三十三章 第三首都事変 其の玖
血染めの天使VS赫い天使開幕!
中盤戦も飛ばしていきますので振り落とされない様に!!
「闘争の兵器よね? なら丁度良いわ。ペトゥロ様の理想の為に死んでもらえるかしら? 」
血染めの天使は赫い髪を靡かせる闘争の兵器にそう言うと赤い羽を牢屋のようにし彼女を囲うとそこから攻撃を仕掛けた。
血で出来た羽は鋭利に研ぎ澄まされた剣の形に変化し、それを少女の体に突きつけようと無慈悲に放たれる。闘争の兵器は携えた戦斧を払いながらそれを切り落とすも羽から作られる剣は彼女の予想を遥かに上回る量が生成されており、それが一気に彼女に襲いかかった。
自分に向けられた全ての凶刃をブローニャ・デッカートは己の小さな体に封じ込められた人間を形作る根源の一つ、闘争の力で否定する。
「権能解放、闘争」
戦斧が赫い輝きを放ち始め、そこから漏れ出る熱は凶刃全てを溶かし尽くす。そして、羽の檻を切り裂くとアズラエルの体に権能が込められた斧を振り下ろす。
アズラエルの体にそれはしっかりと入り彼女の胸部を容赦無く切り裂くもブローニャは止まることは無く、彼女の体を横に真っ二つ叩き割った。
しかし、普通の人間であればハッキリと明確に分かる死であるのにアズラエルは血を吐きながら赤い羽を大きくし先端を刃の様にするとそれを再び彼女に向ける。
ブローニャはそれを鮮やかに避けると羽から同時に弾丸の様なものが飛んで行き、それをも超反応により戦斧で弾くもそこから羽の先端が襲いかかり、顔に擦り傷が出来た。
「ふふ、いい痛みだわ。明確に死を知らせる痛み。ああ、気持ちがいい。切り傷が焼き焦げる感覚も堪らないわ」
切り裂かれたはずのアズラエルの体はとっくに繋がっており、それを見たブローニャは擦り傷から流れる血を腕で拭き、彼女に問いかける。
「質問、あなた人では無いのですか? 」
彼女の問いにアズラエルは少し怒りを露わにするもすぐに切り替え冷静に答えた。
「何を言っているの? 私は人間よ。純粋までのね」
「虚偽。あなたは嘘をつきました。あなたは人間ではありません。人間はその様な再生能力は有していない。それは私達に似たものであります」
その言葉が言い終わった瞬間、ブローニャに血の剣が先程とは比べ物にならない速度で放たれるも彼女はそれを簡単に切り落とす。
「あんた嫌われてるでしょ」
「いいえ、私は嫌われておりません」
ブローニャは力強くそう言うと彼女の体に戦斧を振り落とす為、飛び上がった。そんな彼女を赤い羽は叩き落とそうと刃を払う。
血が飛び散りながら、刃と戦斧は激しく打つかり合い、部屋中に血を舞い散らせた。アズラエルは刃を突き放つと同時に先程同様血の弾丸を放ち、彼女の体に傷を入れる。しかし、それは擦り傷程にしか至らず、ブローニャは戦斧を払う度にその速度が加速していき、赤い羽を全て削ぎ落とし、彼女に戦斧を突き立てようとした。
瞬間、先程までは擦り傷程度にしかならなかった血の弾丸が彼女の目の前にしてブローニャの控えめな胸を貫いた。
唐突に今まで味わった事のない痛みが細い体に襲いかかり、彼女は戦斧の重みに耐え切れず、地面へと落下していく。
(破損確認、胸部に孔有り。吐血確認、背骨の破損確認。ああ、これが痛みですか)
動けない体、開けられた孔に熱が溜まっていく。
しかし、それが今まで感じた中で何故か一番心地良く感じてしまう。闘争に身を焦がされたその身体にとって痛みを自分を高揚させる一種の火薬。
ブローニャは痛みが齎す熱に身を焦がされながら立ち上がるとそんな彼女に視線をやり、アズラエルは声を上げた。
「あらあら、良い孔が出来たわね? 闘争の兵器様は傷をふさげないのかしら? 」
「いいえ、ふさげます。しかし、今はこの痛みが心地良い。何故かは知りません。理由不明。不明瞭。こんな事は良くない。本当ならすぐにでも直すべき傷、孔。でも、今はこれでいい。いや、これが良い」
ブローニャは笑いながら落ちていた戦斧を拾うとそれを彼女に向ける。それを見たアズラエルは少し悲しげに笑うと口を開いた。
「痛みが気持ちいいなんて私達案外仲良くなれたかもね」
「訂正。それは断じてあり得ません」
「可愛げのない兵器だこと」
彼女達の会話はそこで終わり、それ以降何も言わずに互いの距離を詰め、その武器を払う。
戦斧はアズラエルの体を容赦無く切り裂き、刃は無慈悲にブローニャの腕を突き刺す。しかし、彼女達に襲いかかる痛みは痛みではあらず、それは心地よい快楽、愉悦に変わっていた。
互いに自然と口角を上がり、彼女達は互いに互いを満たしていく。それは姉妹喧嘩の様にがむしゃらに貫き、切り裂き、そして、壊す。
血は部屋中に飛び散り、誰のものか分からない。しかし、そんな事はどうでもよく自らの目の前に立つ、障害を殺すために戦斧と刃をぶつけ合う。
そして、戦斧の放つ熱により、全ての血が融解し、赤い天使を守る物がなくなった頃、アズラエルは何かを察したのか自分の持つ剣を握りしめ彼女に最後の特攻を仕掛けた。
それは闘争の兵器にとっては避けるのも、受けるのも簡単であったがブローニャはそれを開けられた孔に貫かせる。その孔は徐々に塞がって行くもその剣は彼女の胸に突き刺さったままであり、全てが塞がった後にブローニャはそれを抜き、アズラエルの胸に突き返した。
アズラエルの血の羽は崩れ落ちていき、血の海を作り出す。アズラエルは赤く染まったブローニャの体を見ながら微笑むと朦朧とする意識の中、彼女に喋りかける。
「少し私の話をしてあげる。私、あなたと同じなのよ」
「疑問。一体何が同じなのですか? 」
ブローニャは話を折る様に呟き、アズラエルはそれを聞くとため息を吐くも同時に口から血を吐きながら再び口を開く。
「あなたが私に人間じゃないって言ったわね。あれ正解よ。私はあなたの劣化品。いや、それにすらならなかったただの歪な失敗作。闘争の兵器の設計図はね、あんたのリーダーしか持っていないのよ。だから、統合政府に反旗を翻そうとした奴らがクソ人形師が流した支配の兵器の設計図から作り出された人工物。それが私」
赤い天使はそう言うと口から再び血を吐き、膝を吐き倒れてしまう。
そして、彼女は自ら意識する死という感覚に少しの恐怖を覚えた。いつもなら治るはずの体は崩れ落ち、傷という傷から血が吹き出し、手足の感覚は冷たく薄くなっていく。
しかし、そんな彼女の体を何かが明るく照らし冷え切っていた体を温めてくれた。痛みでしか感じなかったはずの温もりを最後の最後でそれ以外の方法で感じる事が出来、赤い天使は頬に涙を流し、それは血の海に溶けていく。
彼女を見ながらブローニャは隣に座ると冷たくなっている天使の手を優しく握りしめた。
「あなたが何を言いたかったのか私には分かりません。同情を誘っているのか、それとも私が今後の戦いに支障が出る様にしたいのか、そんなことを考えてしまいます。しかし、あなたが最後に言いたかった事は覚えておきます、私に痛みの温かさを教えてくれた敵でありながら、自分の歪さに迷った悲しき天使。いや、お姉様とでも呼んでおきましょう。ありがとう、そして、おやすみなさい、お姉様」
突き刺された孔は塞がれてはいるもののそこには彼女が最後に貫いた剣の傷がハッキリと残っており、ブローニャは赤い天使の体が冷たくなるの確認すると立ち上がり耳につけていたデバイスに報告する。
「伝達、ヒュードル、敵鎮圧完了。繰り返す、敵鎮圧完了。ヒュードル、応答せよ、ヒュードル? 」
ビルは既に天井が壊され、見開きが良くなっており、辺りを見渡すと白い美しい羽を生やした白髪の天使が巨大な怪物と戦っていた。
怪物は両腕に形の違う鋸をつけており、それを辺り構わず振り回し、それを天使は笑いながら受け止めて切り返す。
ブローニャはそれを見るとそれが支配の兵器だという事を認識し、次の標的の下へ赫い羽を生やし飛び上がった。
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