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散華のカフカ  作者:
二部 闘争の戦斧
51/119

幕間 墓参り

箸休め回です!

お手に取って頂けると幸いです!

 作戦一週間前、那須川とリリィはとある墓の前に立っていた。それは幼少期の二人を、ただの黒い獣であったジュダ・ダイナーを支えたイヴ・サンロードの墓。


 二人は大きな花束に多くの花を敷き詰めており、墓石の前に置くと何も言わずに手を合わせる。


「なぁ、リリィ。イヴは何で最後にあの言葉を残したと思う?」


 那須川は合わせた腕を解き、急に彼女の方を向き喋りかけた。


「彼女の最後の言葉ね。あなたらしく無いじゃ無い、那須川。戦うことばかりでそれ以外だと意外に周りが見えてるくらいしか取り柄がないあなたがそんな事を考えるなんて。何か悪い物でも食べたのかしら? 」


 彼女は揶揄う様に彼に返すも那須川は真剣な眼差しで口を開く。


「ああ、そうだよ。ジュダ、影縫、イヴ、そして、君。昔の埋葬屋は何も背負わなくて良かった。僕は馬鹿みたく進むだけで良かったんだ。強く有ればいい。そうだと思い込んでいた。でも、今は違う。僕の背中には負ってしまった命と意思がある。これからの世界を切り開くのは僕じゃなくて彼らだ。だからこそ、イヴはどんな気持ちで最後にあの言葉を残したんだと思う? 」


 その言葉にリリィは少し戸惑うも口角を少し上げ、それに真摯に答えた。


「たしかに彼女が死んで十年。あんな状態でよく生きていたと思うわよ。なんせ「審判」に半分適合してしまったせいで体の中がボロボロになってたんだから。臓器が一年に一つずつ灰になっていく、想像しただけで地獄の様な日々。完全適合していればジュダとも出会わなかったし、私も死んでいた。それはそれである意味人類にとっては良いことだったのかもしれない。でもね、彼女が残した「自由に生きて」って言葉は死を運命付けられた恐怖の十年間からは絶対に来ない物だと思う。彼女の十年間は絶対に良いものだった。良いものしてみせた。ジュダが、影縫が、私とそして、あなたが。なんだって、私のお母さんの妹よ。根性が違うもの」


 彼女は微笑みながらそう言いながら、ほんの少し涙をこぼすとその場から那須川を残し、走り去ってしまった。


 那須川はため息を吐き、誰かの気配を察すると彼女が自分から身を引いた事に気付いており、それに喋りかける。


「なぁ、ジュダ。あんたはどう思う? あの人は今の僕達を見て何を思う? 」


 木の影に潜んでいたジュダが姿を現すと墓の方へと向かい、大きな花束を置き、その場で手を合わす。そして、それが済むと彼の質問に答えようと重く閉ざされている口を開いた。


「彼女は多分、俺の事を許さないと思う。お前達を半強制的にこの道に進めてしまったからな。だけど、それでも彼女は俺を叱った上で前に進めと背中を押してしまうのだと思っている。それが俺が彼女と過ごした十年間で分かった彼女の本質だ。足掻いている人間がどんなに間違っていてもそれを否定しない。彼女は誰よりも優しく、強い」


 ジュダはその一言を残し、那須川と墓に背を向け、影と共に消えていった。


 一人残された那須川は何かが吹っ切れたのかほんの少しだけ悲しそうに微笑むとリリィが走り去った方へと足を運ぶ。


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