三章 本部防衛作戦 其の参
お久しぶりです!
更新遅れてしまい本当に申し訳ないです!
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妹背山に作られた過去。
あの時は凪良真琴の代替え品として生まれた。
だが、妹背山は自分の事を凪良真琴の代替え品として作ることはしなかった。
自由に、生かせようそうしてくれていた。
しかし、生まれた瞬間に、自らに課せられた兵器としての自分に気付き、本当の支配の天使を作るために己を使い潰した。
「いい研究に対しての熱意だ! 素晴らしいね! 凪良! でもね、君はもっと自分らしく生きるべきだ! そんな支配の天使に囚われ続けるんじゃなくて、自分としての目標を作るべきだよ! 」
自分を見て、妹背山は笑いながら少し寂しそうにそう言っていた。
それも自分ではなく、凪良真琴に対して言っていると考え、それに答える事なく黙々と作業をし、自分と言う自己の確立に目を瞑り続けた。
そして、それをいつしかキリアルヒャと言う完成された支配の兵器、白い天使を愛する事で作り上げた一つの人格とした。
死んで、生まれて、また、死んで。
自己を見つめ直す事などせず、妄信的に、盲信的に、天使を愛し、それを愛し続ける事だけが自分の存在であると決めつけていた。
目の前に現れた完成された支配の兵器の紛い物。
自分の憎悪の対象である混ざりモノに自分の価値を問いただされ、感謝された。
一度も、一度たりとも兵器としの自分以外を見てかなかった。
それ故の、現在。
自分のためにキリアルヒャを殺そうとした事も結局は混ざっている支配の天使が許せなかった不完全な兵器としての怒りであり、自分ではない。
自分は何もない事を今、悟る。
何も残らなぬ、自分が今から自己を確立するにはどうすればいいかを必然的に考え始めた。
そうして、辿り着いた答え。
それは、自らのリスタート。
再出発するための一歩。
それを目の前に立つ、支配の兵器を殺す事で始めよう。
自らが人生をかけて生んだ兵器を殺し、過去を殺して今に立つ。
それが、それこそが凪良翔悟の答えであると初めて自分の意志を持って明確なヴィジョンが見えた。
それを、目の前に立つ東劃に伝えるために凪良翔吾は深い意識から目を覚ます。
***
彼が考えている間、劃は何もせずに立っており、この後の戦況を気にしていた。
凪良が目を覚ました途端、彼から距離を取り、武器を構えると問いかけた。
「よう、答えは出たか? 」
問われた凪良は立ち上がるとこれまでで一番意識がハッキリとしており、冷静に、そして、冷酷に答えた。
「ああ、お前を殺して、俺は俺の過去に蹴りをつける。それが俺がこれからの未来へ進むための答えだ」
答えは自らに向けられた殺意であったにも関わらず、劃はかつて、同じ状況でも微笑んでいただろう友と同じような笑顔を向け、声を上げた。
「なら、もう、言葉は要らねえな」
「ああ、やることは決まっているからな」
二人の白い天使は見合いながら、手に握られた武器に力を解放するために同時に口を開き、そして、一気に距離を詰める。
「権能解放、支配式契砲+支配式契剣」
「生命開放、熾天使」
一人は特異な銃と剣を携えて、もう一人は六つの剣を浮かばせながら一振りの刀を握り締め、己と己を打つけ合った。
最初に剣と剣が火花を散らすと劃は既に次の攻撃のために手を動かす。
握られた銃の引き金を引こうとすると六つの剣が邪魔をして、それに気を取られた途端、凪良が蹴りを放っていた。
剣で防ぐことが出来ず、蹴りが入った箇所からじんわりと痛みが押し寄せ、口の中に鉄の味が広がる。
だが、東 劃はそんな事では止まらない。咄嗟の判断で、蹴りで前に出た足を銃を投げ捨て、腕で無理矢理掴むとそこから壁へ凪良の体を投げつけた。
隻腕でありながら兵器として覚醒していた劃の肉体、故に、出来た荒技であり、吹き飛ばされた体との距離を容赦なく詰める。
投げ捨てた銃を拾い上げ、壁に打ち付けられた凪良の体に銃口を突きつけた。
「支配式契砲、発射! 」
ドン
轟音がビル内に鳴り響き、凪良の体に砲撃が放たれる。
明確に心臓を狙ったものであったが凪良は身に迫る危険に直前で気付き、その一撃を避け切った。
しかし、左肩に釘が突き刺さり、壊れかけていた壁が崩れ、彼らの体は外に出て、それと同時に再び二人の白い天使が姿を現した。
壁に巨大な釘で磔にされた凪良であったが彼の目には闘争の火が消えておらず、左肩に突き刺さる釘を無理矢理離れる為に右腕に握られた剣で肩を斬り裂き脱出する。
劃の進化と成長。
それを目の当たりにして、凪良は自らの持つモノを理解しようと全力で頭を回す。
自分が作った兵器であり、自分が愛した兵器の器。
それが完全な領域での覚醒を遂げている事を考慮して、相手の動きと攻撃を予測。
一瞬の油断が死に直結するはずの時に、彼は考えた。
自分と彼、劃との差、違いを。
そして、コンマ数秒すら至らない瞬間に、自らの力を手に握る生命武器へと一気に流し込む。
凪良は自分と彼との差を人とのつながりと定義した。
自分は避けてきたことに対して、彼も同じく拒もうとしていたが自らを受け入れくれる者たちと出会い、変わっていった。
自分にはそれがない。
今から作るには遅く、自分には残っているものなど殆ど無い。
かつての生みの親でもある男も、彼を今なら友と呼ぶに相応しかった筈なのに、それすらも今の自分では遅かった。
ならば、その繋がりを自分は徹底的に否定しよう。
凪良の答えは劃の否定。
彼が生んだ繋がりにより生まれた強さを自らの孤高を持ってねじ伏せる事を決めた。
支配の権能の一端を持つ自分も彼女の様に、いや、目の前にいる彼の様に同じ事が出来るのではないか。
答えが出た時には体が勝手に動いていた。
流れ込む支配の権能に剣は呻きを上げるもそれを更に力で型に抑え込み、押し込む。
そんな中、劃は目の前にいる天使が行なっている事を見た瞬間に動き出していた。
凪良の生み出さんとしているモノを彼は本能で危険と感じ取り、最短ルートを選んで突き進む。
生命武器の器の限界を超えた権能の追加。
彼の握る生命武器に眠る四人の天使は嘆いた。
自らが作り替えられる事に嘆き、苦しみ反発する。
だが、支配の根源を持つ白い天使は自分に従えと体にあるすべての力をそれに込め、徐々にその形が変わっていった。
土壇場で自らの腕の中で鉄を打ち、型に填めて流し、固め、形作る。
劃の刀が届く前にそれは完成に至った。
生命武器に眠る四人の天使は地に堕ち、グチャグチャとその身を継ぎ接ぎで繋げられ、漆黒の混沌へと成る。
四つの黒い羽と黒い刀身。
それを目の前にして、劃は何の躊躇も恐れもなく手に握る得物を振るった。
次の瞬間、凪良は自らの生んだ生命武器であると想定されるモノの力を確かめる為に短く呟く。
「権能転生、絶対否定乃熾天使」
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