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散華のカフカ  作者:
二部 闘争の戦斧
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二十二章 覚悟

いよいよ闘争の戦斧編開幕!

人々の願いが何処に向かうか気長に待っていただけると幸いです!

 ジュダ・ダイナーは全ての話を終えると去り際に口を開く。


「君の力があればここから逃げ出すことは容易いだろう。だが、君を狙う連中がいる以上その貧相な力ではすぐに捕まることだけは伝えておこう。俺達に協力するかはまた明日聞く。それまではここで体を休ませろ」


 彼はその場から姿を消し、(クアク)は何もない部屋に一人ぽつりと残されてしまった。

 劃は拘束もしないで行ったジュダを怪しみながら彼が語ったことについて考えながら目を閉じる。


***


 そして、遠ざかる意識の中、再び彼は支配の天使がいる領域へと誘われた。


「どんな気分だい? 自分たちが作られた進化によって生まれた紛い物だったと聞いた感想は? 」


 キリアルヒャは自分の白く長い髪を縛り上げポニーテールのようにしており、それとは相反する色である黒いスーツに身を包んでいた。中性的な顔立ちで幼く無邪気に見えるもその微笑みの裏には劃が悩む姿を楽しんでいる様にも感じる。


「ガキンチョのくせにスーツとは随分と自分を大きく見せたいんだな」


 劃はキリアルヒャの言葉を無視して逆に煽ると白い玉座に座っていた彼女が一瞬にして目の前に現れ、驚きで声を上げた。


「そんなに驚くなよ、ここは僕の領域だ。僕が何処に現れようとも、どんな格好をしようとも自由だ。そんなに驚いているけど君だって僕の領域で服を着ているのにきづいていないのかい? 」


 キリアルヒャはそう言うと劃の目の前に鏡の様なものを出し自分の姿を確認させる。

 劃は鏡で自分が埋葬屋の着ていた黒いスーツを同じ様に着ていることが分かると彼女に話しかけた。


「ジュダって人から話は聞いたが結局お前一体なんなんだ?何故、お前が必要なんだ? 何で俺が選ばれたんだ? 」


「僕の質問には答えないくせに自分の質問は一方的に投げつけてくるとはね。まぁ、いいよ。いくつか答えてあげる。僕は前も言った通り終末兵器の一つで人類の『再誕』に必要なパーツさ」


 キリアルヒャは自分の髪を三つ編みにしながら話を続ける。


「『再誕』については追々自分の目で確かめて欲しい。僕の口から説明するのは些か面白みに欠ける。君が何故選ばれたかも僕は分からない。ただ、君は何故か魂の輪郭を理解していた。それだけだよ」


「説明になってないぞ。結局知りたいことは全く分かっていない」


 劃の言葉を聞くとキリアルヒャはため息を吐き彼を見つめる。


「君に全ての情報を与えるのは僕に利益はないんだよ。僕は君のパートナーでもないし、ただ肉体を貸しているだけ。君が死のうと、ペトゥロが死のうと、凪良が死のうと、今はどうでもいい。僕の興味は今のところある一人だけ。君は今のところただの入れ物さ」


「チッ、だったらあの時、殺しておいていればよかったろ」


「それだとマキナの未来予想から外れる事が出来ないんだよ。ジュダの話をよく聞いていたら出ていたろう? デウスエクスマキナの未来予想はほぼハズレない。ハズレる事があるとするならばそいつは特異点だ。まぁ、言えば僕は自らが特異点になって計画を壊すことを選んだってことさ」


 そう言うとキリアルヒャは自分で結ぶのに飽きたのか劃に自分の髪を差し出し、結ぶ様に首を振った。劃はため息を吐くと仕方なくキリアルヒャの髪を結んでいく。一本一本が白く艶やかな毛先に劃は少し見惚れていると結び終わると同時にキリアルヒャが目の前から姿を消した。


 急に姿を消したキリアルヒャに驚くと後ろ側から唐突に頭にデコピンを入れられ後ろを向くとそこには彼女が立っていた。


「急に消えて現れてってお前、俺のことおちょくってんのか? 」


 語尾を強める劃を見ながらキリアルヒャは嘲るように笑うと両腕を前にし構え、彼に喋りかける。


「君の質問に答えるも飽きたし少しゲームをしよう。僕に一発でも当てられたら君の質問に全て答えてあげる。ああ、因みに不意打ちは無しだよ」


「お前だってこの前何したか分からねえけど能力見たいな使っただろ。それがあるなら俺はそのゲームとやらはやらん」


 劃の言葉を聞くやキリアルヒャは再びため息を吐くと呆れながら再び口を開く。


「あれはまだ君の体が僕の根源に定着していないから出来た事だよ。今の君には正直やってもいいがすぐに目を瞑れば戻って来れる。だから、今回はなんの小細工なしの組み手、試合といってもいい」


「そうか、それならいいぜ。今度こそボコボコにしてやるよ」


 劃はその言葉を聞くや否やすぐに準備体操を始め、それが終えると一気にキリアルヒャとの距離を詰めた。


 彼は右手で拳を放つとキリアルヒャはそれを軽くいなす。しかし、いなされた腕で彼女の左腕を握り、もう片方の腕で彼女の服を掴むと腰に力を入れ彼女の体を背負い投げた。

 本来であればいなされた腕を使い他人を投げるのはほぼ不可能であるが彼は無意識の内にキリアルヒャと繋がった事で生まれた根源を引き出しており、肉体の限界を超えた力を使い彼女の体を思いっきり地面に叩きつけた。


***


(あれ? 俺何で目の前が真っ暗になってるんだ?てか、背中がめちゃくちゃ痛え。俺さっきまであいつと......)


 朦朧とする中、自分の荒い呼吸と目の前に立っているキリアルヒャの姿により彼の意識ははっきりしていく。


「どんな気分だい? 意識がない状態でまた意識を失う感覚は? 」


 キリアルヒャは大の字でのびている劃をニヤニヤしながら見つめていた。


「何で俺が投げたのに地面にぶつけられてんのが俺なんだよ」


「簡単な事だよ。僕と君の位置を入れ替えた。最初に言ったろう、ここは僕の領域だって。君は一応、理論上は僕と同じ力を出せる。さっきも今までの体じゃ出来ないような動きを君は無意識の内に行っていた。それじゃあ、話はお終い。早く立って、次のラウンドと行こうか」


 キリアルヒャは強制的に劃を立たせ、彼に向かい拳を放つ。劃はそれを左手で受け、蹴りを放つとキリアルヒャは逆の腕で彼の蹴りを止めそれを引っ張り上げる。劃は再び背中を地面にぶつけれるとキリアルヒャは彼の顔に目掛けて再び拳を放った。


 劃もそれに気づくと拳が入る前に体を起こし、それを避け、互いの拳が当たる間合いに入ると何も言わずに拳と拳をぶつけ合う。

 音だけがその場に鳴り響き、彼らは疲れを知らずただただ手を動かし続ける。どれくらい経ったのか分からなくなり劃は一先ず腕を止め、地面に座り込むとキリアルヒャに向かい声をかけた。


「なぁ、俺はこれからどうすればいいと思う? 」


 キリアルヒャは座り込んだ彼を見ながらクスクスと笑い始めた。そんな彼女に劃は怒りを覚え再び語尾を強めながら口を開く。


「いや、真面目に聞いてんだよ。俺はお前のせいでこんな状況になっちまってる。これから俺は何をすればいいんだ?埋葬屋に協力すればいいのか?それとも統合政府に身柄を投稿すればいいのか?ジュダって人の話が本当なら俺の生命の価値は一体何処にあるんだ? 」


 キリアルヒャはつまらなそうにそれを聞くと自分の髪を弄りながら彼の問いに答えた。


「君って本当につまらない人間だね。何でそうやってうじうじ考えるんだい?そんなんだから僕にとって今の君はどうでもいい存在なんだよ。支配の力を持って何故自由になろうとしない?君が生きたいまま生きればいいさ。まぁ、今の君は誰にでも狙われるし、君自身が弱いから逃げるのは無理だとだけ断言しておくよ」


 キリアルヒャは飽きたのか再び骸の玉座に座ると劃に向かい口を開いた。


「もうお目覚めの時間だ、東 劃。君は一度も僕に拳を当てられなかったにも関わらず質問してきた。この借りはいつか返してもらうから心して待ってくれたまえ。それじゃあ、劃。良い旅を」


 彼女の言葉によりその空間からどんどんと意識が遠ざかり、彼の意識は肉体へと戻って行く。


***


「二度目の挨拶になるね、(アズマ) (クアク)。それでは君の決断を聞こう。埋葬屋に入るかい? それとも自由を求めこの場から逃走を図るかい? どっちにする? 」


 目の前にはジュダが立っており、劃の返事を待っている。彼は腕に繋がれていた鎖を無理矢理引きちぎり自分の自由を勝ち得るとジュダを見据えそれに答えた。


「俺は俺の目的のためにあんた達に協力する。世界のためとかじゃない。俺が求める正義のために俺は戦う」


 ジュダはそれを聞き、少し笑うと背を向ける。


「ついてこい。円卓に案内しよう」


 扉の向こうに待ち受けるのは地獄か、それとも天国か。東 劃の物語が今、幕を上げる。


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