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散華のカフカ  作者:
二部 闘争の戦斧
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三十八章 第三首都事変 其の拾肆

黒と白が交じり合う。

凪良翔悟VSキリアルヒャ

支配の兵器同士の戦いに終止符が打たれる。

 人々の命を黒い華でそこら中に咲き散らし、キリアルヒャは煌々とした表情で天秤に集まる光を眺める。

 凪良はそんな彼女を見つけ地上に降り立つと刀を強く握りしめ彼女にそれを突き立てようとした。


「君を俺の物にして本当の意味で俺はこの世に生まれ落ちる! 今こそ俺は本物へと生まれ変わるんだ! 」


 羽を使いキリアルヒャとの距離を一気に詰め、襲いかかる。それは宗教に囚われた盲信的な信者の如く、己の悦を、己の意味をそこに見出すために(クアク)の物でもある体目掛けて容赦なく刀を振るった。


 キリアルヒャはそれを見ながらゆっくりと天秤に手を触れ、その真価を解放するため嘲る様な微笑みを見せソッと呟いた。


権能解放(オープン)支配(キリアルヒャ)


 天秤は右に大きく傾くとその皿から一本の武器を作り出し、キリアルヒャはそれを握り彼の振るう刀に交わらせる。


 その武器は剣でありながら先端に銃の様なモノがついており、握る柄は銃の様な形になっていた。それをキリアルヒャは楽しげに凪良の刀にぶつけ、宙に浮いていた彼は少し吹き飛ばされるもそれと同時に光の刃を放とうと黒い羽を広げた。


 瞬間、彼女はその剣の柄に付いている引き金に手を添え、銃へと変えると美しい黒い羽を撃ち抜いた。


 凪良は堕天使(ルシファー)の羽が貫かれた事に驚くも直ぐに立て直し、再び羽を広げ光の刃を放とうとする。しかし、目の前のキリアルヒャの背中にも彼と同じく八枚の白い羽が広げられており、彼らは同時に口を開いた。


生命開放(オープン)失楽園(パラダイス・ロスト)

権能解放(オープン)支配堕天使(キリアルヒャ・ルシファー)


 光の刃が同時に放たれ混じり合い、辺りをその閃光が焼き尽くす。黒い華は焼き払われるも甘い香りはより一層際立っていく。


 光に巻き込まれていた凪良は羽を広げ、空に飛ぶも煙で視界が遮られており、その羽を再び何処から放たれた銃弾に貫かれ渋い表情をする。しかし、なんとか空へと飛び上がり、黒いドームの天井まで到達するとそこには天秤を浮かせ笑いながら彼を見つめるキリアルヒャの姿があった。


「その羽、俺と一緒だ。いや、俺と同じ羽を作り出したのか?支配の兵器はあらゆる生命武器を使いこなせるのは知っている。でも、君が行っているのは持ってもいない武器を自分のものにしている。それどころか新しい武器すら作り出している」


 二度羽を貫かれた凪良は怒りを込めながら彼女に向かって声を荒げるも彼女はお構い無しと剣を見つめながら彼に喋りかけた。


「そうだね、急に本気を出してしまったから驚くのも無理も無い。少しお話をしよう」


 キリアルヒャはそう言うと空をフワフワと浮遊しながら凪良の周りを飛び回り再び口を開く。


「支配の兵器の能力は二つある。一つはあらゆる生命武器の支配。もう一つは根源を持たない新人類への特攻攻撃。ここまでが君が知っている能力だ。君が二十年前に顕現した事によって僕は目覚めてしまい支配の領域で一人寂しく過ごす事になった。あの時は本当にやることが無くてね。暇だから、そこで僕は自分の能力の研究を行い、そして、ある答えを得た。それがこれ」


 そう言うとキリアルヒャは凪良の周りを飛び回るのを止め、天秤を握り、それを強調すると彼は訝しげにその天秤を見つめた。


「それがどうしたって言うんだい? 」


 吐き捨てる様に言うも凪良は彼女の話を興味があるのを隠し切れておらず、その姿を見たキリアルヒャはそれに丁寧に答える。


「アポカリプスシリーズにはその兵器自身を象徴する武器を体内に形成している。僕であればこの天秤。名を支配の天秤。本来であれば弓なんだけどね。ここは良しとしよう。これはあらゆる物を公平(フェア)にする。でも、僕は存在自体が不公平(アンフェア)だ。ならば公平(フェア)にする為にどうするか。そこで目をつけたのが新人類の魂。僕達の肉体を黒い華に変え、灰にする能力。そこで残った魂を集めて僕の体を形成していたよね?僕はそこを利用した。後は察しのいい君なら分かるだろ? 」


「魂の収集か、成る程。魂を天秤に乗せて自分とその華にした人間達の(ソレ)公平(フェア)にしたって事か。それでもって天秤自体の能力が魂の収集と形成。俺がやった君の体を作り出す事と同じ原理で君は武器を作り出す」


 凪良の言葉を聞き終わるとキリアルヒャは嬉しそうに指をパチリと鳴らした。


「御名答! 流石、凪良だ。僕の体を渡しただけはあるね。さぁ、話は終わり。存分に殺し合おう」


「ああ、話が長くてうんざりしていたところだよ。御託はいいからとっとと殺させてくれ! 」


 凪良はそう言うと羽を開き光の刃を解き放つ。ジグザグと光は線を描き、それら全ては一人に向けられる。しかし、キリアルヒャも同様光の刃を放つとそれらを相殺し合い、目の前に爆風が上がった。


 凪良はその爆風の中を切り裂く様に飛んでいき、右手には長刀を、左手には黒い刀を握りキリアルヒャに振り下ろす。キリアルヒャはそんな彼を向かい入れるかの様に刀と先程作り出した武器で受け止めた。


 互いの刃が交じり合い、火花を散らす。白い天使に追いつこうと縋る黒い天使は刀と長刀を無我夢中で振るい続けると背中にある六本の剣も加えて手数の多さでキリアルヒャを圧倒していく。


 しかし、彼女の顔にはまだまだ余裕があり凪良はそれに余計腹を立て、攻撃は過激になりながらも正確無慈悲に行われた。


「鋭いね」


「君を殺す為に研いで来たんだ。当たり前だろ? 」


 そう言いながら突きを放つもそれをキリアルヒャは紙一重で避ける。幾度も幾度も放つ剣撃の数々を彼女は踊る様に舞いながら何度も何度も避け続けた。


 八枚の黒い羽と白い羽が空を舞い、激しく刃を交える。それは終末を描く絵画の如き美しさ。


 凪良は長刀から大剣へと武器を変えており、それを思い切り振り下ろすとキリアルヒャが握っていた二つの武器を空から地面へ落下させた。


 ガランと言うと音と共に二つの武器は彼女の手から離れていき、彼女は羽を使い彼を遠ざけようとするもそれよりも速く、再び剣を変え、七本の剣が現れる。


 そして、それを握りキリアルヒャの首元に剣を突き立てると凪良はゆっくりと口を開く。


決着(チェックメイト)だ」


 息が上がり体は空気を欲している。しかし、それでもその事を求め続けた、追い続けた彼女を前にして見せる事はしない。


 凪良は自分が漸く彼女に追いつけた、いや、彼女に手が届いたと思い彼は少しだけ幸福という感情を見出すことが出来た。


「凄いじゃないか、凪良。土壇場での急成長お見事だ。それでもってとても残念だ」


 白い天使は不敵に微笑み、宙に浮いていた天秤が光出す。凪良はすぐに剣を突き刺そうとするも彼女の両腕には光が宿っており、それを番える様に構え、再び口を開いた。


権能解放(オープン)後光刃(フォース)


 光は矢を形成し、放たれると凪良の心臓を貫き孔を開ける。

 支配の兵器である故に凪良の体は貫かれた箇所から再生を始め、体に走る受けた事のない痛みに耐え、彼は再び剣を突き立てようとした。しかし、それは彼女の首には届かず体の殆どを一瞬にして孔だらけにされる。


 キリアルヒャは綺麗に空いた孔から黒いドームの景色を眺め、力が消え、彼の体が落ちようとするとそれの首元を掴み上げた。


 凪良の体は再生し続けるも彼の意識は既に残っておらず、背中に生えていた黒い羽も彼の意識と共に無くなっている。


 そこから何かの雄叫びを聞きつけキリアルヒャは再び笑みを溢すと彼の体につけていた刀を取り、彼を慰める様に声をかけた。


「凪良、君との戦いはここで終わりだ。アップには丁度良かったよ。それとこれは貰っとくね。君には少し勿体無さすぎる」


 


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