四章 覚醒
不定期ですがGW中にいいところまで進めれたらと思います。
躍動、沈黙、沈黙、沈黙
躍動、沈黙、沈黙、躍動
「おいおい、今の躍動ってのは彼の事を指してるのかい?僕が始まりのラッパの筈なのに、随分とまぁ、ふざけた事をしてくれるね。どうせでも、ペトゥロの計画の思惑の中からは逃れられないんだ。それなら僕も僕が今出来る限りのやりたい放題をやらせてもらうことにするよ」
巨大な装置の中にある生き物が身体中にコードに繋がっている。それは人の形を形成しており、背中からは翼が生え、人間の体の様だがその見た目は天使の様でもあった。
そして、それを囲う様に多くの白衣を纏った研究者たちがその生き物の動きを一挙一動を全て見守っており、その生き物の覚醒を静かに待ち望んでいる。
すると、その場に白髪の男が現れ、彼らに大きく声をかけた。
「お久しぶりです、皆様。そして、研究者諸、君らの働きに多大なる感謝を」
彼が頭を下げると、周りの研究者達も拍手を送り彼が頭を上げるのを待つと彼は再び顔を上げ、口を開いた。
「君達のおかげで黙示録のラッパを鳴らす準備が出来、これにより僕が世界を再篇する時間もあと少しになりました。皆様も後数ヶ月の命を数年いや、更に伸ばすことが出来る様になります。大変喜ばしいことで、後はあれが覚醒すればいいだけです。しかし、この事をよく思っていない者いる筈です。そろそろ出てきたらどうですか?ペトゥロの差金さん」
すると、研究者の中から一人がゆっくりと自分の立場を分かっているのかは分からないが堂々とした立ち振る舞いで歩いて来た。
その男は白衣に身を包み、黒い髪が腰の手前ほどまでに伸びており、目元を髪で隠していたが手前に出た途端にその髪をゴムの様な物でまとめ上げ白髪の男に近付くと口を開く。
「いやー、バレてたっすか。上手く隠せてたと思ったんだけどなー。まぁ、いいっす。はじめまして皆さん、自分は統合政府総統ペトゥロ・アポカリプス直属護衛軍「ジェヴォーダン」団長ペッローっす。よろしくお願いするっす、浅倉稔さん」
研究者達は自分らが政府に目をつけられていたことに動揺し辿々しくどよめくと浅倉稔と呼ばれた男はペッローを煽った。
「一体全体、ペトゥロは君に何を教えたのかなぁ? 浅倉稔って言うのは偽名なんだけどね。君さぁ、ペトゥロに信頼されてないんじゃ無い? 普通ならターゲットの本当の名前くらい教えて上げるよね」
ペトゥロに対しての不信感を募らせようとペッローに放った言葉に彼はそれを全く意に返さず、むしろハッキリと敵意を向ける。
「ペトゥロ様は情報をあまり共有したがら無いっすからね。いつだってこうっすよ。君こそ彼らを騙してるのを最後まで隠してんすよ。君にだけはそれを言われたく無いっす」
そう言い放つと白衣の胸ポッケから拳銃を取り出した。
「投降するなら今のうちだ! とかベタな事言いそうだね? 」
白髪の男がそう言った途端、ペッローは引き金を引く前に大きな声で叫んだ。
「生命開放、雷獣」
銃口から放たれた弾丸は黒い獣の様な形を形成し、雷を帯び勢いよく飛び出すと、白髪の男の肩を抉り抜き、黒い獣はペッローの近くに寄り相手を威嚇する様に唸り声を上げる。
しかし、白髪の男は何も表情を変えずに自分の肩から流れる血を見ながら不満そうに彼を見つめた。
「何本気でも無いのに撃ってんだよ。やるならとことん本当の自分を見せてくれないかな? 入ってるんだろ? ポケットにもう一本、生命武器が。そんな鉛玉程度で殺せると思ったら大間違いだよ? 」
そう言うと腰に隠していたダガーナイフを手に取り、刃が逆さになる様に持ち、それを前に出しながら気味の悪い笑みをうかべながら静かに口を開く。
「生命開放、熾天使」
白髪の男を中心に六本の剣が現れ、先程までダガーナイフだった物は姿を変え、七本の剣がペッローの目の前に顕現する。
しかし、ペッローはそれを眺めながら冷静に白髪の男が何をするのかをしっかりと観察し、彼が次にどのような動きに出るかを伺うと白髪の男の方から口を開ける。
「さて、君はこの剣何本分に値するかな? 」
言葉を放つとニ本の剣を手にし、ペッローの近くに走り寄って行った。
自分の間合いに入られたペッローはすぐさま黒い獣を使い剣を弾こうとしたが、剣はその黒い獣を最も簡単に貫き消滅させた。
ペッローは再び開放を行おうとするも、白髪の男のもう片方の剣がそれを許さず瞬時に、肩と服に斬り傷が幾つも現れた。いつ斬られたのかそんなことを思う間もなく白髪の男は二本の剣で斬りかかって来る。
ペッローは距離を取ろうとするが研究所内の狭い部屋の中ではそれが出来ず、ましてや、そこに研究者達が蹲っているのを見て思う様に体を動かす事が出来ずにいた。
すると、急に剣を地面に突き刺し、白髪の男はつまらなそうにペッローを眺めながら声を上げる。
「こいつらの心配しながら戦うって僕のことひょっとして舐めてない?こんなグズども庇いならよく僕に勝負を挑んで来られたね。万人を救おうなんて甘っちょろい考えしてたら君が死ぬよ」
その言葉により研究者の中から再びどよめきが聞こえ、そのどよめきの中から一人の恰幅の良い男が白髪の男の目の前に立った。
ペッローは「おい、よすっす」と止めたがその恰幅の良い男は怒りが滲み出ている。
「貴様が私達の寿命が一年と言う年月しか生きれんと言ったから私は貴様に協力したんだぞ、浅倉。それを今なんと言った?グズどもだと?笑わせるなよ、元からお前の人の心を見透かした様な態度にはうんざりしていた。この研究は全て統合政府に明け渡しす。統合政府ではなく、お前を信じた私が馬鹿であった。皆のもの異論はないな?」
そこら中から賛成の声が上がり白髪の男とペッローだけがその場から取り残されていた。
しかし、白髪の男は嘲る様に彼らに最後の一言を放つ。
「そう言う所だよ、金森さん。有象無象と交わり、戯れ、一人で何かを起こそうとする気がまるでない、そこらにいる奴ら全員そうだ。他人任せで自分という自己を信用しない人間的敗者共。自分に自信やら実力がある奴は僕なんかを信用しないで自分で行動を起こそうとする筈だよ? なのに、君達はそのようなことを一切起こそうともせずに小さい枠の中で行動を起こした気でいる。だから、僕は君達を利用し、欺き、そして、死に追いやる」
七本の剣が彼を中心に再び集まり、彼の周りに突き刺さる。金森と言われた男もそうだが周りにいた研究者達は白髪の男が何かするのかを少し恐れ、彼らは静まりかえらすと白髪の男は再び不気味に笑いこの世の全てに呪いを込めるように叫んだ。
「権能解放、支配」
七本の剣を中心に白髪の男とは別に一つの生命が芽吹く。それは誰よりもどれよりも暗く、黒く、光が入る隙が無いほどの漆黒であり、ながらも誰もを魅了するそんな花がぽつりと咲いた。
ペッローは何が起きたのか全く理解出来ずにいたが、周りの研究者達が全て居なくなっており、残された多くの灰に気付いた。
「一体、何をしたっすか? 」
彼の問いにゆっくりと白髪の男は丁寧に答える。
「アポカリプスシリーズの力を使っただけさ。かつての「審判」とは少し違うんだけどね。まぁ、これでようやく君を拘束する物は無くなったよ。ああ、でも、この天使だけは攻撃しないで」
パキリ
彼の言葉を遮る様に大きな音がした。
彼はその音が鳴る方を向くと、装置のガラスにヒビが入っており、中の生物が目を開いていることに気がつき装置の近くに走って寄って行く。
「ああ、久しぶりだね、キリアルヒャ! 」
白髪の男がペッローに背中を向けた瞬間、彼は好機を逃すまいとポケットに入った拳銃を左手で握り、二丁の拳銃に血を捧げ、ありったけを解放した。
「生命開放、絶神獣」
白く神々しい狼が白髪の男と天使に襲いかかる。
しかし、狼は動きを止め、彼らを襲う直前に消えて無くなってしまった。地面には彼の放った銃弾が2つカラカラと転がっており、ペッローは驚きを隠せずにいた。
それを見た白髪の男は彼には既に興味は無くなっており装置の中の天使に向かって手を出す。
「ああ、キリアルヒャ。君が守ってくれたのかい? 僕を守ってくれるなんて20年で性格が丸くなってしまったのかな? でも、そんなことはどうでも良い。僕の20年が無駄ではなかったことがはっきり分かったからね! さぁ、キリアルヒャ、僕と一緒に世界を壊そうじゃないか! 」
高らかに声を上げ装置のガラスを自分の手で破り、その天使に手を伸ばす。
割れたガラスから水が流れ、散らばる灰を、汚れた魂を洗い流すように隅へ隅へと追いやり、天使は白髪の男の手を握るかの様に思えた。瞬間、天使は拳を握り込め、白髪の男の顔に一撃を入れる。
白髪の男は少し驚いたがそれを責め立てる事はなかった。
「ああ、やっぱり、キリアルヒャだね。さっきは自分が死にそうだったから力を使ったんだね? 」
そう言うと再び手を出した。
「…ねえ」
「うん?何て言っているんだい? 」
「許さねえ」
「許さない?ははは、君に許されるつもりは何もないよ。20年前の時点で君に許される要素なんて全くない。だから、今回は君を顕現させる為に多くの供花を使ったんじゃないか」
話が合わない違和感と同時に天使の様な羽は既に消えていることに気づいた。
(何かがおかしい)
そう思った時、彼は二度目の拳を顔に打ち込まれる。
天使であった者は意思を持ち、怒りの矛先を白髪の男に向け、再び殴りかかるも三度目は白髪の男には通らず空を殴っていた。
「君、誰だ?キリアルヒャじゃないのか? 」
今まで全てを知っているかの様に振る舞っていた白髪の男は人生で生れて初めて動揺していおり、天使だと思えたそれは人としての意思を持ち再び口を開く。
「お前だけは絶対許さねえ、浅倉稔! 潤、優午さん、いや、供花にされた人々の魂をお前の死で洗い流してやる」
それは東 劃なのか、それともそれを模した何かなのか、それは全く分からない。
しかし、彼の目的、白髪の男を殺すことだけはハッキリと一致しており、再び彼に殴りかかりに行った。
走り寄ってくる彼に白髪の男は再びダガーナイフを握り込み、今の状況に対しての怒りを込め叫ぶ。
「生命開放、熾天使」
先程までダガーナイフであったモノは形を変え、彼の体よりも2倍ほどの長さの刀へとなっていた。
「キリアルヒャじゃないなら殺す」
長刀は地面を抉りながら、天使に向かって走り出す。
「うるせえ、お前は黙って殴られろ! 」
しかし、白髪の男の長刀は彼の体に触れる前に砕け散り、彼は三度目の拳を顔に受け壁の方へ吹き飛んだ。
先程と違ってしっかりと力が入っており、天使の一撃は今まで受けた傷の中で一番深く、そして、重いものであり、彼は再び身を起こし憎しみわ込めながら口を開いた。
「お前、本当に何者だ?本当にキリアルヒャじゃないのか? 」
それに対して天使は力強く答える。
「俺は東 劃。お前を殺す者だ」
そう言うと白髪の男に再び殴りかかった。
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