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散華のカフカ  作者:
三部 飢餓の弓
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三章 刺客

次章より第四首都兵器争奪戦編開幕!

傀儡を狩り続ける(クアク)

心は闇に堕ち、一人でに無茶をし続ける。

そして、そんな彼を三つの勢力がゆっくりとその影を伸ばしていた。

 第六首都にて一人の老人が真夜中の公園でゆったりお茶を飲んでいた。周囲は傀儡に襲われているのにも関わらず、彼は一人、それすらもお茶の肴にし、茶を楽しんでいる。


 そして、傀儡の一体が老人の背後に立つと彼の首に鋭く研がれた刃を立てようとした。


「御師様、殺されそうですがよろしいのですが? 」


 殺されかけている老人の目の前に一人の男が立っており、老人に喋りかけると彼は何も答え無かった。


 しかし、彼の首を狙った傀儡の顎から頭上にいつの間にか穴が開いており、先程まで湯呑みが握られていた手には特殊な形状をした銃のようなモノが握られている。


「何だ、ドラ息子?ワシに何かようか? 」


 右目に眼帯をした長身の男は老人に手紙を渡すと彼は興味無さ気に口を開く。


「アルルカン様からの伝言です。第四首都に私と向かいましょう。それと私は息子ではありませんよ。全く、老化が激しくて困ってしまいますな。ほら、御師様立って立って」


 青年は無理矢理老人を立たせると彼は嫌々立ち上がると転がり落ちていた傀儡の頭を千切り、その頭蓋にお茶を入れ飲み始めた。


「御師様、止めてください。それは湯呑みではございませんよ。しかも、頭蓋は自分で穴開けたからお茶が溢れてますよ。全く、もう、本当にボケ老人になってしまわれたのですか? 」


「そんな訳ないだろ、このドラ息子。ワシを誰だと思っている?ワシはえーと、誰だっけ? 」


 そんな事をしている内に傀儡が彼らの声と正気に誘われてゆっくりと行進してからも彼らは歩きながらそれらに視線を寄越さず、一体、また、一体とゴミの山を作り出して行く。


「あなたはアルルカン暗殺部隊隊長カルマ。シャルル様の懐刀でございます。全く、こんなんじゃ私の事も忘れているのではないですか? 」


 眼帯の男は拳一つで傀儡の頭を潰し、老人は二つの拳銃で傀儡の頭を貫く。二人が移動する毎に傀儡は襲いかかるも彼らに一度もその体に近づく事は無かった。


「お前の事はもちろん覚えてるよ。ドラ息子、えーと、確か、ワビスケ」


 カルマの言葉を耳にしたん瞬間、彼はため息を吐き、伸びた髪を少し弄りながら声を上げる。


「グリムですよ。御師様の一番弟子のグリム・ライムです。ワビスケは貴方の息子で「審判」の時に亡くなられてますよ。五年前よりもボケが酷くなってますね。御師様、そろそろ引退なさったらどうですか? 」


「バカ言え、ワシは死ぬまでシャルル様の懐刀だよ。ワシが死ぬ時にようやくお前にワシのカルマの名を継承出来る。それまでは大人しくグリムを名乗っとれ。行くぞ、ドラ息子」


 カルマはそう言うとグリムとは別の方向に歩き出す。


「御師様、そっちは逆です。また、公園でお茶飲みするのですか? こっちですよ、しっかりついてきてください。それと何度も申しておりますが私は息子ではありません、全く」


***


 第五首都防壁外。

 彼らは一つ残らずその地に仇名す、怨敵を突き刺し、切り裂き、勝鬨(かちどき)を上げ、士気を高める。彼らは徹底的に自らの都市と首都長であるニエルドへの忠誠を傀儡を破壊する事で示していた。そんな中、一人の青年の端末から伝達され彼はその場の鎧を着込んだ兵士達に喋りかける。


「第五首都近衛兵「エーギル」はこれより第四首都に向かい、そこである人物、いや、兵器の確保を行う。各々が準備を行え! 」


 甲高い声がその場に響くと兵士達はぞろぞろと移動を始め、その場に残った一人が再び端末を開いた。


「ニエルド、伝達終わったよ。それで私は何をすれば良いかな? 」


「お前はそのまま「エーギル」を率いて第四首都に向かってくれ。それと忠告だがアルルカンの奴らと接触した場合はその場から立ち去る事。あそこのじじいは俺ですら手に余る」


 端末越しのニエルドはコーヒーを飲みながら都市の壁に付いている様々な兵装を画面から確認しながら会話をしている。


「私では勝てないと? ニエルドは私のことを舐めすぎなじゃないかな。私は君よりは弱いけど、この剣がある限り負ける事も無いんだよ。それでもかい? 」


「ああ、それでもだ。こっちは軍として動く。それ故に、第四首都で武力を行使するが援軍として来たと言う大義名分を張れる。しかし、あいつらは勝手に来て、勝手に動く。アルルカンの奴は勝手が好きなんだよ。調和よりも混沌を望み、平和よりも闘争を望む。逆も然り、混沌よりも調和を望み、闘争よりも平和を望む。あいつと殺り合うのはまだ後だ」


 ニエルドは端末越しの主を宥めるも彼女は納得しておらず、自らの剣の柄を強く握りしめ、反論した。


「なら、そいつを捕らえてしまえばいい。私達の軍なら出来るでしょ? 出来ないとは言わせないよ。第五首都近衛軍はどの首都よりも最強の兵士たちで構成されている。捕まえてしまうくらい造作ない筈。最悪、彼らも出せば..... 」


「フレイヤ、お前は確かに強い。だが、アルルカンの奴らを捕まえるのにこっちの兵を幾ら減らしてしまうと思っている? あれは正真正銘のバケモノだ。あれと戦って勝ち越せるのは俺を含めて数人しか知らない。ペトゥロですら奴らは手に負えないんだ。敵対する事は必ず避けろ。最悪、お前だけが戻って来てと構わない。兵士達もそれを望んでくれるだろうだから決して無茶するな、分かったな」


 そう言うと端末から声が消え、一人残されたフレイヤは近くに居た傀儡の残骸に剣を突き立てる。自分の力を認められなかったのが悔しいのか動かぬ傀儡に何度も何度も突き立てるも怒りは収まらず、彼女は一人その場から傀儡がいる場所へと足を運んでいった。


***


 第四首都にて白い天使は傀儡を前にし、その静かに燃ゆる怒りを刃に込め、向かい来るもの全てを切り裂いていく。しかし、逃げていた人々は彼の事を見ると感謝と畏怖が混ざり合いその場から動けなくなっていた。


 すると、上空から傀儡が現れ襲いかかるもそれをもう一人の青年が蹴りで壊し、彼らに喋りかける。


「止まるな! 止まったら死ぬぞ!死にたくないなら走れ! 」


 その一言で人々は正気になったのかすぐに踵を返し、天使から背を向け暗闇に消えていく。その場全ての傀儡を片付けた天使に青年は肩を叩き、缶コーヒーを寄越すと口を開いた。


(クアク)、そろそろ休め。お前もう一週間は寝てないぞ。ここには体を休めに来たのも目的の一つだ。体勢を立て直すべきの筈なのにほぼ無尽に湧いてくる傀儡相手にするなんて悪手すぎる。ほれ、飯も持ってきた。エルザの奴意外と料理が上手いのな。助けた人から貰った食料でサンドイッチを作ってくれた、だから、一度飯でも食って落ち着け」


「気持ちだけ受け取っておく。俺は人間じゃ無くて兵器だ。兵器は無尽蔵に湧く敵だからと言っても関係ない。俺も無尽蔵に戦えばプラマイゼロだ。俺が壊れるのは良い。だから、それはラスコー、お前が食ってくれ」


 そう言うと彼に背を向け、その場から立ち去ろうとする。黒いスーツは所々擦り傷があり、それを隠す様にボロボロのローブをつけ彼らを誤魔化そうと、自分を少しでも強く見ようと(クアク)は限界の先に無理矢理行こうとしていた。


 次の瞬間、背後から鈍器の様なモノで襲われ、彼は倒れてしまう。そんな彼にラスコーは「すまない」と一言添え、彼を連れてその場を後にする。


 そして、彼が目を覚ました頃にはエルザがちょこちょこ動き回りスーツの傷を縫い合わせている姿があった。


「何で俺、ここに居るんだ? 」


 体中にあった傷に包帯が巻かれ、上半身が露呈されており、彼の引き締まった体が晒されるもそんな事お構い無しにとエルザはスーツを直している。


「ラスコーがあんたが急に倒れたから連れて帰って来たって。なぁ、(クアク)、一応、あんたは私の雇い主だからあんたが何しようがケチつけるつもりは無いよ。でも、無茶しすぎじゃないか? 」


「してないよ、してないからこそ、俺は進むしかないんだ。何時間くらい眠っていた? 」


「ざっと、一日中だよ。今は夜でラスコー一人で傀儡狩りを行なっている筈さ」


 彼はその事を聞き、エルザからスーツを受け取るとすぐに横に置いてあった二本の刀を腰に刺した。


「了解、それじゃあ、行ってくる。スーツありがたとな、助かった」


 彼は再びローブを羽織り、第四首都に蔓延る傀儡達に立ち向かって行く。しかし、その夜はいつもとは違く、彼らを追う三つの影が静かに音を立てていた。


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