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散華のカフカ  作者:
二部 闘争の戦斧
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三十一章 第三首都事変 其の漆

久々の投稿です!

よろしくお願いします!

 スペクターは携えた電鋸に力を込め、深淵の極地を彼らに向かい解き放つ。


生命開放(オープン)絶深淵領域(アビス・テリトリー)


 電鋸が凄まじい音共に部屋中に鎖を放ち、三体の傀儡達の視界を遮る。鎖は際限なく張られ、三体は閉じ込められるも、彼らはあえて自分から動こうとせず、スペクターが動き出すのを待った。


 三体は自分たちの視界を共有し、彼の動きを伺っていると牡牛の顔をした傀儡の目の前にスペクターが急に現れた。その傀儡は彼に向かい巨大な斧を振るうがそれは何本にも貼られていた鎖に引っかかり、その衝撃で両腕を振り上げたまま体がガラ空きになってしまう。


 その瞬間、スペクターは電鋸を一気に回転させ、彼の体に一撃を入れるとそのまま鎖の壁をすり抜けて、何処かは消えてしまった。

 牡牛の傀儡は切り傷を修復しようとするも背後から電鋸の回転音が響き渡り、自分達の視界を共有したその結果、修復に集中出来ず、再び現れたスペクターの凶刃を体に受ける。


 彼は三体の傀儡を封じ込めた鎖の結界の壁をすり抜けながら幾度も体に切り傷をつけていき、そして、最初にガタが来た蛇の傀儡を一瞬にして、鎖で吊るすとそれの動きを完全に止まることに成功し、他の二体も同じ様に動けなくなっていた。


 三体の傀儡の処理が終わるも未だにスカディからの連絡が来ない事で鎖の結界を崩さず、彼は一息をつくと彼女の身を案じる。


(スカディ、あいつに怒りと憎悪を向けるのは分かるし、彼女のリベンジのためにこの三体を封じ込めてるから何も言えないけど無茶だけはしないでくれ。後、僕が見ていないからって逆光聖剣(アロンダイト)の全力を使ったりとかは頼むからやめておいて欲しいな。あれは強力な分、その対価は底知れないから......)


***


 スカディは山羊頭の傀儡に二本の剣を携えながら容赦なく、それを振り下ろす。しかし、山羊の傀儡は手に握る杖を振ると見えない壁のようなものに阻まれ、傀儡と妹背山に傷をつけられずにいた。


「あんたこの見えない壁貼るのやめなさいよ。邪魔ったるくてあんたを叩き切れないじゃない」


 スカディは何度も斬りつけながら声を上げるもその努力は虚しく、壁には傷一つ付くことが無かった。そんな彼女を肴に妹背山はニヤニヤとそれを眺めながらデータを集めていく。


「壁はこの前のそこの幽霊野郎に対応して作り出したからね!そして、今回のその武器はどんな能力を見せてくれるのかな?今のところは何度も切りつけるだけで面白いも何にもない。そろそろ、私をあっと驚かせるようなモノを見せてくれてもいいんじゃないかな? 」


 その一言に腹を立てたのかスカディは一度剣を振るうのをやめ、その質問に答えた。


「うっさいわね、そろそろ温まって来たところよ。煽られるのも厄介だから一撃で消してあげる」


 彼女は左手に収まった聖剣を振り上げると怒りと力を込めて口を開く。


生命開放(オープン)逆光聖剣(アロンダイト)時間逆行(オーバーフロー)


 その一言により、聖剣は輝きを増し続け、光が全てを喰らう。そして、その光が消えると共に山羊の傀儡の体が半分になっていた。


 逆光聖剣(アロンダイト)の真なる能力。

 それは全てを喰らう光と共に少しの間、時間に干渉出来るもう一つの生命武器。


 それを見た妹背山は下卑た笑みを溢した。


 彼を守る者は無くなり、彼女は耳につけていたデバイスからスペクターに「完了」と連絡をすると彼も三体の傀儡をバラバラに引き裂く。そして、鎖の結界から飛び出すと二人は同時に妹背山に向かい走り寄った。


 殺意の込められた二本の剣と電鋸が妹背山へ向かい振り下ろすも、彼はそれを両方の腕で受け止め、スペクターの体に蹴りを入れた。


 重い重低音と共にスペクターは壁にめり込んでおり、唐突な痛み体中を駆け巡り声を上げた。


 スカディも彼の声を聞き呆気に取られるも妹背山が拳を振りかぶるのに気付き、二つの剣で防ぐと彼から距離を取り、スペクターと合流する。


「大丈夫、スペクター? 武器を解くなんてあなたらしくないじゃない」


 スカディはスペクターに手を差し伸べ、体を起こすと彼はそれに答えた。


「違う、僕は一度も武器を解いてなんていない」


「それじゃあ、あいつがあんたの能力に対応する様にしたってこと? あんたの能力は簡単に分析されるようなモノじゃないでしょ? 」


 彼女がそう言うと妹背山は既に彼らとの距離を詰めており、背中からコードに繋がられた先端が尖った剣のような尻尾が幾つも伸び、それが彼らに向かい襲いかかった。


 彼らはそれを飛びながら避けるもそれは一度捉えた獲物を逃がそうとせず、彼らに向かい方向を変え再び襲いかかる。


 剣先は鋭く尖っており、それが体に当たれば普通の人間で有れば即死するほどのものであったがスカディはそれを全て切り捨てるとガラ空きになった妹背山へと刃を立てようとした。


 しかし、彼の体に剣を振るうと見えない壁が再び現れ、彼に刃を突き立てられない。その瞬間、妹背山は彼女の体に拳を放ち、彼女はその拳の速度に反応出来ず、何発かを体に受けた。


「スカディ!! 」


 スペクターは大きく声を上げ、彼女に近づこうとするものの妹背山から伸びる尻尾が彼を邪魔して遠ざけられる。


 地面に膝を突くと彼女の痛みの容量(キャパ)が超え、口から血を出してしまった。


 一ヶ月前の古傷が牙を剥く。


 万全な状態で迎えたつもりであったが彼女は少し無茶をしていた。


 みんなに迷惑をかけたくない。


 そんな思いでこの場に立ってしまい、無理をして二つ目の生命武器を扱った。


 逆光聖剣(アロンダイト)はその能力ゆえに時間の巻き戻しを使うと自分の体にかつて受けた傷と同じ分の痛みが体を襲いかかる諸刃の剣である。


 これは使用者のみが分かる副作用。

 それでも彼女はそれを握りしめた。


 自分の為よりも仲間の為。


 何より、自分の事のように心配するスペクターの為。


 彼は少々心配症故に彼女はそれを少し疎ましく感じていたがそれよりも感謝が勝っていた。

 地下街で唯一の幼馴染。

 イジメにあっていた自分を助けてくれて、支えてくれた唯一の男の子。

 自分よりも埋葬屋に長くいて秘密にされていた事には腹を立てたがそれでも彼と過ごした時間は何よりも比べられないモノであり、彼女の宝物であった。


 彼が自分をどう思っているか分からない。

 一ヶ月前の失敗。

 そこで見た彼の怒り、憎悪、殺意、それらが混じり合い鬼神が如き、本能が剥き出しになった表情。

 彼女はそれをもう見たくなかった。


 自分が唯一心を許した幼馴染。

 そんな彼の為に彼女は痛みの容量超え(キャパオーバー)を迎えた体を無理矢理起こし、二つの剣を握る力を強め向かい来る妹背山に再び刃を突き立てる為に声を上げた。


生命開放(オープン)逆光聖剣(アロンダイト)時間逆行(オーバーフロー)


 光が再び全てを喰らい、妹背山はそれを笑いながら受け入れた。スカディはそこから自分の痛みを刃に変える、絶剣の能力を重ねて開放する。


生命開放(オープン)絶剣(デュランダル)影星(カゲボシ)


 彼女の体に蓄積された痛みはかつて類を見ないほどの剣撃の雨を降らし、フロアの地面を切り裂き、彼らは頂上から一つ下の階へと落下していった。


 妹背山の壁を貼る前に時間を巻き戻し、その瞬間に剣撃の雨を振り下ろす。未だに剣撃の雨は止まず、痛みが引いていったおかげで彼女は立ち上がり、スペクターを探しその光景から背を向けた。


 次の瞬間、満身創痍の彼女の後ろには体の半分が切り落とされた妹背山が笑いながら油断し切った彼女の背中へと凶刃を突き立てようとする。

 しかし、それは彼女の無防備な背中に突き刺さる直前で鎖のようなモノに阻まれ、彼は怒りを露わにしながら口を開いた。


「幽霊野郎!!!! お前は何故、私の邪魔ばかりをするぅぅぅぅ!!!!! 」


「うるさいよ、お前。僕は今機嫌が悪い。少し黙っとけ」


 彼もまた怒りが頂点へと達しており、それが武器の根源と深く繋がる事で新たな力を刻むとそれを彼の意思とは関係なく無意識に解放した。


生命解放(オープン)霊王(レイオウ)


 その解放は全てを飲み込む王の降臨。

 幽霊そのものの形、まさしく、幽霊(ゴースト)

 それ即ち、根源を喰らう厄災の一つ。


 既にスペクターの意識はそこにあらず、その場に倒れ落ちており、その巨大な幽霊を目の前に妹背山は呆気に取られ一口で体を飲み込まれる。


 しかし、それに呼応してか、切り裂かれた四体の傀儡の体からワイヤーが放たれその場にいた全ての傀儡を繋ぎ合わせ、山羊、人、蛇、雄牛、その四体の顔が繋ぎ合わされた怪物が現れた。


生命開放(オープン)絶人形王(ピグリオット)悪魔王(アスモデウス)


 人形から機械的な声と共にそれは霊王(レイオウ)の体を持ち、飛び上がりると頂上階の天井を突き抜け体が外界に姿を表す。

 それは咆哮と共に霊王の体に無尽に現れる刃を突き立て、彼を五十メートル下の地上へと引き摺り落とした。


 地上に落ちた二つの怪物はそこにいた人間を容赦なく潰しながらお構いなしにと何度も何度も拳を放つ。その拳は受けボロボロになっていく霊王(レイオウ)とは違って悪魔王(アスモデウス)は傷一つついておらず一方的な殴り合いの様に見えた。


 しかし、ボロボロになったローブの中からもう一つの影が姿を表し、朧げであった霊王(レイオウ)の拳がしっかりと形作られており、その中にはもう一つの怪物が佇んでいた。


 霊王(レイオウ)は自ら白いローブを破り捨てるとその姿を地上に現す。


 体には八枚の羽がついており、右腕には縦長い電鋸、左腕には丸い電鋸。かろうじて、人型ではあるものの臀部には恐竜の様な尻尾、顔は甲冑の様なモノで素顔を隠し、その裏には何が隠れているのか分からない。それは悪魔王(アスモデウス)の体を簡単に切り裂くと何度も何度もその両腕に付いている凶刃を振るい続けた。


 傀儡の体はバラバラになるともにその破片がその場に幾つもの飛び散り、ビルや地面に突き刺さる。

 そして、悪魔王(アスモデウス)を壊し尽くした霊王(レイオウ)は自分を黒いドームの一番上から見つめている白い天使に向けて獣の如き、咆哮を放った。


 その咆哮に白い天使は気付き笑みを溢すと黒い天使の首を握りしめながら呟く。


「凪良、君との戦いはここで終わりだ。アップには丁度良かったよ。それとこれは貰っとくね。君には少し勿体無さすぎる」


 意識の無い黒い天使を投げ捨て、支配の兵器は霊王(レイオウ)の目の前に降り立つと再び口を開く。


「ふふふふふふはははははははは、あはははははははははは!!!!!! いい!! 実に、実に、いい!!! 魅せてくれるねえ? スペクター!! まさかこれまでの物を出せるとは、期待以上だ。これなら僕の完全復活も近そうだ」


 支配の兵器は自分の快楽を満たすモノに対しての愉悦に浸りながら、その白い羽を広げ、両腕を祈りの形にすると自らの兵器としての力を怪物に向けて解き放った。


権能解放(オープン)支配(キリアルヒャ)


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