十一章 審判 其の拾
連続投稿をいつ切ればよくわからなくなってしまったで候。
お手に取って頂けると幸いです!
「ペトゥロ、今なんて言ったんだ? イアンコフが死んだだと?ふざけるのもいい加減にしてくれよ」
戸松の声が部屋に響き渡る。
彼らが囲うテーブルの一席がポカンと空いている。
ペトゥロは同志達にイアンコフの死を告げた。
最初、彼の言っている事を誰一人信じる事が出来なかった。しかし、それが真実であると知ると紫門は顔を埋め何も言わなくなってしまう。
そんな中、唯一、戸松はペトゥロに声を上げた。
そんな彼をマリアが鎮めようと口を開いた。
「戸松、落ち着いて。まずは何があったかを聞きましょう。声を荒げても彼が帰ってくる訳でも無いわ。」
「マリア! テメェもイアンコフが死んだって言うのか! ありえねえ! あいつは強い、俺よりもだ。そんなあいつが殺される訳ないだろ! 」
「そんな事知っているわ! だから、落ち着いて一度ペトゥロの話を聞こうと言っているのよ。」
二人の言い争いの中、紫門は何も言わずにただ、顔を埋めていた。
そんな、二人をペトゥロは一度鎮めると淡々と真実を述べた。
彼が何者かに殺された事、その死体の回収を行った時にその仲間と対峙し、取り逃した事。
それらを告げた途端、少しして戸松は腰の剣を抜くと怒りを込めながら叫んだ。
「生命開放、絶戦神」
剣は槍となりそれをペトゥロの首元へと近づけると、戸松は口を開く。
「ペトゥロ、お前なんか俺達に隠していないか? 」
「何も隠してなんかいないよ」
「本当はお前は何もかも知っていたんじゃ無いのか?マキナの予想を見ているならそれだって出来るはずだ。奴が死ぬと知っていていたがあいつをわざと行かせたんじゃ無いのか? 」
戸松の言葉により他の二人もペトゥロを疑い始めたが、彼はそれに冷静に対処する。
「たしかに、私はマキナを使って彼の未来を予想していた。しかし、そこには青髪の男なんかはいなかったんだ。そこに映ったのはジュダを連れて帰るイアンコフの姿だ。誰がそんな予想を出来る。ダルタニャンを向かわせていたのもその為だ。彼に何かあったらと思い向かわせていたが彼は私達と違って生身の人間だ。無理矢理戦いを強いるのは不可能だろう。青髪は言わばマキナの予想の穴を突いた特異点的存在と言える。ダルタニャンが見た姿を元に統合政府首都部区域全体に指名手配も出す予定だ。私だって彼を亡くした事を悲しく思っている。あまり気を立たせないでくれたまえ」
戸松は開放を解き、剣を腰に挿すとその部屋から出ていこうとした。
「待って、戸松! どこに行くの? 」
「ジュダの馬鹿を連れ戻す。イアンコフの席が空いた今、そこを埋めるのが優先だ。イアンコフの成し遂げられなかった任務を成し遂げるのが俺があいつに出来る唯一の手向けだ」
彼はそう言うと部屋を去ると、彼を追ってマリアも扉を開けて出て行ってしまう。
ペトゥロと紫門だけがその部屋に残っており、埋める顔を上げて紫門はペトゥロを見ると彼に問いかけた。
「ペトゥロ、あなた一体何者なの? 昔と今であなたは変わらないつもりでいるのかも知れないけど。私には分かる。あなた、変わってしまったわ」
「私は私さ、紫門。それ以上でもそれ以下でも無い。私は今も昔も変わらない。それだけは確かさ」
***
東国の島国、日本でとある会議が行われていた。
「生命武器の開発はどうなっている? 」
「順調です。しかし、適合したのが三人ほどしかいないです。このままいけば確実に彼らに負けますね」
日本は審判後に政府の統制が完全に停止してしまったがある男が腕っぷしひとつで国をまとめ上げると統合政府への参加を拒み続けていた。
「やぁ、やぁ、性懲りもなく生きながらえている日本人諸君、お久しぶりだね! 」
急にモニターの電源がつき、声がするとそこには妹背山が映っていた。
「すぐさまモニターを切れ。こいつの狂言には飽き飽きしている」
「待て待て、凪良。今回は君達に素晴らしい提案をしに来たのにそれを聞かずに切るのは勿体ないと思うぞ」
妹背山はそう言うとデータの様なものをモニターに映し、それを凪良は見て溜息を吐く。
「話だけは聞こう」
妹背山は待ってましたと言わんばかりに声を上げた。
「では、早速。君達に見せたデータはある人間が生命武器を使ったデータなんだがね。彼は三虚神の一角「巨神」を倒した」
その話に周りはどよめき始める。
かつて国連軍が総力を上げ、ありとあらゆる兵器の導入を許可された殲滅作戦をたった三人で全て蹂躙した三虚神の一人が名も知らぬ誰かが殺したと言う事実はその場の人間達に微かな希望となっていた。
そんな中、凪良はそれに何も反応を示さず、彼は声を上げた。
「妹背山、お前には散々騙されて来た。それ故に今回の件も素直には喜べん。そして、お前が何を要求するかによっては俺はこの話を断るぞ」
「凪良さん! なんでですか! 三虚神を倒したデータだってある。信じるとはいかないもののそれでも彼に協力を仰ぎましょうよ! 」
若い男はそう言うと凪良に近寄った。
彼の気持ちを煽る様に妹背山も口を開く。
「たしかに君を散々騙して来たが今回は人類が神とも呼ばれた者を殺せたのは不変の事実だ。人も神を殺せるんだ。ならば、今が反逆の時。今から二年後、私は彼らと全面戦争を行いたい。僕はそのための準備をしていた。どうだい? 凪良、君さえ良ければ」
「チッ、今どこにいる? 」
「そっちには自分で行くから一週間後にまた、連絡するよ」
妹背山は一方的に切ると凪良は再びため息をついた。
***
日常はいつも急に崩れ去り、静かに暮らしていた筈だったが、彼は再び戦いに身を投じる事になる。
「ジュダ、お皿取って」
「これでいいか? 」
ジュダはそう言うとイヴにお皿を渡す。しかし、彼は何かを感じるとすぐさま彼女とリリィを抱え自分の後ろに隠した。
次の瞬間、彼らがいた部屋が壊されると、その空いた壁の上に男が立っていた。
「よぉ、ジュダ。三年ぶりだな」
そこには巨大な槍を携えた戦神がいた。
「戸松か? 」
「ああ、そうだよ。あん? なんだ、その女は? しかも、子供もいるのか? 」
「待て、戸松。変な勘違いするなよ。彼らは三週間前に吸血鬼狩りをされていた所を助けただけであってそんな」
「もういい、もういいぜ、ジュダ。俺達が苦労した三年間をお前はよっぽど楽しく過ごして来たらしいな」
戸松はそう言うと彼に対しての怒りと殺意を武器に込める。
「生命開放、絶戦神」
戦神の槍がジュダと後ろのイヴ達に目掛けて一直線に飛んで行く。彼はかつてその神に届く力を使う事を躊躇った。これは奪うだけの力であり、守る力では無いと思っていた。しかし、今後ろにある二つの命のためにジュダは覚悟を決めると両腕を合わせ、祈りを力に変え黙示の獣は再び産声を上げる。
「生命開放、絶技」
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