二十八章 第三首都事変 其の弐
主人公が主人公してる!
最初からトップギアで参りますので是非!
劃、スペクター、スカディの三人は傀儡の処理が終わると再び目的のビルへと向かっており、道中に襲いかかる傀儡を全て処理し、目的地のビルの目の前に到着した。すると、劃が苦虫を潰したような表情をしており、スペクターそれに声をかける。
「劃、なんでそんなに嫌な顔をするんだ? 」
「大体道中で察してはいたがよ、よりにもよって俺の仕事場が選ばれたのか。なんだか複雑な気分だ」
劃はそう言うと門に近づきそれを刀で叩き切り、三人はそのままビルに足を踏み入れる。そこはかつて戦友と共に事件を追った東 劃としての仕事場。しかし、その中は血生臭く、そこら中に死体が転がっており、血がこべりついていた。
「どういう事だ? 今の人類は一年の寿命の代わりにそれまで死なないんじゃないのか? 」
劃はそのおぞましい光景を見て呟くとスペクターたスカディはその魂なき骸に向かい手を合わせ、何も言わずに前に進んだ。劃はそれをついていき、真ん中の階段を駆け上がって行く。
五階に到着した瞬間、彼らは暗闇の中にいる何かの気配に気づき一旦進むのを止め、自分たちの得物に手をつけた。
「生命開放、絶折神・伝・<速>」
暗闇から声がし、身構える三人であったが劃の目の前にいたスペクターとスカディが姿を消し目の前に黒い戦闘服に身を包んだ男が現れ体に蹴りを入れる。劃はあまりの速度に目がついて来れずそれを刀で受けるも蹴りはその場から放たれものとは思えないほどの威力で受けた途端に体は宙に浮き、階段の壁へと吹き飛ばされ、スペクターとスカディも地面に叩きつけられており、何があったのか理解出来ずにいた。
「温いな、そのまま楽にしてやる」
男はそう言いながらスカディの体にダガーナイフを突き立てようと振り下ろすも劃がそれを刀で弾き、彼の体に蹴りを入れ距離を取った。
「スカディ、スペクター、先行ってくれ。ここは俺が食い止める」
「一人で止めるだと?俺を舐めてるのか? 」
暗闇から声がし、そこから黒と白が混ざりあった髪をした男が姿を現れた。
服には様々な武器が付いており、手にはダガーナイフが握られている。
「ああ、そうだよ。俺だけで十分だ」
「殺す」
劃の一言が彼の怒りの琴線に触れ再び姿を消すと部屋中から何かが動き回る音がする。
「行け!装置を止めて早く戻って来い。それまでは保たせるからよ」
スペクターはスカディを立ち上がらせ、彼の背中を眺めながら口を開いた。
「すぐ戻って来る。だから、死ぬなよ」
彼らは階段の方向へと向かい、戦場へ背を向ける。その無防備な背中に目掛けて無慈悲な蹴りが飛んで行くもそれを劃は刀で防ぎ弾き返した。
「な、言ったろう? 俺一人で十分だよ」
「そうか、お前の勇気ある行動気に入ったよ。名前だけ聞かせろ覚えておいてやる」
男は先程まで目の前にいたはずだったのだが目を離した隙に距離を取っており、劃は刀を握る力を強め、刀の先を男に向けると声を上げた。
「埋葬屋十席、東 劃。お前らの悪行を暴く者だ」
「ほう、なら俺も名乗っておこう。ラスコー・ロマーノ、世界に復讐の牙を突き立てる者だ」
互いに睨み合い、得物を握る力を強めると武器に宿る根源を引き出すために口を開く。
「権能解放、支配・刃」
「生命開放、絶折神・静」
劃の剣をダガーナイフで軽くいなし、ラスコーは彼の体に触れ彼を紙の中に封じ込めようとしたが、彼に触れても封じ込める事が出来ず、一瞬の動揺によりナイフを握っていた力が緩まり、その隙を突き劃の太刀を体に受けた。
ラスコーは体から血が流れるもその切り傷はあまり深く無く、彼は何も言わずに劃との距離を取ろうと後ろに下がるもらそれを逃がそうとせず、劃は彼の間合いに踏み込むと再び刀を振り下ろした。
後ろに下がると同時にラスコーの手には幾つかの紙が現れ、それを間合いを詰めてくる劃へと投げ込む。
「生命開放、絶折神・伝・<速>」
振り下ろした刃は空を切り、劃は姿を消したラスコーを追おうとするも彼の姿は何処にもおらずあたりを見渡そうとした瞬間、背後から唐突に痛みが走り壁の方へと吹き飛ばしされた。
後ろには先程まで目の前に立っていたラスコーが立っており、劃はそれを見るとすぐに刀を握る力を強め彼に向かって刀を振る。
それをラスコーは簡単にダガーナイフで弾き、彼にダガーナイフを投げつけ、再び紙を投げ姿を消した。
劃は投げられたダガーナイフを左手で受け止め自分の体に突き刺さるのを避けるも再び消えたラスコーに気付けず次は上から放たれた踵落としを右肩にモロに受け、痛みにより声を上げた。
しかし、それに間髪入れる事なくラスコーは先程よりも速度が上がった状態で部屋中を紙を伝い加速していく。
絶折神・伝・<速>は武器により作られた紙を投げる事でその紙を伝い投げた方向へと自由に行き来する事が出来る。そして、紙から紙へと伝う速度は回数を重ねる事により上がって行き今のラスコーの速度は亜音速の領域へと到達していた。
目に追える速度をゆうに過ぎており、劃は刀を握ることしか出来ず、そこへ目の前に現れたラスコーは彼が山勘で貼っていた防御を右足に速度と自分の体重と力を乗せ、ねじ伏せようとする。
「生命開放、絶折神・阿」
「権能鉄鋼」
ラスコーはその一言を最後に添え、劃を壁へと吹き飛ばし、部屋の壁に穴を開けて行く。
一枚
二枚
三枚
劃はそれを四枚目にして止め切るも彼の両腕は痛みにより殆ど上がらなくなっていた。
それを見てラスコーは再び姿を消し、彼にトドメを刺そうと再び亜音速の領域へと足を踏み込もうとした。
しかし、謎の違和感が右足に襲いかかりラスコーは亜音速の領域へと踏み込めず、その場に転がり落ちると自分の足に謎の痛みが走り、彼は劃を睨みつける。
「お前何をした? 」
ラスコーの声には怒りが混ざっており、それを聞いた劃はボロボロの両腕を無理矢理使い体を起こすと彼に目掛けて拳を放った。
その一撃はラスコーが起こしたばかりの体にぶつかり、劃の腕に痛みを残し彼は顔を顰めるもその痛みを我慢して何度も振りかぶる。
ラスコーはそれを腕で防ぐも彼の拳はただの拳よりも固く、そして、重くのしかかり、彼の腕に確実に痛みを積らせた。
「何したか? か、ただ意識しただけだよ。お前がくる瞬間に体を鉄になる様に意識しただけだ」
劃は痛みの走る両腕を両足にぶつけ、感覚を無理矢理取り戻すと刀を弱った力で握り彼に向けて再び口を開く。
「さて、まだ舞えるだろ? 俺と一緒に遊ぼうぜ」
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