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散華のカフカ  作者:
二部 闘争の戦斧
23/119

幕間 読書

箸休め回です〜

お手に取って頂けると幸いです!

 ジュダの部屋にイヴが居座って一週間が経った。

 彼女は勝手に部屋をきれいにしていくので彼は何度も家から追い出そうと考えたが彼女の子供であるリリィを見るとその無垢なる瞳の訴えかけにより諦めた。


「ジュダはいつも何本を読んでるの? 」


 彼女は暇が有れば何かしらを聞いてくる。今日は彼が読んでいた本に興味を示したらしい。


「色々さ。SF、ミステリー、ファンタジー、歴史物、恋愛、なんでも読む。何かこれと言ったジャンルばかり読むとそれだけで本に対しての偏見が生まれる」


「好きなものばかり読めばいいじゃない? 」


「昔はそうだった。好きなことを好きなだけやった。彼らと過ごした時間は限りなく有意義で無価値なものなんて無かった。彼らが俺の事をどう思っていたか分からない。実際は嫌われていたのかもしれない。だけど、その結果があれだ。俺は好きなものばかりを捉えすぎていた。盲目的になった人間は一方向にしか目を向けない。昔は正しいと思えた思想も今となっては何が正しかったのか分からない。だから、俺は知らない世界を知るためにあそこを飛び出したのかも知れないな」


 そう言うとジュダは再び本を読み始め、そんな彼を見つめながら彼女は笑みを浮かべ口を開いた。


「ねえ、今度オススメの本を教えてよ。私でも読めそうなやつでさ」


「ふん、いつかな。とりあえず、リリィが大きくなるまでに本を読めるようにはなっておけ。後で後悔するぞ」


「チッ、性格悪いなー。折角、やる気だったのにー」


 そう言いながら彼女は部屋から出て行くと部屋に沈黙が流れ、ジュダはその沈黙を噛み締めながら、静かに本を読む時間を楽しんだ。


***


 統合政府第一首都「スーテラ」の研究施設にてとある実験が執り行われている。


「紫門、こんな夜遅くまで研究所に閉じこもってないで外に出たらどうだ? 」


 イアンコフはパソコンに向かってめり込んでいる紫門を見て心配になり話しかけた。


「そんな事ないさ。私には私にしか出来ない仕事があるからね。審判の様な失敗は二度とやってはならい。これは私達が背負うべき十字架さ。君だって一時期は三虚神と呼ばれていた時があったろう?国連軍を三人でどうにかするって言った時はどうなるかと思ったけど、蹂躙に近かったね。生命武器、こんなものが世界に転がっていたとなると昔の世界はとんでも無く物騒なことだけは分かるね。ああ、待ってくれ。脈絡が無いな。頭がまわんなくなっているかもしれない」


 彼女はそう言うとイアンコフに何かを要求しており、彼はため息をつきながらタバコを取り出した。


「禁煙してたんじゃ無いのか? 」


 イアンコフは自分もタバコを一本を取り出すと火を着けた。紫門はイアンコフが着けたタバコの火に自分のタバコをくっつけ自分のタバコに火を着ける。暗い部屋の中に二つの炎が煌々と輝き始め、彼女は先程よりもスッキリとした顔つきで彼の質問に答えた。


「してたよ。でも、久々に君に会ったからね。たまには羽目外さないとやっていけないんだ。はぁ、本当に美味しいな。あの日以来こう言う風に話したのは久しぶりだね」


「ああ、そうだな」


 イアンコフは短く答える。

 タバコの煙が宙を舞い、互いの煙と混ざり合った。


「なぁ、イアン。君はあの審判が正しかったと思うかい? 」


「正しい正しく無いだけで判断するのであれば正しかった。人類は少なからず滅びの一途を辿る筈だったんだ。俺達は紛れもなく英雄になれた筈だ」


「そうか、ならそれでいい。私はそうだな。あの日から世界が止まってしまった様に感じる。私自身は多くの学び、知識、叡智、前以上に素晴らしいモノに出会えた。しかし、私と君の関係、円卓のみんなとの関係、それら全てがあの時から動き出していない気がする」


「紫門それは一体どう言う事だ? 」


「ふふ、私だけだったのかもしれないな。何でもない。はぁ、もう一本だけくれないかい? どうにもニコチンが足りないらしい」


 彼女の目には一筋の涙が溢れていた。

 しかし、それは彼の目には映らない。

 根源に囚われたその魂には届くことはなかった。


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