二十八章 第三首都事変 其の肆
視点がどんどん変わって行くのでお楽しみいただけると幸いです!
槍を携えたアポロスは那須川に目掛けて槍を無慈悲に放ち続ける。那須川はそれを簡単にいなし蹴りを入れ、同じ様な攻防が何度も繰り返された。
少ししてアポロスは大量の本を自分の背中浮かばせると前髪をかきあげあまり見せようとしない素顔を現した。メガネ越しに見える那須川に対して怒りを滲み出しながら口を開く。
「貴様、ペトゥロ様に拳をあげるとはなんと不敬な。万死に値するぞ」
「お互い敵同士だろ?大将が傷ついたくらいで怒るなよ?そんなんだと三下に足すくわれるよ?まぁ、君が相手にしてるのは三下じゃないから足をすくうよりも首をもってかれちゃうかもね? 」
那須川は左手を前にし挑発をするとアポロスは激昂し本に秘められてた武具を放出する。
「生命開放、絶武器庫・嵐」
本は那須川に狙いを定めるも辺りに無茶苦茶に武器を飛ばし、周囲を巻き込みながら彼に殺意を向け続ける。那須川は飛んできた武器を左腕で持つとそれで向かってくる武器の雨を弾き捌いていく。
「さっきも同じ攻撃ってあんまり芸がないね。こんなんだったら勿に譲らないで僕がペトゥロとやれば良かったかなー」
その呟きも束の間、武器の嵐から唐突に腕が飛び出して来るとそれを那須川は左腕で持っていた武器で受け止めるもそのまま吹き飛ばされてしまった。
那須川は自分が吹き飛ばされたのにも関わらず笑みを溢しながら宙で一回転して立ち上がると自分に拳が放たれた方に向かい走り出す。
そこには本の中から上半身を出した牛の顔をした怪物が顕れていた。
「生命開放、絶武器庫・迷宮王」
彼の一言により怪物は再び動き出し、目の前に走り寄った那須川は攻撃を放つも彼の拳は通じず、再び彼は怪物の拳を受け吹き飛んでしまう。
最初の攻撃は武器で防いでおり直撃を免れていたものの次の一撃は直接腕に当たり彼は少し顔を歪めた。しかし、それでもすぐに立ち直し怪物に立ち向かって行く。
「何だ、お前?何でまだ笑えてる?片腕で勝てる相手ではない筈だぞ? 」
「勝てる勝てないなんて問題じゃないよ。強者との打つかり合い。それから来る愉悦は痛みに勝るだけだ! 」
そう言うと那須川は再び怪物の拳を受けるもそれを手で受けるのではなく横に威力をいなす事で怪物と拳を打ち合い始めた。
最初は劣勢であった那須川だが拳を交える度に速度が上がって行き、怪物の攻撃を圧倒する。その横から槍を携えたアポロスが現れ、那須川の体に槍を放つもそれを簡単に躱すと彼と怪物に蹴りを放ち彼らを牽制した。
「うんうん、そう来なくっちゃ! 全力で来てくれ! そう出なきゃ面白くない! 」
那須川はそう言うと左手を広げ、何処からか鉄の棒のような物が彼の腕に飛んで、いきそれを握りしめ、秘められた力を解放しようとした。
瞬間、大きな音共に黒いドームの天井に小さな穴が空き、四つの色とりどりの流星がその輝きと共に各地に降り立つ。
***
影縫縫兎は一人ビルの頂上へと足を踏み込んでいた。彼らがチームを組んで三つのビルにある装置を無力化しに向かうもチーム自体は二つに分けていおり、一つは早く無力化が済んだ方が向かうと言う作戦であった。
しかし、影縫は一人、その残ったビルに向かい、誰に命令される訳でもなくそれが最善と踏み、彼は一人装置の守り人と対峙する。
「へぇ、あんた一人で来たんだ? 」
黒い戦闘服に身を包み、灰色の髪をした痩せこけた青年が影縫を見つめていた。
「そうですね、私一人で参りました。私自身は実力は乏しいため、そこにある装置の方を止めていただけると戦わなくて済むのですが。如何でしょうか? 」
影縫は丁寧に答えるも灰色髪の青年は彼に銃を向け口を開いた。
「ああ、何だ、元々俺は忠誠心なんて無くてね。だから、別に停止しても良いんだが。流石に何もせずに渡すのは悪いからね。ほら、忠誠心は無いけど恩はあるからね。ほんの少しばかり戦ってもらうよ」
銃を握る力を強め、影縫に向かい舌を出し挑発する。
「生命開放、罪」
影縫の体に弾丸が飛んでいくも彼はそれを自分の影を動かしそれを呑み込んだ。
「そうですか、分かりました。なら、私も本気で行かせてもらいます」
彼はそう言うと眼鏡をポケットにしまい、両腕を広げ、影を最大限まで伸ばすとその影を動かし灰色髪の青年に攻撃を始める。
「生命開放、絶影海」
影は広がり続け、青年を徐々に追い詰めて行くも彼は腕につけていたワイヤーの様な物を天井に放ち、それを使い壁を走り回る。
影縫はそんな彼を自らの影を唸らせ、波に乗る様にし追いかけ、彼に向かいスーツの袖から銃を出しそれを放った。
青年は両腕に携えた銃の引き金を引き、それを撃ち落としワイヤーを伝い影縫に向けて蹴りを入れ、彼は両腕で受け止めると影の波から落とされ体勢を崩し彼を追うことを止められてしまう。
その間に再び青年は銃弾を放ち、影縫はそれを影で呑み込み、一進一退の戦況が続く。そんな中、青年はワイヤーを使い天井に足を置き、宙にぶら下がると影縫に喋りかけた。
「なぁ、何であんた戦うんだ? 別に命令でここにいる訳じゃないだろ? 」
彼は何故か自分の心を読んでおり、その事に少々戸惑うも力強くハッキリとそれに答える。
「主人の目的の為に全力を尽くさない執事が何処に居ますか? 私は埋葬屋であるよりもジュダ・ダイナーに使える執事です。彼の果たそうとするものの為に全力を尽くすのが私の役目。そうですね、自己紹介がまだだったのでここで名乗っておきましょうか。埋葬屋六席影縫縫兎。主人の目的に全力を注ぐ者です」
青年は影縫の言葉に意外そうな顔をし、少し微笑むと口を開いた。
「いいね、お互い敵同士であれど殺す奴の名前くらいは覚えておきたいか。ヒュードル・トルストイ。そうだな、世界に牙を立て快楽を貪る者だ」
彼はそう言い、右手をパチリと鳴らすと共に声を上げる。
「生命開放、罰」
影縫は体に痛みが走り、口から血を吐くと動きが鈍くなり、その間にヒュードルが目の前に立っている。彼は影縫の体にワイヤーを巻き付けるとそれに向かい蹴りを入れた。
一方的に蹴り続けられ、影縫は口から血を吐き続けるも、彼は何とか意識を取り戻し自分の体を影に沈めワイヤーから脱出しヒュードルから距離を取る。
それを逃す事はなくヒュードルは銃身を影縫に向けて放った。弾丸には先程同様、罪の根源が織り混ざられており、影縫は影を腕に纏い剣状にすると声を上げる。
「生命開放、絶影海・朧」
両腕に剣状の影を作り出し、それを振り回すと銃弾を切り裂いていく。そして、それを携えたままヒュードルに向かい影を広げ、再び、波に乗り、彼を追い回す。
ヒュードルは銃を放ちながらワイヤーで床に触れない様に移動し、彼は銃弾が切り裂かれては放ち続ける。
繰り返すごとに互いの読み合いは高度になっていくも、影縫は体に限界を迎えその場に膝を突き、血を吐いた。
その血はこれまで以上の量であり、地面にねっとりと滲んでいる。自分の体に限界が来ている事を察するも再び立ち上がりヒュードルに目をやり、彼に闘志を向けた。しかし、ヒュードルの興味は完全に影縫から無くなっており、血を吐く彼を見ながら喋りかける。
「ボロボロだね。でも、もう飽きた。俺は俺でやらなきゃいけない事があるからね。ここの装置は好きにして良いよ。それじゃあね、影縫縫兎。暇つぶしには丁度よかったよ」
彼はそう言うとビルのガラスを割り、その場から姿を消してしまった。
影縫は訳も分からずその場に残され、体を動かそうとするも、ヒュードルから受けた生命武器の能力により大量の血を失ったせいで彼の意識は深い底へと向かってしまう。
ヒュードルは空中に体を投げ、重力に沿って落下して行く中、彼は耳につけているデバイスに向けて呟いた。
「あー、テス、テス、テス。こちらヒュードル。一つ目の装置が破壊された。繰り返す。一つ目の装置が破壊された。それだから、俺はこれからペトゥロ・アポカリプスをブローニャと組んで狩る事を任務にする。ラスコー、ピエール、後は任せた。俺は最初に死にに急がせてもらうよ」
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