十二章 審判 其の拾壱
ガンガン戦闘するのでお手に取って頂けると幸いです!
描写を丁寧にすると地の文が増えちゃう泣
黒き黙示の獣は再び、力を手に取る。
かつて、あらゆる兵器を踏み躙ったその力を。
戦神の槍はジュダの腕に収まり、それを戸松に投げ返すと投げたと同時に戸松の下へと走り寄った。
「お前とやり合うのは十三年ぶりだな! 昔は負けたが鈍った体で勝てると思うなよ! 」
投げられた槍を掴むと向かって来るジュダに槍を突き刺し、彼はそれを拳で受けると互いに少し吹き飛んだ。ジュダはこの場に居れば彼女達に被害が及ぶと思い戸松と自分を遠ざける為に祈りを込める。
「生命開放、絶拳・空圧」
放たれる拳は空気の壁を作り出し、それをぶつけると戸松は部屋の外へと吹き飛んだ。
それを見たジュダはすぐにイヴ達の下に行くと彼女達を急かす。
「イヴ、ここから速く逃げるんだ」
「それじゃあ、約束して」
「こんな時に何を」
「必ず私を探しに来て」
ジュダはため息を吐くが目を開くとはっきりと答えた。
「分かった。君とリリィの事を必ず探し出す。約束だ。何があっても探し出す」
彼はそれを最後に彼女達に背を向けると空いた壁からその身を戦いに投じ、彼女も彼との約束を守る為にリリィを抱えて、その場をすぐさま後にした。
吹き飛ばされた戸松は彼が壁から降りて来た瞬間にその槍に力を込め、投げる形を取ると叫んだ。
「生命開放、絶戦神・怒髪衝天」
ジュダが地面につく手前に槍を放つ。
放たれた槍は光となり、地面を抉り赤い道を作り出しながらジュダに迫って行く。
ジュダはそれを見ると地面に降りる手前で口を開いた。
「生命開放、絶拳・衝撃」
拳を地面に叩きつける様に着地するとそれを伝う衝撃により赤い光を消し去り、槍はジュダの目の前に突き刺さっていたが戸松が手を開くと彼の元へと帰って行く。
手元に戻った槍を地面に突き刺すと彼はジュダに話しかけた。
「お前がいなくなった三年間は大変だったんだぜ」
「知っている。お前達がどれだけ苦労したのかも」
「ならなんで帰って来なかった? お前が帰って来ればもっと多くの国が統合政府に協力して俺達が無駄な血を流す必要が無かったかもしれないのによ」
「そうかもしれない。だが、俺はあのままペトゥロだけを自分の指針にするのはダメだって感じたんだ」
「ああ、そうか。そうかもな。俺達もそうした結果、イアンコフが死んだんしな」
「今なんて? イアンコフが死んだだと? 」
唐突に告げられる同志の死にジュダは驚きを隠せず、それを見ると戸松は憎しみと悲しみを込めながら声を上げる。
「お前を連れ戻す為に出てった後、青髪の男にやられたそうだ。俺もついさっき聞いた。この任務を引き受けたのはあいつへの手向けの筈だったんだがなお前を見た途端、腹が立っちまった。いきなり襲いかかった事、謝るぜ。だが、それはそれだ。一応、お前に聞いとくぞ。穏便に済ましたいなら俺に何も言わずについて来い」
戸松は槍の柄を握る力を強めながら問いかけるジュダはそれに彼の顔を見ながらハッキリと答えた。
「戸松、お前の気持ちは分かった。だが、俺はもうあそこに戻るつもりは無い。ついさっき守る為にこの力を使うと決めたから」
戸松はそれを聞くとうっすら笑みを溢すと何かが吹っ切れたように叫ぶ。
「お前はそう答えると思ったぜ。ならば、こっからが本番だ。統合政府三虚神「戦神」戸松春人。お前に敗北を味わせる者だ! 」
戸松の啖呵は夜の街に響き渡る。
ジュダはそれを聞くとすぐさま彼に向かい走り出した。
先手必勝。
彼は一瞬にして戸松の懐に入ると互いにその力を開放する。
「生命開放、絶廻蹴・衝撃」
「生命開放、絶戦神・軍神」
しかし、彼の蹴りは空を裂くと戸松は彼の後ろ側に立っており、彼は放った蹴りをすぐさま地面に下ろし重心を変え、もう片方で後ろ回し蹴りを放とうとした。瞬間、ジュダの体に切り傷が現れ、それに気づいた彼は戸松から距離を取る。
「懐に入ってから一瞬で消えたと思ったら、それで傷をつけたのか。しかも、さっきまで一本だった槍が二本に増えている。随分、小賢しい事をする様になったな」
戸松は自分を自嘲するかの様な笑みを浮かべると、二本の槍を振り回し、その先端をジュダに向け口を開いた。
「俺だって多少は変わるさ。正々堂々がモットーだが真剣勝負に小賢しさは必要だ。只々、馬鹿みたく突っ込むのは死を意味する。あいつらが殺された時、何も出来なかったがあの時馬鹿みたいに突っ込んでいたらヨハンに殺されてたのは俺だったかもしれねえ。国連軍と殺り合った時、こいつの力を過信していたらもしかしたら俺も名も知らない誰かに殺されてたかもしれねえ。こういう経験を何度も繰り返した結果、幾千、幾万の命の犠牲の上に俺は立っているんだ。お前がのうのうと過ごしていた三年間とは訳が違うぜ」
「そうか、三年も有ればお前も変わるのか。だが、一つだけ訂正させてもらう。三年間でお前だけが変わったと思うなよ。俺はこの三年間、俺達が壊した世界を見て来た。罵られ、嫌われ、それでも俺は俺達が求めた世界が何だったのかを探し続けた。これから見せるのは俺の新たな覚悟だ」
ジュダはそう言うと彼が見て来た全てを祈りに込め、新たなる力を解放する。
「生命解放、限界超越」
ジュダが着た黒いスーツの上にコートの様な物が顕れると彼を纏っていた空気は変わり、その祈りに呼応して星の根源の全てを引き出す。
それを見た戸松もまた彼に負けまいと言う気持ちが根源へと深く繋がらせた。
「同化、戦神」
槍は服と一つとなり、彼の着た上着をローブの様なものに形を変えた。
これにより、彼らは100%以上のポテンシャルを引き出す事になる。
獣と戦神の本当の戦いの幕が上がる。
ジュダと戸松は同時に走り出し、互いの間合いに入ると拳が混ざり合う。両方の武器が交差し、彼らの顔に互いの拳が突き刺さった。そこから彼らは距離を取らず、そのまま拳を放つ。戸松の拳はジュダの体に、ジュダの拳は戸松の顔へと突き刺さるも、それくらいで彼らは止まる事を知らない。
その場で何度も打ち合うとジュダの蹴りを受けた戸松が少し吹き飛び、彼はその間を詰めようとする。
しかし、その間を逃さず戸松は根源にある新たな力を引き出した。
「生命開放、絶戦神・怒髪雨天」
空に赤い槍が数十と現れるとそれをジュダに目掛けて放たれ、降り注ぐ赤い光によりジュダの姿が見えなくなる。
戸松は何処からジュダが現れても良いように準備をしていた。しかし、未だに降り注ぐ赤い光の中から腕が現れると戸松は服の一部を掴み体が宙に浮いた。
「んな?! 俺への最短ルートを選んで来たのか?! 」
宙に放り出されながら叫ぶ彼が地面に着く瞬間にジュダは容赦無く拳を放つ。
「生命開放、超越絶拳」
放たれた拳に対して両腕を前にし防御をとっていた戸松だったがそれを全く意味のないものとなり、受けた部位を中心に痛みが駆け巡る。しかし、両腕を一撃で粉砕された戸松だったがそれでも攻める姿勢を崩さなかった。
「生命開放、絶戦神・絶軍神」
戦神が携えた赤い槍と軍神が携えた黒い槍が光を纏い先程よりも大きい光となり空に現れるとそれをジュダに向けてぶつける。
「散れや、ジュダ」
その一言を最後に赤い光と黒い光が混ざり合い、その場の全てを巻き込み消し飛ばしす。
ジュダが平穏を過ごした町は彼の光に飲み込まれるも、彼はそれを迎え撃つ為に彼の持つ全ての祈りを込め拳を放った。
「生命開放、超越絶拳・一騎当千」
その拳は全てを砕く、一撃となる。
放たれた拳は一筋の線を描き光の真ん中を引き裂き、そして、全てを食う光を平然と消し去るとその場に残ったのはジュダと戸松の只二人のみとなった。
「やるな、ジュダ」
戸松はボロボロの体でありながら、ジュダに話しかけ、彼もまた体の限界を超えており残った体力でそれに応える。
「お前こそ、ここまでやるとは思ってもいなかった」
互いに認め合いながらそれでも彼らは自分たちの在り方を否定し合う。
「これで最後だ、戸松。俺は俺の守るべき者の為にお前を殺す」
「そうか、ジュダ。俺の負けだ。好きにしろ」
彼がそう言うとジュダはかつて友を殺した時同様に彼の顔に拳を放つと戸松の体が糸のような物に引っ張られ、その拳は空を切った。
そして、ジュダの背後から三年前を最後に耳にしていなかった男の声を聞く。
「久しいね、ジュダ」
後ろを振り向くとそこにはかつて苦楽を共にした友であったペトゥロ・アポカリプスが立っていた。
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