十六章 審判 其の拾伍
更新遅れしまい申し訳ございませんでした!泣
お手に取って頂けると幸いです!
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アシモフが目を覚ますとそこにはアナスタシアが立っており、そこが夢の中とすぐに気付くがそれでももう会えない彼女を前にするとその幻影に話しかける。
「ここで君と会うのは久しぶりだね、アナ」
アシモフは当時の様な穏やかな気持ちになりながら言葉を発したが彼女は少し顔を歪ませると彼の頬に平手打ちをし、彼は殴られたことに対して何も攻めずに淡々と声を出した。
「すまない、アナ。君が言いたいことは分かるよ」
「なら、どうして、止めてくれないの? 」
その質問にアシモフは自分が生み出した彼女の幻影だと、言い聞かせ答えようとしない。アナスタシアはそんな彼に近づき、そして抱きしめると彼の耳元で囁いた。
「ねぇ、あなたと初めて会った日のことを覚えてる? 」
アシモフは彼女の問いになるべく感情を乗せずに答える。
「ああ、覚えているよ。俺が虐められてる時に君が虐めてる主犯のエイブラムを殴り飛ばした奴だね。今考えると俺は君に救ってもらってばっかだ。君に何かをしてあげれたことが何も無いし、君から与えられたものばかりだった」
アシモフは思い返せば返すほど自分の無力さに打ちひしがれてしまう。そんな彼を宥める様にアナスタシアは喋りかける。
「いいえ、アシモフ。私はあなたに何度も救われたのよ。あの時ね、実は私も彼らに虐められたの。エイブラムを殴った後、周りが私を避け始めて一人ぼっちになってしまったの。そんな時、あなたは私に声をかけてくれた。あなたの話はとっても面白くてユーモアがあって、心が救われたのは私の方なの。あなたは私の孤独を勝手に満たしてくれた。でも、中学の時に思春期で私を避けたのは許せなかったわ」
「あれは仕方なかったんだ。俺だって避けたくなかったんだけど。どうしても、照れ臭くって、ごめん」
「アシモフ、私ね。あなたに救われてたの。何度も、何度も。お母さんが先に亡くなって、お父さんが頑張って育ててくれたけど多分、あなたがいなかったら自殺していたと思う。でも、その穴を埋めてくれたのは誰でも無いあなたなのよ。あなたを止める事は多分、私には出来ない。私が何を言っても止まることは無いんだと思う。だから、これだけは約束して欲しいの。あなただけは生きて」
彼女はそう言うと抱きしめていた両腕を離すとアシモフに微笑んだ。
彼女のくしゃりと笑う表情を見て彼はその時ようやく彼女が自分が作り出した幻影では無く本物のアナスタシアである事を理解する。
「ああ、そうか、君は本当にアナだったんだね。俺はまた君を信じれなかったらしい」
懺悔にも似た声を出すと彼の頬には涙が流れている。そんな彼の涙を指でなぞり拭うとアナスタシアは再び口を開いた。
「何度も現れたら勘違いだってしちゃうわよ」
涙を拭かれたアシモフは彼女の目をハッキリ見ると別れと決意を込め彼女に言葉を放つ。
「アナ、俺は多分、君との約束を守れない。君が好きな世界は俺にとってはどうしようもなく苦しい世界だ。だから、全て壊してそれから君たちの元へ行く。ごめんよ、アナ。それと前、言いそびれてた言葉があるんだ」
彼女は悲しげに微笑むと彼の最後の言葉待った。
「愛してる。今までも、これからも」
「ええ、私もよ」
それを最後にアナスタシアの体は消えていき、彼はそれを見ようとせず、背中を向けて走り出す。
新たなる決意を胸に現実と言う地獄に、アシモフは再び足を運んだ。
***
アシモフを消しとばした所には謎のシェルターが出来ており、アシモフは焼け焦げだままその姿を残していた。
「やぁ、やぁ、やぁ、初めまして、戸松春人。私は妹背山!しがない人形使いさ」
アシモフを守っていた何かが一つになると不気味な傀儡が現れ、戸松に喋りかける。
「何だ、てめえ? 」
戸松は友の仇を消し損なったことに苛立ちを覚え、その声には怒りが滲み出ていた。
「まぁ、怒るなって。こいつはまだ殺させたくないんだ。わかってくれないか? 」
「分かる訳ないだろ」
戸松は傀儡に一瞬にして走り寄ると戦神の槍は傀儡の頭を潰したが破片が一つになり先程とは違う顔の傀儡になって復活し、また、周りからは傀儡の兵がぞろぞろと行進しており、その一体から声がした。
「私はようは時間稼ぎだ。主人公の復活の為の礎、存分に稼がせてもらうよ」
「時間なんて稼がせねえよ」
そう言うと再び開放を行おうとすると何かが彼の眉間に目掛けて飛んで行きそれを槍で弾くと戸松はその方向を見た。
「君の開放にはタメが必要なのは分かってるよ。上空に槍を準備しておかないとあの光の攻撃は放たてないんだろう? 」
そう言うと大量の傀儡が彼に襲いかかるも、戸松は一つ残った腕だけで槍を持ち、それらの頭を一撃で貫き、潰していく。
「雑魚がいっくら群がり、立ち向かおうと俺にとっては所詮雑魚は雑魚だ。来いよ、お前ら如きは片腕だけで十分だ」
戸松は槍を振り回すと一体、また、一体と傀儡が潰された、
「チッ、時間稼ぎにはなるかと思ったけど擬似生命武器を持たせることが出来なかったのが響いてるな。まぁ、これに関してはしょうがない。そろそろ、私も本気を出すか」
妹背山はそう呟くと周りの傀儡達が一斉に起動し、戸松に向かい一矢乱れぬ動きで走って行く。
「生命開放、絶人形王」
すると傀儡の一体が腕の形状を変化させ、ドリルの様なものが生まれるとそれを戸松に目掛けて発射されたが、彼はそれを上空に三本ほど槍を召喚すると彼に届く前に破壊した。しかし、その傀儡は止まらず、破壊された傀儡達をワイヤーで一つにすると巨大な腕を作り出し、それを戸松に目掛けて放つ。大量の傀儡が壁となっており、それらが戸松の視界を遮っていたせいで、その剛腕は彼の体をゴム毬の様に吹き飛ばした。
「よし、視界を遮る様に傀儡を動かして正解だったな。追撃にもう一発」
呟いた瞬間、魂を多めに入れていた傀儡から痛みが一瞬にしてフィードバックし、妹背山は口から血を吐いていた。
「は?」
思わぬ痛みにより傀儡との繋がりが切れてしまい再び接続すると彼は視界を共有出来る傀儡をなんとか探し出し、そこに映る映像を見た、
すると、そこには隻腕だけであった戸松の体にしっかりと腕が現れており、傀儡の全てが焼かれていた光景であった。
そして、そこにはアシモフと戸松だけが残っており、戸松はアシモフにとどめを刺そうとしていた。
「恨むぞ、アシモフ」
妹背山そう呟くと再び開放を行う。
「生命開放、絶人形王・合体化身」
視界を共有した傀儡を中心に全ての傀儡の破片が一つとなり巨大な怪物を形成する。それは纏まった形をしておらず、先程戸松に放った拳とは比べものにならない程の巨大な拳を彼に振りかぶる。
戸松はそれを簡単に避けるとそれの頭の上に飛び乗ると新たに作られた腕の力を解き放った。
「生命開放、絶戦神・火星粉砕」
新しく現れた右腕を怪物の頭に置くとそれを中心に戦神と軍神の光が入り混じり、怪物の頭にぽっかりと穴が空いた。虚無が広がるその穴に戸松は自ら落ちると中から再び開放を行い、怪物を一瞬にして蹴散らす。先程までの戸松の動きとはまるで違う別人かの様な力により怪物は燃え盛る大地と共に消えていった。
妹背山の体に痛みがフィードバックすると先程とは比にもならないほどの血を口から吐く。彼もまた体の限界を迎えており、それでもなんとかアシモフを起こそうと最後の傀儡を動かし、彼の体を揺すっていた。
「アシモフ、今回は本当の意味でヤバい。君が立たないと勝ち筋どころか私も君も殺される。頼む、アシモフ立ってくれ」
ボロボロの傀儡がアシモフの体をぐわんぐわんと揺すが彼は目を覚さない。
「起きろ、アシモフ! お前は神を殺すんだ」
ドスリ
傀儡の真ん中に槍が刺さっており、突き刺さる音が妹背山の言葉を遮った。
槍を突き刺したまま、戸松は口を開いた。
「キプロスの王如きが我に刃向かうとはなんとも愚かしいな」
ボロボロの傀儡はその言葉を聞くと最後の力を絞り出し声を上げる。
「お前も根源に引っ張られたか。人であることを辞めすぎたな」
「はぁ、勘違いはしないでくれ。戸松とはパートナー関係を結んだだけさ。我は俺で、俺は我だ。我は激る戦を求め、俺はお前らを殺すことを互いに求めた。利害の一致から我等は体を共有しているだけさ。まぁ、後はこの傀儡とそこにいる時の神を殺すだけだがな」
戦神は傀儡をアシモフがいる方へ放り投げると二本の槍を上空に顕現させ、自らの力を開放する。
「我に刃向かった事を後悔しながら死んでくれ」
「生命開放、絶戦神・絶軍神」
赤と黒、二つの光が入り乱れ、傀儡とアシモフの両方を飲み込んでいき妹背山は己の死を覚悟する。
そして、その地に残ったのは戸松いや、戦神ただ一人である筈だった。
「同化、時間神」
その声を聞くまでは。
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