五章 審判 其の肆
次章は幕間挟みます。
結構一気に書いているんで結構疲労が笑笑
ペトゥロが目を覚ますと体の穴は塞がっており、すぐさまジュダの下へと走っていく。そして、壁に打ち付けられたジュダの姿を見ると目の前の狩人へ自分への不甲斐なさと狩人への怒りを武器に込めた。
「生命開放、包丁」
不可避の斬撃はしっかりと狩人の体に傷を与え、一旦距離を取ろうと狩人はペトゥロから離れようとした。しかし、彼はそれを見逃さず、遠ざかる狩人に対して再び不可視の斬撃が飛んでいく。
二度目の斬撃も狩人の体は大きな傷を負わせるとペトゥロは容赦無く追撃を行う。
「生命開放、粉砕」
狩人の体はゴム毬の様に飛んでき、ペトゥロにより放たれる不可視の攻撃を一方的に食った。しかし、吹き飛びながら彼もまた反撃を試みる。
「生命開放、絶執行者・狂獣」
狩人の肌が黒く変色していく。顔が狼の様になっており、両腕には機関銃が形成されていた。彼はそれをペトゥロに向けて放とうとした。ペトゥロはそれを真っ向から迎え撃とうとしたが、彼は急に銃を向ける方向を変え、その狂気の照準は壁に打ち付けられたジュダに対して向けられた。狩人の顔にはこれまでにないほどの笑みが浮かばれており、それを見たペトゥロはジュダを庇おうと走り出した。
氷の壁に穴が空き、ペトゥロの体にも同じような模様が出来ていた。撃ち抜かれた箇所から血が滲み白い服が赤く染まる。最初とは大きさが違う穴。しかし、彼は自分の体を犠牲にしても、ジュダの体に傷一つ付けさせなかった。
狩人はそれを見るとニヤニヤしながらこちらを眺めると口を開いた。
「穴だらけ、穴だらけだな。顔には当たらなかったが体には一、ニ、三、四、五、六。六個も空いてる。ははは、気持ちがいいな! 久しぶりに根源から戻って来れると。腕は鈍るし、肉体が慣れていない故に照準もおぼつかない。本当ならさっきので苦しまずに殺せたのだが。まぁ、良いよ。それじゃあ、死んでくれペトゥロ・アポカリプス。これは任務だからね」
再び凶弾はペトゥロに目掛けて無慈悲に飛んでいき、立ち尽くす彼を容赦無く貫くと思われた。
だが、血に染まる彼に向かう弾丸は一つ残らず全て弾かれており、彼を守ったのは先程まで全くもって意識が無かったジュダであった。
黒い獣はその根源と多いに深まり、交じり合い、互いを引き出し合う。彼の血塗られ顔には笑みが溢れていた。大胆不敵な微笑みは狩人に恐怖心を植え付ける。早くこいつを殺して不安の種を消し去ろうそう思う間もなく、彼の防衛本能からか機関銃の引き金は既に引かれていた。
しかし、その望みは一瞬にして砕かれ、黒い獣はその狂気の弾丸を全て弾き返すと、狩人の目の前に現れた。
それはあまりの一瞬の出来事であり、彼の視覚から渡る情報伝達の速度が追い付かず、気付いた時には自分の体が地面に叩きつけられていた。
「どうした、ディック様よ。もうお終いか? 」
彼は微笑むことをやめられず、根源に深く接続した事による全能感、それの全てを引き出せる自信。それらが交わり彼はいつも以上にハイになっていた。
「獲物風情がほざくなよお! 」
煽られた狩人は怒りに身を任せ自分の根源の全てを引き出す。
「生命開放、絶執行者・分解者」
狩人の右腕が歪な形状に変化して行く。
それは現代の銃火器の形にあらず、辛うじて銃口が分かるだけ。しかし、それを見ても尚、獣は笑っていた。
「餓鬼が舐めるなよ」
引き金は最も簡単に引かれ、そこには光の道が生まれる。
あまりにも規格外の出力は彼らをビルごと消し去るほどの物であり、それは獣一人に向けられるには不相応であった。
それを前にしてジュダ・ダイナーもまた彼の全てを開放し、その根源の極地をその身に宿す。
「同化、神羅」
指輪は彼の黒い服と混ざり合い、ボロボロであった服と体の傷を同じ様に修復していき、そして、彼は向かい来る光に真っ向から対峙する。
「生命開放、絶技」
彼は拳を放った。
ただの正拳突き。
恐るべき程の光に本来ならば効くはずもない拳。
しかし、根源の極地へと至った拳はそれら全てを超越し得る。
狩人の放つ光は空へと放たれ、美しい一筋の光が出来ていた。
銃口は空の方向を向いており、それどころか彼の右腕は粉々に砕かれており、地面に仰向けになっていた。
「なぁ、今の開放が最大火力か? 」
獣の声には好奇が混ざっており、狩人は自分が狩られる側になった事を理解した。
「なぁ、仲良くしようぜ。今の戦いは俺の負けでいい。俺が持ってる政府の情報を全部やる。だから、もう少しだけ俺に時間をくれないか? 根源からようやく肉体を手に入れて、俺もはしゃいじゃったんだ。だからな、頼むよ。今回だけ見逃してくれないか? 」
まだその体を手放したくない狩人は彼に交渉を持ちかけた。
「もう遅いよ。お前は俺の大切な物を傷つけた。でも、少しだけ感謝しとく。俺はあんたのおかげで大切な者を守れるだけの力を得た事に」
バキリ
鈍い音が戦場に鳴り響く。
振り落とされた拳には大量の血がついており、狩人の顔は完全に潰されていた。
それを見てジュダは全てをやり切った安堵とペトゥロが生きているかの不安によりすぐにでもその場を去ろうとしたが彼は狩人の死体の横に倒れ込んだ。
何とかして足を動かそうとしても意識が遠のいて行く。
「ペトゥロ、すまない」
その一言を最後に彼の意識は深い闇に沈んでいった。
***
ペトゥロ・アポカリプスは目を覚まし、目の前には見知った天井があり、周りには何人かの同僚が彼の事を見守っていた。
体を起こすとすぐさまマリアが抱きついて来た。
「よかった、貴方が無事で本当によかった」
彼女の目には涙が浮かんでおり、ペトゥロは何とか彼女を宥めようと乾いた唇を一生懸命に動かした。
「マリア、落ち着いて。僕の体は大丈夫だよ。それよりも、ジュダはどうなった? 」
「ジュダはまだ眠っているわ。あんな戦いの後だもの仕方ないわ。それよりもペトゥロ。そろそろ話してちょうだい。あの地下施設とあなた達の力について」
マリアがいきなり踏み込んだ来たことにペトゥロは少々驚気を隠せなかったが、すぐに冷静になり彼女に声をかける。
「分かった、全てを話すよ。だから、皆を円卓に集めてくれないか? 」
ペトゥロは彼が知っている全てをありのままに語った。しかし、その中で一つだけ情報を伏せており、それは彼らが世界樹の根源を分けて生命武器を作ったということであった。
それはジュダと自分の身を案じてのことなのか、それとも、まだ他に何か目的があるのか。それは未だにハッキリとは分からない。この直後、ジュダが目を覚ましを彼らは急いで国連軍が仕掛けてくる前に審判を行える様に準備を始めた。
そして、多くの惨劇を産んだ審判の日が訪れる。
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