十四章 審判 其の拾参
バリバリにキャラ動かすのでお手に取って頂けると幸いです!
日本へと降り立った三人に大量の銃火器が襲いかかる。全ての兵器が三人だけに向けられている光景はあまりにも歪である筈なのだが、三人はそれをものともせず、戸松は彼らに開戦の一撃を放った。
「生命開放、絶戦神・怒髪雨天」
光は人々を飲み込み喰らう。
しかし、ペトゥロは何かに気づくと戸松に攻撃を止めさせた。急な指示により戸松は驚くと攻撃を止め、声を上げる。
「何でだ、ペトゥロ? 」
「まさかと思ったけどそう言う事か。二人ともあれを見てくれ」
ペトゥロは光により焼け焦げた場所に指を差した。
二人は彼の指差す方向を見るとそこにはボロボロになった銃火器とは裏腹に光に巻き込まれていた人々がむくむくと立ち上がる。彼らの目には生気は無く虚な目をしながらペトゥロ達を眺めた。
「奴等、新人類を軍隊に用いているらしいね」
「一年の生命だからってあんまりにも酷くないかコレ」
「市民を巻き込むとはあいつらもなりふり構ってられないらしいね。二人とも一般人を傷つけるのは得策じゃ無い。なるべく、開放を行わずこの場を切り抜ける」
ペトゥロの言葉に二人は同時に「了解」と言うと彼らに向かい走り出した。
穴だらけになった体は修復されていく。
彼らは自分達が本当に死なない事を理解するとナイフを、銃を、携えて自国に仇名す、敵にそれを振り上げる。三人はそれを体術だけで対応した。軍隊でも無い彼らの技術では三人を止める事は出来ず、一人は投げ飛ばされ、一人は吹き飛ばされる。
一人、また一人と倒れていく中、それぞれ形の違う刀を携えた十二人の影達が彼らに向かい走り寄って行く。
先程まで無計画に突っ込んで来ていた兵士達の動きがピタリと止まるとその中から一人が戸松に刀を放つもそれを彼は片腕で掴み、放った刀を投げ飛ばす。
そして、刀と共に投げ飛ばされた男は空中で口を開いた。
「倶利伽羅隊、全員抜刀。目標を殲滅せよ」
彼の一言により彼を含めた十二人が一斉に声を上げた。
「生命開放、洋蘭」
「生命開放、水仙」
「生命開放、鬱金香」
「生命開放、桜」
「生命開放、鈴蘭」
「生命開放、薔薇」
「生命開放、百合」
「生命開放、向日葵」
「生命開放、天竺牡丹」
「生命開放、花車」
「生命開放、篝火花」
「生命開放、猩猩木」
十二人の刀が変化すると集まっていた三人を一斉に襲いかかり分断させられた。
分断された三人だったが戸松が大きく声を上げる。
「生命武器使うって事は本気でやってもいいって事だよな? ペトゥロ! 」
「ああ、とりあえずこの場を切り抜ける」
ペトゥロの一言により彼らもまた開放を行う。
「生命開放、絶戦神」
「生命開放、絶包丁」
「生命開放、絶技」
***
ジュダは自分に向かってくる大剣を紙一重に避けると持ち主の体へと拳を放つ。しかし、それは鞭とレイピアの攻撃により邪魔されると遠方に残った一人から槍が一直線に飛んでいき、ジュダはそれを腕で受け止め、その槍を彼らに返し喋りかけた。
「お前ら一体何者だ? 」
「我らは倶利伽羅隊。私は倶利伽羅隊「春夏」隊長水無月だ」
ジュダの問いに答えたの大剣を持った大男であった。彼はそれを聞くと少し考え、再び口を開く。
「お前らに提案がある」
「そうか。奇遇だな、我々からも同じくお前達に提案がある」
彼らは互いに睨み合いながら同時に同じ言葉を放った。
「「死にたくないなら、退け」」
その一言から戦いの火蓋は切って落とされ、水無月とジュダは走り寄ると拳と大剣を振るう。
ドン
戦場に重い音が鳴り響くと他の三人も大男の援護する為にジュダに攻撃を放った。
大男の後ろにいる二人が鞭からしなやかな剣撃とレイピアから強力な突きを放つ。しかし、ジュダはレイピアを簡単に避けると鞭の先端を手で捉え、それを思いっきり引っ張り上げると鞭の使用者は引っ張られ、ジュダはそれを逃さず彼の下へ近付き拳を放とうとする。それを阻止しようと遠方から再び槍が投げられた。
瞬間、槍を投げた葉月は獣がこちらを眺めながら笑っている事を見ると背筋が凍った。ジュダは握る拳を緩め自分に向けられた槍を受け止めると宙に浮く鞭使いを無視し、槍が投げられた方向へ疾走する。そして、獣は一瞬にして葉月の目の前におり、周りの仲間達もそれに気づくと彼女の元へと走った。
「助けて」
しかし、その最後の一言はジュダにしか届かない。
仲間達が辿り着くとそこには顔が潰され、事切れた葉月の姿であった。
「チッ、全員陣形を崩すな。皐月、文月、金剛の型で行く。援護しろ」
彼らは事切れる仲間に何の感情もいだこうとせず、己の任務を成し遂げる為に体を動かし、そんな彼らを眺めるとジュダは憐れみながら力を開放する。
「生命開放、絶拳・空圧」
拳から放たれた空気の壁は彼らの陣形を乱させる。後ろの二人が吹き飛ぶとジュダは水無月の前に立っており、水無月は気付いた瞬間に剣を振るった。
「生命開放、絶廻蹴・衝撃」
ジュダは振り下ろされる大剣に蹴りを入れる。
ドン
再び重低音が鳴り響くも大剣を伝い襲いかかる衝撃は水無月の体の隅々に巡ると彼は体中から血を出し倒れてしまう。
ジュダはそこに拳を放ち、容赦無く顔を潰すとそんな彼を横目にジュダは残った二人に話しかけた。
「降参するなら今すぐ立ち去れ。そうすれば命までは取らない」
彼はそう言うが残った二人は構えを崩さずそのまま立ち向かって来るとジュダはそれを見てため息を吐き、一瞬に彼女らの顔を潰し、根源に囚われた魂を解放させた。
「強制的に根源に繋げて洗脳していたのか。悪趣味すぎるな」
ジュダはそう呟くと想像以上遠くに分断されていることに気づき彼らがいる戦場へ帰ろうとした。
「いやー、倶利伽羅の皆はん、顔潰され即死どすなぁ。ジュダはん、人心やらあらへんのどすか? 」
死体の方から声がし、ジュダはその方向へと首を振り向くと彼の体は何かに吹き飛ばされたがすぐに体勢を持ち直し、その声の主の姿を見た。
透き通る様な銀髪で袴を着た男はジュダが自分を捕捉すると再び口を開く。
「おお、良う吹き飛ぶわ。はじめまして、ジュダはん。鏑木直斗と申します。自分、ジュダはんを殺すのが目的なんどすけど大人しゅう死んでくれはりますか?」
「断る。代わりにお前こそそこを退けば殺しはしない」
「しゃあないどすなぁ。大人しゅう死んでくれたら楽に殺したのに。ほな、まぁ、存分に遊びましょ」
そう言うと互いに両腕を前に構え、二人同時に開放を行った。
「生命開放、絶技」
「生命開放、絶折神・静」
同時に開放したのにも関わらず、ジュダは再び吹き飛ばされていた。自分の身に何が起こったかがさっぱり分からず体勢を立て直すと鏑木から距離を取る。
「なんや、いけずやな。もっと近づいて話しまひょ」
腕に小さい紙ような四角い物体を何枚も握っており、それをジュダに放つと口を開いた。
「生命開放、絶折神・伝」
紙を伝い、何度も姿を消しジュダの目の前に現れると彼に空中で回し蹴りを入れた。腕でそれを受けたジュダはそのまま足を掴み握り潰そうとしたが、自分が四角い物体の中に閉じ込められており、それを鏑木が殴りつけるとジュダは近くにあった建物の壁に叩きつけられた。
彼の追撃はそれで止まらず、建物に叩きつけられたジュダの目の前に現れると再び紙に封じ込め、蹴り飛ばす。建物はヒビが入り砕け散り、他の壁に吹き飛ばされた彼を見ながら鏑木は微笑むとジュダに話しかけた。
「ジュダはん硬いなー。何でこないに硬いんどすか? 」
「お前の能力は大体理解出来た。来い。」
「はぁ、ジュダはん、話がわかってへんな。あんたが自分に勝てることはあらへんどすえ。さっきまでのやつを続けて詰みどす」
「やってみなければ分からないだろ。御託は良い。来い」
鏑木は再びため息をつくと紙を投げつける。
「生命開放、絶折神・伝<速>」
先程よりも速い速度で紙を伝うとジュダの目の前に現れたが、ジュダはそれに合わせて開放を行った。
「生命開放、絶拳・衝撃」
地面を伝う衝撃は紙を、吹き飛ばし、彼の体は紙と共に空中へと浮かぶとそれに向かい拳を放つ。
「生命開放、絶拳・空圧」
空気の壁は紙を全て引きちぎるとそこから鏑木が姿を現した。空中に浮いている彼の元に一瞬にして近づくと拳を放つ。しかし、ひび割れた地面に叩きつけられていたのはジュダであり、左肩には刺し傷も残っていた。
「なんも理解できてまへんどしたなぁ。ほんまは短刀使うの好かんのどす。それが武器になってまうのがえげつのうダサい。ほんでも使うた言うのんはあんたのことそれなりに認めたさかいどすえ。だから、もう諦めてくれしまへんか? 」
鏑木はボロボロのジュダを空中から紙を下ろし見下しながら降りて行った。自分の懐に短刀についた血を吐き鞘に収め、それを入れると再び口を開く。
「そろそろほんまに諦めてくれしまへんか? あんた以外にも殺らなあかん人多いんどす」
「断る。俺には守るべき物があるからな」
「そら自分達にも言える事どす。営み、暮らし、それあんた達は奪おうとしてるんどす。わかってますのん? 」
「ああ、分かってる。ペトゥロがおかしいのもこの世界が間違っている事も分かっている。だけど、今はまだ世界を最適化するには速すぎるんだ。世界を最適化した後にこそ人類の新たな未来が訪れる。俺はそれに至るまで止まる事は出来ない」
ジュダはそう言うと両腕をくっつけ祈りの型を取り、燃えたぎる心をその解放に込める。
「生命解放、限界超越」
ジュダの服の上に黒いコートの様な物が現れ、彼は鏑木に向かい走って行く。
「服着たくらいで何変わったんどすか? 自分から間合いに入ってくるなんて愚かどすなぁ」
そう言うと間合いに入ったジュダを紙に封じ込めようとした。しかし、目で捉えたはずのジュダはすでにおらず背中から強烈な痛みが走る。
「ぐはぁ」
鏑木は急に来る痛みから声を上げた。
そんな彼に対してジュダは容赦無く拳を振るう。二度目の拳は紙を伝う移動によりギリギリのところで避けると彼は怒りを武器に込め開放を行った。
「生命開放、絶折神・雷」
ジュダの間合いに自分から入って行く。彼は鏑木の動きを目で追っていたが彼のその動きを捉えることが出来ず、一瞬にして紙に封じ込められてしまい動けなくなってしまった。
鏑木は短刀を懐から取り出すと「去ね」そう言うとジュダを封じ込めた紙に短刀を容赦無く何度も突き付け、彼が二度と戻って来れぬ様に何度も刃を突きつけた。しかし、全てが終わり片付いたと思い顔を上げるとそこにはジュダが立っており、すでに拳が放たれていた。
「生命開放、超越絶拳」
それを止めるため鏑木は彼を再び封じ込めようとしたが、鏑木がジュダを封じ込めるよりも先にジュダの拳が彼の体を貫いた。
「ああ、しくじってもうた」
地面に多量の血が滴り落ち、ジュダの腕にもべったりとそれがついており、黒いコートは血と混ざりさらに濃い色になっていた。体から腕を取ると鏑木は口から血を吐く膝をついて倒れるとそんな彼を眺めるながら鏑木に声をかけた。
「すまない、鏑木直斗。俺はお前が守ろうとした物を壊すことにだろう。でも、約束する。人が誰も恨まず、憎まず、傷つけない時代をいつか必ず作り出す。お前が守ろうとした物をその時代にまで俺がなるべく繋げる様に努力をする。だがら、安心して眠ってくれ」
彼の言葉に反応してから少しだけ鏑木の口角が上がり、彼はその場で事切れてしまった。ジュダはそれを見ると彼に背を向け、二人が戦っている戦場へと急いだ。
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