二十六章 第三首都事変 開幕
遂に始まる第三都市事変編!
闘争の兵器の行方、それぞれの話の結末、そして、明かされる謎。
これからの展開にご期待下さい!
テレビに各々流されていた番組が一斉に同じニュースを繰り出す。その光景はそれがどれ程重要且つ注目すべきなのかを物語っていた。
「速報です。たった今情報が入りました。本日未明統合政府第三都市第一地区が何者かに占拠されました。占拠した者達からは都市の人間全てが人質で解放したければジュダ・ダイナーと言う男と統合政府総統ペトゥロ・アポカリプス様の二人のみで第三都市に向かえとの事です。繰り返します。統合政府第三都市第一地区が何者かに占拠」
ニュースキャスターが情報を繰り返す前に赤髪のモヒカン男がテレビに槍を突き刺した。テレビは半分に割れその場にいた彼を除く三人はまたかとため息を吐く。
「おいおいおいおい、舐めてんだろ、これ? ペトゥロ様を向かわせろだ? やっぱり許せねえ、第三都市ごと俺の武器で消し飛ばしてやる」
そう言い男は部屋から出ようとしたが彼が扉のドアノブに手をつけた途端、薄紫色の髪をした高身長の女が首元に剣を突き立てた。
「カエサル、これはペトゥロ様の予知の範疇よ。勝手な行動は慎みなさい」
「俺に剣を突き立てるなんて随分大きくなったなぁ、イズ! 」
カエサルと呼ばれた男は再び槍を右手に顕現させ、勢いよく彼女に突き刺した。しかし、それが彼女に当たる事はなく、むしろ、彼の頭に彼女の後ろから飛んで来た少年の強烈な飛び蹴りが入る。頭に入った蹴りによりカエサルは脳震盪を起こし、意識が飛ぶと転げ落ちてしまった。
蹴りを入れた帽子を被った金髪の少年は寝そべっているカエサルを引き摺り無理矢理席に座らせるとため息を吐く。
「イズ無茶しちゃいけないよ。こいつは人の話を聞かない大馬鹿だからやるなら殺す気でいかないと」
「ありがとう左門。でも、こいつがペトゥロ様を心配する気持ちは分かるわ。ペトゥロ様はもう向かっているし止める事は出来ないけど何かやれる事はないかしら」
彼女が心配そうにしているとその横から腕を組んでいたティフォンが声を上げた。
「ペッローとアポロスが先に潜入しているから俺たちの任務はあいつらからの連絡が来るまで待機だ」
***
ジュダ・ダイナーは一人、第三都市の壁の目の前に立っていた。都市は黒いドームの様なものに覆われておりそれに近付くと何処からか声がする。
「ジュダ・ダイナーあんた一人で来たらしいな。ペトゥロ・アポカリプスは先に入っている。それと暴れようとはするなよ。まぁ、暴れれば人質共がどうなるか分かるよな? 」
男の声が響くと黒いドームが開き招き入れる。
それは地獄への入り口の様に大きく口を開け、彼はそこに自ら足を運んで行く。
中には人々が外に出ており、入ってきたジュダを見ると声を上げた。
「助けてくれ! 頼む! 俺達は何もしてないんだ! 」
「何でこんな事になったの?! あなたのせいなの? ならあなたが行けば私たちは解放されるはず!! 」
「嫌だよ、死にたくない、死にたくない」
老若男女の叫び声がジュダの耳に響くも彼はそれらを聞き入れる事はなく、彼らの横を駆けて行き指示されたホテルの目の前に立った。
「入ってくれ、ジュダ・ダイナー。そして、その最上階に来い」
ジュダは何も言わずに言われた通りにビルに入る。中には豪華な装飾と巨大なフロアがありその中央にあるエレベーターに彼は言われるがままにそれに乗るとそこには彼の部下である男が待ち構えていた。彼は何も言わず、ジュダを脅す様に銃を突きつけるもジュダはそれを無視し最上階のボタンを押す。その空間に重い空気が流れ、互いに何かを喋ろうとせず淡々とエレベーターは最上階へと昇っていく。
扉が開きジュダは一人エレベーターから降り、乗っていた男の部下は何も言わずに扉を閉じる。
降りた先にはそこにはペトゥロ・アポカリプスと青髪の男、そして、真紅の髪の少女の姿があった。
「ようやく来たか、ジュダ・ダイナー。待ちくたびれたよ」
青髪の男がそう言うと両腕に携えた手斧を構え、ジュダとペトゥロに目掛けて一斉に投げつける。
ジュダは何も言わずにそれを斬撃で打ち落とし、ペトゥロもまたそれを掴み彼に投げ返した。しかし、投げ返された斧は横に居た少女が掴むと青髪の男に手渡す。
「奇襲にも慣れっこって訳か。いいね、それでこそやり甲斐がある」
男はそう言うと手斧にこれまでの怒りを込め、自分の世界へと足を踏み込む。
「生命開放、クロノス・Ⅴポイント」
五秒
ジュダとペトゥロの目の前に青髪の男と少女の姿が突然現れ、互いに斧を振り一対一の状況を作り出す。
ジュダの目の前に立つ青髪の男は手斧を彼に突き立てようと振るうも彼も不可視の壁によりそれを阻止する。
「いいね、ジュダ・ダイナー。あんたなら存分に語らえる筈だ」
「俺はお前と話してる暇は無いんだが」
ジュダの言葉を聞くと男は不気味な笑みを溢し、声を上げた。
「俺はあんたと話したくてウズウズしてたよ。三十年前の借り、隊長の仇、お前らが奪った俺の希望と幸福、語り尽くせないかもな。ああ、そうだ、戦う前に名乗っておくか。アシモフ・デッカート、お前達、いや、世界に絶望をもたらす者だ」
アシモフは両手の手斧を強く握りしめ、ジュダの命を刈り取ろうと襲いかかる。
***
真紅の髪の少女は巨大な斧を振り回す。彼女よりも大きく分厚い斧であるが彼女はそれをものともせずに部屋の床を、壁を削りながらペトゥロに迫って行った。
「ふむ、この場に立つと言う事は君が闘争の兵器でいいのかな? 」
ペトゥロの問いに答えようとせず少女はそのまま彼に勢いよく斧を振り下ろす。しかし、ペトゥロはそれを片腕で受け止めると彼女の体に拳を放つもそれを容易く受け止められるもそのまま蹴りを放ち斧ごと吹き飛ばした。
「目標の危険レベルを底上げします。マスターの情報を修正。危険レベルⅤよりⅧに移行。闘争の権能使用可能を確認」
「ふむ、やはりまだ権能を使っているわけではなかったのだな。しかし、それでも私の拳を受け止めるとは闘争の兵器とは底知れない」
「訂正要請、私は闘争の兵器という名ではありません。私はブローニャ。闘争の兵器であり、アシモフ・デッカートの忠実なる武器です」
携えた戦斧が赫く輝き始め、彼女は柄を握る力を強くし無機質に声を上げる。
「権能解放、闘争」
彼女の声に呼応し、赫い輝きが強くなる。
刃の一箇所に集まった光は辺りの熱を爆発的に上げ、それをペトゥロに目掛けて解き放った。
赫い光は熱を帯び、美しい円弧が斬撃となりペトゥロに襲いかかる。ペトゥロはそれを受け止めるため両腕をくっつけて祈りの型を取ると力を込めた。
「生命開放、絶技」
両腕で赫い刃を受け止めるも彼に当たった箇所以外が壁に当たりビルの壁に大きな切り傷を作った。
赫い刃は未だに光を帯びておりそれを携えながらブローニャと名乗る兵器はペトゥロに戦斧を振り下ろす。その力が想像以上に強く何度も刃物を受ける内に両腕の礼服が千切れ落ちる。
しかし、現れた右腕は青白く、人と呼ぶには程遠い形をしており、その存在そのものが死を表しているようですあった。彼女はそれに危機感を覚え、直ぐにその腕を切り落とそうと刃に灯る光を強くし、再びペトゥロに振りかざす。この場に於いて彼女だけが彼の異常性に気づいており何としても速くアシモフから彼を遠ざけようとした。
「直感か、いや、同族嫌悪かな? 」
その一言でブローニャの危機感は確信に変わり振りかざした刃にこれまで以上に力を込める。振りかざされた光の刃を死を司る右腕は最も簡単に掴み、そして、死に追いやる。刃は輝きを消失するも、それでも彼女は自らの力の全てを足に込め、無理矢理彼を壁際に追いやった。
「良いじゃないか、闘争の兵器。君の実力は予想以上だ。だが、まだ僕の計画に必要なレベルに至るには色々と足りていないらしい」
「意識の高揚を確認。いえ、これは怒り? 怒りと認知。あなたと同じになるつもりはありません、ペトゥロ・アポカリプス」
彼女は壁際に追いやったペトゥロに何度も斧を振りかざす。しかし、それは一度も彼の体に当たる事は無かった。彼女は覚悟を決め、ペトゥロの体に体当たりをし、壁に押し付けると再び身体中に力を込める。壁は先程の一撃により脆くなっており、簡単に崩れ去ると二人の体は空へと放り出された。
「マスター、これより作戦を開始してください。ペトゥロ・アポカリプスは必ず私が仕留め切ります。ラスコー、ピエール、ヒュードルに連絡。作戦を開始して下さい。繰り返します」
真紅の髪を靡かせながら少女は言葉を紡ぐと姿が見えなくなる。ペトゥロもまた耳にポケットに入れていたデバイスを通じ、彼の騎士達に指令を下した。
「ペッロー、アポロス、任務開始だ。これより闘争の兵器の確保を行う」
その一言により、統合政府発足以来最大にして最悪の事件である第三都市事変の幕が上がる。
***
「皆様、作戦開始の合図です。各チームに分かれて黒いドームの破壊を試みてください。ドームがある中では我々の電波は届きません。一刻も速く電波を繋げるためにドームの破壊を急いで下さい」
影縫縫兎はそう言うとドームの装置がある三つのビルに影を放ち、そこから黒いスーツを身に纏った者達が都市を駆けた。
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