銃弾が既に向けられており、それをもう片方の刀で切り裂く。しかし、カルマの腕にはもう一つ銃が握られており、その引き金は既に引かれていた。
右肩を銃弾が貫くもそれを気にする事なく劃は刃を振るい、カルマはその斬撃を二丁の拳銃を受け止め、弾くと彼の体に拳銃で切り傷をつける。
「特殊形状剣銃リベリオン。こいつの銃身は剣で出来てる。お前自体の力をもっと引き出せ。そうじゃなければ死ぬぞ」
カルマはそう言うと投げつけた刀を拾い上げ、それを振り回しながら自分の攻撃の間合いに劃を無理矢理連れ込む。
刃と刃が交じり合い火花を散らすも、それに加えもう片方に握られた銃から放たれる弾丸が襲いかかり、劃の体には幾つも穴が空く。
痛みを認識すると体中をそれが走り回り、体が悲鳴を上げる。だが、劃はそれを気にせず、開かれる穴を無視し続けた。自らを兵器と意識した事により、彼の体はいつもより早く治癒行為が行われ、穴だらけでありながら刀を振るう。
しかし、それを無意味にする様にカルマは劃の体を穴だらけにし続け、彼に蹴りを入れ吹き飛ばすと吐き捨てる様に口を開いた。
「チッ、お前は強いが心が気持ちが足りんな。燃える様な、研ぎ澄まされた殺意を向けてくれないか?それでなければワシに一太刀すら当てられんぞ」
「ああ、分かってるよ。だから、これからが本気だ。爺さん、逃げんじゃねえぞ」
劃は切り裂かれた胸の前に両腕をピタリとくっつけ祈りの型を取るとその魂に懺悔を込める。
「権能解放、支配」
胸から一本の天秤が姿を現す。それはかつて人々の魂を喰らい尽くした天秤。今はその力を抑え、自らの敵にその者達の魂を使う。
とてつもない自己嫌悪、そして、キリアルヒャに対する憎悪。それらを混ぜながら彼は上空に大量の武器を浮かばせる。以前は一つ一つの練度が低く武器としては歪であったが今は彼の怒りとこの一ヶ月の傀儡との戦闘により、よく研ぎ澄まされた鋭いモノになっていた。
それを見たカルマは両腕に銃を構え、笑いながら引き金に手を添える。
しかし、彼らの緊迫を上空からその場に大きな音共に破り捨てると夜の王が君臨した。
その手に握られた巨大な両刃剣は四角形でありながら分厚く、何かをしまっている様であり、その体を黒いスーツに包んだ夜の王はカルマに向けて喋りかける。
「カルマ爺、久しいな。馴染みだから退いてくれれば手は出さん」
「バサラの坊か? はは、久しいな。ふふふ、お前が舞台に出て来るとは終わりが近づいてと言う事かね。これはワシとて言えど刀を鞘に収めよう。お前とやるには少々装備も実力も足りんからなあ。グリムが居ればやっていたがあいつは何処かへ行ってしまったからな。今日の所は諦めよう。若人、中々に楽しめた。次会う時は更に強くなっている事を願っているよ」
カルマはそう言うと武器をしまい、バサラに背を向け姿を消すと彼もそれ以上に何もせず、ボロボロの劃を見ながら再び口を開いた。
「よぉ、支配の兵器。元気にしていたか? 俺はバサラってんだ。よろしく頼む」
「埋葬屋か? 何の様だ。俺はもうあそこに戻る資格は無い。連れ戻しに来たとかなら初めに断っておくぞ」
劃は上空に待機させている武器を解く事はなく、彼に向けたまま脅す様に言うもそれを聞きながらバサラは笑いながら答える。
「いいね、少し味見と行こうか? 俺は埋葬屋五席桜木バサラ。最も自由で、最も強い男だ! 」
劃は浮かんでいた武器を雨の様に容赦なくバサラに降らせる。一つ一つが鋭くバサラの体を貫こうとするも彼は手にした大剣の一人振りでそれらを全てを叩き落とした。そして、劃目掛けてその剣を振り下ろす。
その一振りにより大気が揺れ、二つの刀に当たる直前に彼の体は吹き飛ばすとビルにぶち当たるも劃はすぐに体を叩き起こし、バサラに向かい刀を振るい、それを受けながら彼は笑みを溢す。
「良いね! その闘志、冷めない心! 自分の事を押し殺そうとしているが隠せてないぞ! なぁ、東 劃! これから少しだけ試練を与える。俺に一太刀当ててみろ!それならお前を埋葬屋に連れて帰るのを諦めやる」
バサラはそう言うと劃の刀を一つ残らず、蹴散らし圧倒して行き、彼との試練が勝手に始まった。
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