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散華のカフカ  作者:
二部 闘争の戦斧
42/119

幕間 前夜

前の話で新しい章が開くと言ったなあれは嘘だ。

その前に一旦話を挟みました。

彼らの動向にも注目してください!

「隊長は闘争の兵器が来てから甘くなった気がします」


 白と黒が混ざり合う髪をしたガタイの良い男が隊長と呼んだ青い髪の男の目の前に立ち、喋りかける。青髪の男の片手には写真が握られており、そこには二人の男女が写っていた。


「私が甘くなっただと? 先日、ピエールに私の目的、覚悟を告げたばかりなのだがね。ラスコー、長い付き合いの君にそんな事を言われるとは心外だな」


 そう言うと写真をコートのポケットにしまい彼の目を見つめた。男の目には光は無く、彼の言葉にも強く返そうともしない。ラスコーはそんな彼に腹を立てたのか銃を取り出し、その銃口を彼に向けると再び口を開く。


「アシモフ、あんたと二人きりになるのは久々だな。覚えてるかい? あんたが俺を拾ってくれた日のことを。三歳の頃、俺も審判で多くの物を無くした。親と兄弟は目の前で灰になり、兄貴は俺に助けを求めながら死んでいった。途方にくれながら放浪し続けていると新人類とか言う奴らに旧人類やら何やらと言われ一方的に殴られる始末だった。幼い俺じゃあ何をされてもやり返せない。いつだってそうだった。俺は一方的に全てを奪われて行く立場だ。だが、二十五年前にあんたに出会ってから俺の人生は変わった。全てを奪われたあんたは奪われた物を取り返すのではなく全てを無に返そうとしている。俺はそこ惹かれたんだ。単なる復讐じゃない。全てを壊す覚悟、あんただけが持つ理想。それなのにどうしてだ? 闘争の兵器に名前までつけて。何を迷っている? あれはただの兵器だ。審判の産物であり、この世に居てはいけない物だろ」


 アシモフは向けられる銃口に動じる事なく、冷静に彼の話を聞き続けた。しかし、それにラスコーは更に腹を立て声を荒げる。


「昔のあんたなら銃を向けた時点で俺を殺してただろうに。アシモフ、俺知ってるんだ。あの兵器に自分の生まれる筈だった子供の名前つけてる事」


 その一言を聞いた途端、アシモフは銃口を右手で握ると彼の体に蹴りを入れる。蹴りを防ぐも銃を失ったラスコーはすぐにベルトにつけていたダガーナイフを持ち開放を行った。


生命開放(オープン)折神(オリガミ)


 アシモフの目の前からラスコーは一瞬にして姿を消し、アシモフの体に触れ紙の中に封じ込める。


(せめて俺の手で苦しみから解放してやろう)


 そう思いアシモフを封じ込めた紙に刃を振り下ろそうとしたその時、部屋の壁が破壊され巨大な斧を持った少女の姿をした兵器が現れた。


 彼女に気づいたラスコーは再び姿を消し、彼女の背後を取り標的を彼女に変え無防備な背中に刃を突き刺そうとした。真紅の髪を靡かせながら彼女は自分に向かう凶刃を見向きもせず、斧を持たない手で受け止めるとそれを自分の目の前に放り投げる。


 ラスコーの体は投げられたナイフと共に彼女の前に姿を現すも再び開放を行おうとした。少女はそんな男を逃がそうとせず、彼よりも速く全てを壊す、闘争の力を解放する。


権能解放(オープン)闘争(ポーレモス)


 斧が赫く輝き光が彼を飲み込もうとした時である。アシモフが彼女の肩に手を置き口を開いた。


「ブローニャ、彼は私の仲間だ。攻撃するのはよしてくれ」


 そう言われると斧を地面につけ攻撃を中止した。


「しかし、マスター。彼は今、貴方を殺そうとしていました。私はそれを阻止しただけです。加えて彼は隊の規律を乱した。それなりの処罰が必要だと思います」


 彼女は淡々と事実を述べるもアシモフは口に指をつけ何も言わず静かにするように命令すると彼女は喋るのを止めた。


「ラスコー、君が言いたいことは分かる。もしかしたら俺は甘くなっていたのかも知れないな。その事実に免じて今回の事は不問とする。その元気は明日の作戦まで取っておいてくれ」


 アシモフはそう言い部屋から出て行くとブローニャと呼ばれた兵器も彼についていき、その場に一人残されたラスコーは倒れ込むと目を閉じる。

 瞼の裏に広がる三十年前の地獄を思い返しながら彼の意識は何処か知らない所へ遠ざかって行った。


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