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散華のカフカ  作者:
二部 闘争の戦斧
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二十一章 審判 其の弐拾

審判編これにて閉幕!

いよいよ本編スタートです!

様々な人々の思いと願いは一体何をもたらすのか今後の展開にご期待ください!

 拳と拳が交ざり合う。

 互いの体は既に限界を迎えているのにも関わらず彼らは止まることを知らない。

 ジュダの蹴りがペトゥロの腕に当たり彼を吹き飛ばすとペトゥロは少ししてジュダに喋りかけた。


「やっぱり、僕の一番の障壁になるのは君だったか」


「今日はよく喋るな。遺言か? 」


 ジュダは顔に付いていた血を手で拭き取ると首を傾け、音を鳴らす。


「ふふ、そうだね。でも、それはむしろ自分にも言えるんじゃないかな」


 ペトゥロもそういうと両腕を前にし、祈りの型を取るとジュダに再び口を開く。


「なぁ、ジュダ。君なら僕がやりたいことを分かってくれているんじゃないか? 四つの兵器の事だって勘づいているんだろ? 」


「…… 」


「そういう所だよ、ジュダ」


 ペトゥロの腕には原初の炎が立ち込めるとそれを開放する。


生命開放(オープン)零絶焔刃(フーガ・ゼロシキ)


 焔を体中に纏うと彼は腕を前に矢を番える様な型を取る。焔はペトゥロの動かすがままに形を変え、矢の形に変化し、それをジュダに目掛けて放った。


 ジュダは最初それを撃ち落とそうとしたがその焔が纏う異様な空気を察知するとそれを止め、避けながらペトゥロに向かおうとした。しかし、焔の矢は避けた彼を追うように方向を変え彼に襲いかかる。

 いくら避けても焔の矢は彼を逃さず鬼ごっこに飽きたジュダは拳に力を込めると開放を行った。


生命開放(オープン)超越絶拳(オーバーフィスト)空圧(エアフォース)


 しかし、彼が矢に気を取られている内にペトゥロはもう一つの矢を彼に放っていた。後ろから襲いかかるもう一つの焔の矢にジュダは気づくと拳を放つのを止め、それを避けるために足に力を込めて右横へと飛んだ。


「ジュダ、これは誰にも見せていない私だけのオリジナルだ。存分に楽しんでくれたまえ」


 ペトゥロは不気味な笑みを溢し呟くと右腕を前にし指と指を重ねパチリと音を鳴らした。


生命開放(オープン)零新星(スーパーノヴァ)


 二つの焔が交ざり合い、ジュダを巻き込みながら巨大な火柱を立て爆発しらペトゥロはそれを見ながら再び焔の矢を番えるとその場に放つ。


 二度目の爆発。


 零新星(スーパーノヴァ)は二つの焔の矢をぶつけることで生まれる衝撃により爆発を起こす破壊の一撃。そして、それは一度放たれれば再び矢を当てることで何度も爆発を起こすことが出来る。これはペトゥロが万象と深く繋がることにより新たに根源に刻まれた究極の一。


「ジュダよ。君が神羅を渡しさえしてくれればこの焔を君にぶつけるつもりは無かったのだが。そろそろ焼き切れた頃かと思うが念入りにもう一撃放っておくよ」


 焔の矢を番え、再び火柱に放とうと手を前にすると後ろから体に衝撃が走りペトゥロは矢を放つ前に吹き飛んでしまった。何事かと思いペトゥロは吹き飛ばされた瞬間に体勢を立て直すとそれが襲って来た方向を向く。そして、そこには火柱に巻き込まれていた筈のジュダの姿があった。


 黒いコートがボロボロに焼け焦げマントを羽織る様になっており、目は赤く染まっている。血がそうしているのかそれとも他の何かぎそうさせているのかは分からない。しかし、今のジュダは根源により深く繋がっており、彼は自分のポテンシャルを、120%引き出すことに成功していた。


 吹き飛ばされたペトゥロは再び焔を身に纏うと向かい来る黒い獣と対峙する。


 ジュダは先程よりも早く動き一瞬にして彼との距離を詰め、ペトゥロはそれを防ぐ為に焔の壁を作り出すも容易くそれを破り彼は止まる事なく彼に向かい拳を放った。


 ペトゥロはそれを両腕で掴むと彼を巻き込んで火柱を立て様としたがジュダの拳は止まるとを知らず腕で防いだのにも関わらず体にそれが突き刺さりビルの壁に叩きつけられた。


「グハッ」


 壁にぶつかった時に鳴った重く鈍い音と自分の声が響き渡る。ペトゥロは朦朧とする意識の中、体に宿る焔全てを腕に込めるとジュダに向けて再び矢を番える形を取る。そして、それを放つと炎の矢はジュダに目掛けて正確無慈悲に飛んでいく。一本のみならず何本もの矢が彼に殺意を向けて放たれていた。


 ジュダはそれを緩急のある動きで一本また一本と避け、強制的にぶつけさせ爆発を起こす。それを繰り返すと彼を追う焔の矢は一つも残っておらず、立ち込める火柱を背景にペトゥロの下へと足を運んだ。


 その足取りはこれまでの傷や痛みが蓄積され重いものになっていたが何としても彼に最後の一撃をいれる為、これまでの全てに決着をつける為に力を振り絞りながら一歩また一歩と近づいて行く。


 そんな彼の姿を見るとペトゥロは問いかける。


「根源に引っ張られ過ぎてただの獣に成り果てたのかそれともジュダ・ダイナーなのか。今の君は一体どっちなんだい? 」


 赤い瞳を光らせながら黒い獣はそれにハッキリと答えた。


「俺はジュダ・ダイナー。埋葬屋創設者であり、ペトゥロ・アポカリプスの友であり、その友の暴走を止めれる唯一の男だ」


 ジュダはペトゥロの前に立つと両腕を前にし、最後の一撃を放つための準備を始める。

 ペトゥロもまた同じく先程よりもよりも遥かに大きく全てを飲み込む様な程の焔を腕に宿すと再び口を開いた。


「ジュダ、君と出会えて僕は本当に幸せだと思っているよ」


「そうか、それは俺もだペトゥロ。だが、俺らは過ちを犯しすぎ、そして、お前を信じすぎた。その結果、今の世界だ。歪でありながら一つに纏まってしまっている。統合政府は確かに俺達が目指した夢でもあり、世界の指針だった。しかし、それを今お前一人に持たすのは些か危険すぎる。加えて、お前が人間の根源を抽出して作ろうとしている四つの兵器。そこから導かれる答え」


 その言葉を放った後、急に周りの焔がペトゥロの表情を見せない様に大きく燃え上がるとジュダの問いを嘲る様に彼は答えた。


「まぁ、それは二十年後に話そう。計画には君も組み込まれている。それだけは言っておくよ。そして、お喋りはここまでにしてそろそろ一旦この戦いを終わりにしようじゃないか。その答え合わせは後でも出来るからね」


「言われなくてもそのつもりだ。それと、お前に二十年後があると思うなよ」


 互いに相手を見据え口を揃えて吐き捨てるように呟いた。


「俺の未来のために」

「僕の未来のために」


「「死んでくれ! 」」


 拳に魂、足に覚悟をジュダ・ダイナー、いや、黒い獣は己の全てを乗せてペトゥロ・アポカリプスに向けて疾走する。


 ペトゥロ・アポカリプスもまたそれを受け止めるため両腕に宿る焔を自らの野心を糧に激らせ全てを解き放つ。


生命開放(オープン)超越絶拳(オーバー・フィスト)一騎当千(フルドライブ)


生命開放(オープン)零絶焔刃(フーガ・ゼロシキ)零新星(スーパーノヴァ)


 ジュダの拳は焔を裂きながらペトゥロの体に天をも裂く拳が当たろうとする寸前、ペトゥロは現れた彼に向けて腕を前にし指と指を重ねパチリと鳴らした。


 瞬間、黒い獣の体は爆発に包まれ、体が焼け焦げになると彼はこの時、自分の敗北を理解し、それでもなんとしても最後の一撃を放った。拳は空を切りペトゥロはそれの直撃はまのがれたものの彼の放った拳の風圧はしっかりと彼を的得ており、体にそれがぶつかると踏ん張りをきかせていた足が宙に浮きビルの壁へと激突する。


 白い巨人と黒い獣はその場から動かなくなっており、都市の街並みは全て更地と化していた。


***


 幾分かしてペトゥロは体中に蓄積された痛みにより目を覚ます。目覚めと共に口から血を吐くと辺りを見渡し黒い獣の姿を探した。少ししたところにそれは死体のように転がっており、彼はそれに近づこうと自分の体を無理矢理起こし歩き始める。そして、かつて友であった者の首に手を添え、彼の生死を確認すると黒い獣の鼓動が止まっているのを理解した。


「ふふ、悪いねジュダ。君はようやく死ねたと思っているだろうし、さっきは僕もカッとなって死んでくれと言ってしまったがね。君にはまだやるべき事があるんだ。神羅はしっかりともらって行くけど、その代わり万象の力で君の心臓を無理矢理動かしてそれを君と根源を紐付けする事で再び未来のために働いて貰う。二十年後にまた、君と再びあいまみえるとしよう。それまでは互いにまたいいビジネス関係を保っていこうじゃないか」


 ペトゥロはそう言うと万象をジュダの指にはめ、彼がしている指輪を取ると自分の手に入れその場からいなくなってしまった。


 そこには黒い獣一人が残っており、彼の止まっていた鼓動は根源と繋がるとことにより動き出すと彼の意識もまた体に蓄積されていた痛みが無理矢理叩き起こさせる。彼は口から血を吐くと自分の生を実感した。


「何で生きてんだよ、俺は。何で生かしたんだ、ペトゥロ!!! 」


 獣の咆哮は誰にも届く事は無く無常に響き渡る。

 しかし、彼は彼らとの約束のために与えられた生にしがみつくとイヴ達がいる地下へと帰って行った。


***


 見知った天井に入り込んでくる人口の光は朦朧としていた意識を少しずつハッキリとしていく。


 横にはリリィと那須川が両脇に一人ずつ眠っている。そして、その横には本を読みながら彼の覚醒を待っていたイヴの姿もあった。


「やぁ、イヴ。久しぶりだね」


 その声に気づくとイヴは立ち上がり、ジュダに抱きつくと涙を流していた。


「あれほど無茶しないでって言ったのになんであなたはそうやって無茶ばかりして、傷つくの」


 イヴの言葉がジュダの心にズサズサと刺さるも彼はそれを宥めるように抱き返すと再び口を開いた。


「ごめんよ。君に心配をかけまいとしたんだがね。一体どれくらい眠っていた?」


「一週間、倒れていたあなたを影縫さんが連れてきてくれたのよ」


「影縫? 誰だそれ」


 彼女の口から出てきた謎の人物にジュダは危機感を覚え抱きしめていたイヴから手を離すとベットから立ち上がった。


「待って、ジュダ。影縫さんは私達の敵じゃないわ」


 彼女の静止を押し切りジュダは寝室から飛び出ると横の部屋で黒眼鏡をかけ、執事の様な格好をした男が紅茶を淹れながら主人の帰還を待っていた。


「お前はペトゥロの差金か? それとも」


「お初にお目にかかります、ジュダ・ダイナー様。私は影縫縫兎と申します。ダルタニャン様の元で執事の修行を経てここに派遣された所存です。以後、お見知り置きを」


 何が目的かさっぱり分からず彼は身構えたが指にはめてあった指輪が違う事に気づくと彼は構えるのを止め手を上げた。


「俺のことはどうなってもいいだから、あいつらだけは助けてやってくれないか」


「ジュダ様、勘違いしないで頂きたい。私は統合政府とは全く関係ない者でございます。ダルタニャン様はあなたのことをとても心配していました。それ故、彼の一番弟子であった私を向かわせたのです。彼からの最後の言葉は自由にあなたに仕えろというものでした。なので、私はあなたを勝手に主人とし忠誠を誓います」


 ジュダはそれを聞くとため息を吐き、彼が淹れていた紅茶に手をつけた。


「もうよく分からないが敵じゃないんだな。ならもういい、好きにしろ。それと俺は紅茶よりも珈琲が好きだ。俺を主人とするなら珈琲を淹れる練習をしろ」


「かしこまりました」


 ジュダは扉を開けるとその部屋から姿を消し、外に出た。

 夜明け前の暗闇と登ろうとする太陽の光が混ざり合う。

 それはかつて同志達と見たある光景に似ておりジュダは彼らと立てた誓いを思い返す。


「ペトゥロの計画に乗った時点で俺達の未来は決まっていたらしい。ならば、それをへし折って俺は俺が求める未来を自分の物にする。世界の最適化をいや、人類の『再誕』を」


 新たな決意を胸に彼らの物語の歯車は少しずつ回り始めた。そして、全ての歯車が揃う二十年後へと続いて行く。


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