十九章 審判 其の拾捌
審判編最終章突入!
未来へと繋がる最後の戦い。
お手に取って頂けると幸いです!
「ジュダ! また、服を散らかして! イヴも片付ける様に言って! 那須川も! 服を散らかさないで! 」
茶色い髪を靡かせながら少女は二人の男を叩き起こす。
「リリィ、怒んないでくれよ。ジジイが強すぎるのが悪いんだ」
「ジジイとは俺の事か、那須川? 」
水色の髪の少年の後ろに大男が立っており、頭を彼の手に掴まれると握りつぶされそうになっていた。
「ジジイ、痛えって! マジで、潰れる、潰れる!! 」
「なら、ジジイと呼ぶな」
彼の頭を握る力を更に強め、そのまま持ち上げられるとそれを見たリリィと呼ばれた少女はジュダの体に拳を入れた。
「ジュダ、那須川を虐めない! なんでそうやってすぐに喧嘩するの! 」
「リリィ、お前はイヴのところに行ってやれ。このガキは俺がもう少し叩きのめす」
「待て! ジジイ! 今日はもう終わりって言ってたろう! 痛い、痛い! マジで潰れるって! 」
三人の声が彼らのいる部屋に大きく響く。
そこはかつてジュダ達『ユグドラの木漏れ日』が過ごした円卓がある地下施設であった。
惨劇の後は残っておらず、リリィと那須川がここであった出来事をジュダは教えることは無かった。
少しして扉が開く音がし、イヴが大きな鍋を持って現れる。
「リリィはいいお嫁さんになりそうね。私、とっても嬉しいわ。那須川はジュダに勝ちたいのであればいっぱい食べることね」
イヴはそう言うとスープがたっぷりと入った鍋を円卓に置き、パンを取り出し、皿にスープを注ぎ三人に分けた。リリィと那須川はすぐにそれに飛びつくとムシャムシャとそれを食べ始めた。少しして那須川は目を輝かせながら声を上げた。
「イヴの飯は本当に美味いな! 」
那須川はパンをスープにつけると口一杯入れながら喋ってた。それを見たリリィは彼を注意しようと口を開く。
「那須川! 口に含んでる時に喋らない! それと、当たり前じゃない! なんたって、イヴは私のお母さんの妹なんだから! 」
リリィは胸を張りながらそう言うとパンを頬張る。二人の言い合いを見ながらジュダは何も言わずに本を読み始める。それを見たイヴは彼の下にスープとパンを持って行くと喋りかけた。
「ジュダ、まずご飯を食べちゃって? 洗い物は一緒にやってしまいたいの」
「自分でやっておくからいいよ。君こそ先に食べてくれ。二人は加減を知らないからな。あの鍋の中を全て食べ尽くしてしまう」
「イヴの分は残すけどジュダの分は残さない」
「俺もー」
二人はそれを聞いていたのかジュダを揶揄うと彼は無言でそれを眺め、少しだけ微笑んでいた。
「今笑ってたね? 」
イヴはにやにやしながらジュダに喋りかけたがジュダはそのまま笑いながら何も言わずに本を読み続ける。そして、部屋の光が全て消え、リリィと那須川が眠りにつくと同時に彼は外へ出る準備を始める。
「こんな遅くにどうしたの? 」
ジュダが身支度を済ませ外に出ようとした時、それに気づいていたのかイヴは彼が遠くへ行ってしまうように感じ声をかけた。
「少し外に出るだけだ。すぐに戻って来る」
「そうやって五年前、一ヶ月以上戻って来なかったのまだ覚えてるのよ」
「そうだね。あの時はなんとかここを探し出すために必死だったんだ」
「でも、あの時は心配したけど今となっては旧人類、私達のために色々やってたんだってなるとやっぱりあなたには感謝しても仕切れないわ」
イヴは彼をなんとしてもその場に留める為に喋り続ける。
「あなたが作り出した地下都市は色々不便は多いけど多くの人が救われたの。それとね、これから那須川もリリィも大きくなっていくし、その、だから」
しかし、彼を留めようと一生懸命になるが口が思うように動かず、彼女の目には涙が溜まり始めた。それを見たジュダはそっと彼女を抱きしめると彼女を宥めるように口を開いた。
「泣き虫だな、君は。でも、イヴ、安心してくれ。俺は必ず戻って来る。例え、この身が滅び、魂が焼かれようと君の元へ戻るよ」
彼はイヴの耳元で囁くと抱きしめていた彼女の体から腕を離し、扉を開けると彼女との約束を果たす為、ペトゥロとの決着をつける為に闇夜にその身を投じる。
***
統合政府第三首都にあるとある施設にて二人の男が互いの野望のため、白い天使が入った装置の前で座っていた。白い礼服の様なものに身を包んでいたペトゥロは対になる様に座っている妹背山に本のようなものを渡した。
「なんだい、これは? 」
妹背山は警戒しながらそれを受け取ると渡されたものをまじまじと見つめる。
「それはネクロノミコンと言う端末だよ。試作品を君には渡そうと思ってね」
「随分、信用されるようになったね。私も」
そう言うとネクロノミコンの電源を入れ、その性能を確かめ始めた。
「ふむふむ、悪くない性能だ。色々機能も良さそうだね。これからはコレを使わせてもらうよ。勿論、君にデータが漏れないようにはするがね」
「ああ、構わないよ。君とは今日で最後なんだ。それくらいの嫌味は気にしないさ」
「ふふふふふふふふ、これから起こる出来事は全て君は知っているのだろ? なら、教えてくれないか? 私はどこで死ぬんだい? 」
妹背山はペトゥロの両目をしっかりと見据えながら真剣な口調で言うと、ペトゥロは笑いながら答えた。
「君の求めているものを見つけた時に死ぬよ。何十年後は分からないけどね」
「ふん、そうか、ならよかった。求めている物が見つかると言う未来だけで私はコレからも生きていけるよ。それはそうとそろそろ作戦を始めたいのだがいいかい? 」
「そうだね、なるべく派手に頼むよ。私はこれから第二首都の方で行なっている<飢餓>の兵器の結果を見なければいけないからね」
ペトゥロはそう言うと席を立ちその場を後にしようとしたが、何かを言い忘れたのか彼の方を再び向くと口を開く。
「それと、凪良によろしく。新しく産まれ落ちる彼が凪良真琴なのかは分からないが<支配>の兵器と合わさった彼に伝えておいてくれ」
それを最後にペトゥロの姿は無くなっており、妹背山はため息を吐くと終わりの始まりとも呼べるそのボタンにソッと手を添え不気味な笑みを溢しながら呟いた。
「それでは、良い終末を」
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