二十八章 第三首都事変 其の参
様々なキャラを動かすので筆が乗ってしまいいつもより多めに書きました!!!
「途中から出て来た人形達は一体何だったんだろうね? 強くも無いし、面白みも無い! つまらないなぁ! 」
那須川は襲いかかる傀儡を一切の躊躇いなく顔を、体を、腕を、足を、全てを隻腕の腕と足で潰して行く。行人はそれに続く様に傀儡を切り落とし、那須川の追いながら勿の背中を押し彼女も一緒に戦場を駆けていた。
「勿大丈夫か? 」
行人は勿が足を一生懸命に動かし走るのを見て彼女の心配すると彼女はそれに微笑みながら返した。
「大丈夫だよ、行人。私の心配しなくても。それよりも前に行くと多分ここで一番強いのと当たっちゃうから行人、那須川を止めて」
しかし、言った先には既に那須川はおらずそれに気づくと行人と勿はため息を吐き、彼が向かった方へと全速力で駆け抜ける。
那須川は白い礼服に身を包んだ三人を目視するとすぐにそこに向かい突っ込んで行った。
「ペッローさんなんか一人突っ込んで来ますよ。止めますか? 」
「当たり前っす、アポロスさん。ペトゥロ様には近づけさせないっすよ」
二人は自分達の得物に手を取り向かって来る男に敵意を露にする。
「生命開放、雷獣」
「生命開放、絶武器庫」
那須川は自分に向かって来る黒い獣と大量の武器を笑いながら捌くと飛んで来た武器の一つを握りしめメガネをかけた男に投げ返した。
投げ返された武器はアポロスの体に届く前に消え再び多くの武器が那須川に向けて襲いかると同時に黒い獣は雷を帯びながら那須川に牙を向ける。
那須川はそれらを笑いながら一つ残らず打ち落とすと黒い獣の顔を足で踏み潰し、その踏み込みで彼らとの距離を詰めると微笑みながら口を開く。
「やぁ、やぁ、初めまして! ペトゥロ・アポカリプス! 僕は李 那須川!埋葬屋三席で常に強者を求める男だ! 」
アポロスとペッローがペトゥロの前に立ち彼を止めようと再び武器を構えるも近戦闘に於いて那須川を止める事が出来るものは居らず彼は全身に力を込めて声を上げた。
「覇号鉄鋼戟! 」
アポロスは防御の体勢を取っていたのにも関わらず、その回し蹴りが入るとそのまま隣に立っていたペッローの体ごといっぺんに横に吹き飛ばしペトゥロの目の前にいた騎士達を一瞬にして蹴散らす。
そして、そのまま飛び上がり空中で一回くるりと回ると彼はその勢いで自らの踵をペトゥロに振り下ろした。
「覇号鉄鋼斧! 」
足に意識を集中させ、斧のような踵落としがペトゥロに襲いかかるも彼はそれを左腕で防ぐとそのまま足を握り、那須川を地面に打ちつけた。
打ちつけられた那須川は受け身を取り、すぐに立ち上がり再び彼に蹴りを放ち、ペトゥロはそれを左腕だけでいなすと那須川は何かが引っかかり不満そうな顔をする。
「なぁ、なんで右腕を使わないんだ?僕が隻腕だからかい? 」
「いや、この右腕は使うのに少々エネルギーが必要でね。今は動かせないだけさ」
ペトゥロは自分に向けられる蹴りを、拳を、手で弾き一つたりとも体に近づけず那須川の武を否定していく。しかし、那須川もまた徐々に速度を上げていき一撃一撃が必殺の領域へと昇華させ互いに互いの実力を高め合った。
「ふむ、君とやり合っていたら埒が開かなそうだ。私も少々本気で行かせてもらうよ」
「来い!僕もちょうど体が温まって来たところだし! 」
ペトゥロは片腕で祈りの型を取るとそれを己の拳に込める。
「生命開放、絶拳」
那須川は自分にだけ向かって来る巨人の拳に幸福と多幸感を感じ、ペトゥロに感謝を込めながら呟いた。
「好的! (良いね! )」
彼は生命武器を使わず己の肉体と技術のみで強者との戦いに赴き、限界を超えて行く。そして、隻腕となった彼のオリジンはペトゥロの予想を遥かに上回り、白い巨人の一撃を凌駕する。
「覇号鉄鋼砲・廻! 」
拳がぶつかると同時にペトゥロの体は衝撃でふらつくとその隙を逃さず、那須川は追撃を行った。
「覇号鉄鋼槍・載! 」
ペトゥロの溝にその一撃が入り、彼はその痛みにより膝をついた。統合政府成立以来敗北という文字がなかった白い巨人がただの人間の技術により膝をつく。
吹き飛ばされていたアポロスはその光景を目の当たりにすると怒りに身を任せ、彼に向かい怒りと殺意をブレンドした武器の雨を降らせた。
「生命開放、絶武器庫・春雨」
降り注ぐ武器の雨に那須川は気付き、ペトゥロに背を向け、アポロスがいる方向へ駆けていく。ペトゥロはその無防備な背中に拳を放とうとするもフードを被った少女が目の前に立っており、彼女の姿を見て、足を止めた。
アポロスは那須川が間合いに入ると本を開き、そこから一本の槍を取り出すと彼が放つ拳に向けて槍をぶつける。アポロスは槍を怒りに身を任せながら振り回し那須川はそれを笑いながら捌いていく。
「貴様だけは許さんぞ! 」
「良い顔だ! それくらいの勢いがないと戦いは面白くないよ? 」
「殺す!!! 」
那須川の煽りにアポロスは過剰な程に反応し、放つ突きは速く、鋭くなっていく。
***
そんな彼らを眺めながらペッローの腕にはいつも二丁の拳銃ではない猟銃の様なものが握られており、その照準を那須川の頭に定めていた。
「アポロスさん、熱くなりすぎっすよ。こういう時こそクレーバーに行きましょうよ」
一人でそう呟くと一瞬の那須川が止まった瞬間、彼はその一撃に力を込める。
「生命開放、絶神獣・貫通弾」
引き金を軽く引くとそれは那須川に目掛けて一直線で飛んで行き白い獣が彼の頭を食い破ろうとするもそれよりも速く放たれた槍が神獣を貫き息絶えさせた。
「生命開放、絶鷹の目+絶神槍」
高層ビルの頂上からの狙撃により、極度の集中力と生命武器の反動により、イェーガーは目から出血したものの那須川の無事を確認すると安堵し、目を閉じて少しの間、眠りについた。
それは本来ならば不可能な程の五百メートル以上離れた場所からの狙撃。尚且つ、たった数センチ程しかない銃弾を銃弾で撃ち落とすと言う神技。
ペッローは撃ち落とされた事に呆気に取られていると後ろから現れた少年に不意をつかれ体に軽く傷を負った。
「ありゃ、またおっさんか〜。まぁ、良いや! この前の続きやろうぜ?」
「また君っすか? いい加減舐められるのも腹ただしいのでここいらで少し本気で行かせて貰うっすよ」
ペッローは猟銃の先端に取りつけ少年に向けて突進し、彼はそれを刀で受けると刀と剣が激しく交わり火花を散らす。
少年を眺めながらも勿はペトゥロから意識を遠ざけず、寧ろ、彼の方が獲物であり、自分の戦う相手だと理解していた。
「那須川と言った彼は私にこんな幼児に殺し合いを仕向けたのかい? 少女よ、私は君とは殺し合うつもりは無い。そこをどいてくれれば何もせずにいよう」
ペトゥロは普段通りの優しい言葉遣いで彼女と戦うのを避けようとするも勿は彼の言葉に聞く耳を持たず、睨みつける。
「私はあなたに用があるの、ペトゥロ・アポカリプス」
突如、自分の名が呼ばれたことに少し戸惑いを見せるもペトゥロは笑いながら黒いスーツに身を包み、フードを被り素顔を見せない彼女を見つめ、何も答えず出方を伺うことにした。
それに痺れを切らしたのか勿は両腕を前に構え再び口を開く。
「私の事本当に分からないんだね。ならもういい、分かって欲しかった訳じゃない。もしかしたら罪の意識があるのであれば私の事を覚えていると思ったけどそんな事は無かった。あなたにほんの少しだけ期待した私が馬鹿だった」
「素顔を見せないのにそのような事を言われても困るな。成長する人間なんて今の時代あまり見ないからね」
ペトゥロの一言が彼女の怒りに火をつけ、周囲に六つの壁が現れると勿はそれに自分の怒りと魂を込めた。
「生命開放、絶壁・4th」
四つの壁が縦横無尽に動き回りペトゥロに向かい振り落とされる。そこには一切の容赦は無く、勿は自分の怒りが込められた四つの壁を彼が中心になる様に置くと右手でパチリと指を鳴らした。
するとペトゥロの体が何かに押さえつけられる様に地面にめり込み、彼は再び地面に膝をつくことになる。
フードは脱げ、銀色の髪と同時に可愛らしい猫の耳の様な物が現れていたが、彼女はそんな事を気にせず膝をついたペトゥロに喋りかけた。
「ねぇ、これでも見覚えが無いの? 」
体を地面に押し付けられていながらペトゥロには何故か余裕があり、勿は更に怒りを覚えるもそんな事を気にせず彼は口を開いた。
「ふむ、まさかと思うが飢餓の兵器の出来損ないかい? 」
そう言いながら押さえつけられる体を簡単に起こすと彼女の目の前から姿を消した途端、後ろに立っており拳を振り下ろす。
彼女は自分に向かい来る拳を避けようとせず、壁の一つで防ぐと残ったもう一つに手を置くと呟いた。
「擬似権能解放、飢餓」
彼女の銀髪は漆黒に染まり、銀色の猫耳は黒猫の様になっていた。全身を黒一色に染めた彼女は彼の体に近付き拳を放つ。
「猫号鉄鋼砲」
それは那須川が放った拳の模倣。しかし、その一撃をペトゥロは腕で防ぐと少しよろめき、その隙に勿は再び何度も拳を放ち続ける。
「ふむ、その壁。自分が見てきた人の技術、能力、記憶を蓄積している、さながら巨大USBか。それを飢餓の権能を擬似的に解放する事でそれを喰らい力にしている様だね。面白い、少し遊ぼうか」
ペトゥロは黒猫の拳を、蹴りを受け止め、弾き、そして、捌き切る。勿の攻撃は目にも止まらぬ速度で上がって行くもそれを片腕だけで止めると右腕で拳を作り上げそれを彼女に放った。
勿はそれを壁の一つで受け止めるも壁は制御を失いその場に転げ落ち動かなくなってしまいそれを見ると彼女は声を上げる。
「その腕、まさか。あなた自分すらもパーツの一つとしか思っていないの? 」
「それくらいの覚悟がなければこんなにも傲慢な計画を立てない物だよ、お嬢さん」
青白い右腕は怪しく光り、黒猫と白い巨人は互いに睨み合う。そして、互いに再び距離を詰め拳を放った。
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