一章 本部防衛作戦 其の壱
四部開幕!
訪れるのは希望か?絶望か?
暗闇の中に火が放たれ、都市の多くが燃え上がる。
都市を模したそれの正体は生命武器「アガルタ」。
埋葬屋本部と「審判」の後、「吸血鬼」と罵られ生きて来た旧人類が身を隠していた場所。
見つけることが出来ないとされている不可視の門が今、初めて崩され、第一首都の精鋭達が徐々に押し寄せてきていた。
それを見ながらリリィは一人でその場所を守り切ろうと防御装置を起動させ、全力で兵士達を振り払った。
「あー! もう! 住民に被害は?! 」
「今のところ無し〜。でも、そろそろ本部の門まで来るよ」
来栖エルザは端末を見て、侵入経路を把握し、それを報告する。
もう既に敵が一歩手前まで来たことを確認するとスーツの上に白衣を羽織り、エルザに向けて声を上げた。
「エルザ、援護お願い。私が食い止める」
「大丈夫なの? 久々の戦闘なら体鈍って仕方ないんじゃ? 」
「私を誰だと思ってる? 埋葬屋三席、リリィ・サンロード。あいつらに分からせてやるわよ」
そう言うとドアを開け、一人戦場へと足を運んだ。
***
埋葬屋本部の門前にて。
兵士達は列を見出すことなく整列しており、それを一人の男によって生まれたモノであった。
軍隊は手懐けられた獣の様に男の指揮に沿って動き始める。
一歩、二歩と歩を進め、獣はジリジリと門へと近づくもその門から一人の女が現れるとそれは自然と武器を構え、足を止めた。
「へぇ、いっぱいいるじゃない。よくも、まぁ、こんだけの人を集めれたね? 」
女の言葉を聞くと指揮をとっていた男とは違う少年が彼女の目の前に現れた。
「やぁ、初めまして、埋葬屋。僕の名前は左門。提案をしたいんだがいいかな? 」
「一応、聞いてあげる」
「ありがとう。なら、早速、僕の提案は勿を返してほしい。これを飲んでくれれば僕達は今すぐにでもこの都市を」
言い終わる前に左門の頬を何かが横切ると彼の顔から血が溢れる。
投げられたものはメスであり、リリィの腕にはもう既に二本ほどメスが握られていた。
左門は自らの頬から流れる血を見て、怒りを露わにし、睨むもリリィはそれを睨み返して口を開いた。
「そんな提案、飲むわけないでしょ。バカ言ってないでさっさと始めましょ? 」
その一言を皮切りに、左門の後ろで指揮をとっていた男が手を動かすと一人の女相手に百以上の兵士が一挙に襲いかかる。
兵士達が声を荒げながら武器でリリィを攻撃するもそれら一切は当たらず、何かが直前で彼らの動きを止めた。
リリィはそんな彼らを嘲る様に体を触る。
触れた箇所から赤い糸が見え、それは全てリリィに襲いかかった兵士達に繋がっており、彼女は可視化された赤い糸を引っ張った。
引っ張られた糸を通じて繋がっていた兵士達の体が宙に浮き、抵抗しても勝手に一つに纏まり彼らで大きなボールが作られた。
兵士で出来たボールは赤い糸で繋がられており、そこにまとめられた彼らの呻き声が聞きながらリリィは冷酷な目線を向ける。
「あら、大きなボールが出来たわね」
リリィはそう言うと兵士で出来たボールを左門目掛けて蹴り飛ばした。
唐突に放たれたボールは質量を無視した動きで左門に向かい飛んでいくも彼は自らの武器で弾くために短く呟く。
「権能解放、具現化絶召喚王・右腕」
左門の背後から腕が現れるとボールを弾き飛ばす。
しかし、そのモーションの間に、リリィは動いていた。
襲いかかる兵士達の動きを赤い糸で止めるや否や、それを引っ張ると再びボールが生まれ、それを今度は腕で投げた。
二度目の砲撃も簡単に弾くも、彼女との距離が自分が思っているよりも近く、顕現させた王の腕で遠ざけようとする。
リリィは自分目掛けて放たれる巨大な腕を簡単に飛んで避けると無防備に晒された左門の体に目掛けて蹴りを入れた。
バチリと鈍い音がし、左門の口から血が溢れ、頬からも切られた跡から同じく血が流れ出る。
弾かれたボールの赤い糸が切れてか、それが崩れているものの兵士達は既に立たないほど損傷しており、襲いかかって来ていた最初の部隊は全滅していた。
左門は目の前に立つ女が自分を圧倒していた事に怒りと共に動揺しており、そんな彼の事を煽る為にリリィは自らの名を名乗る。
「随分、舐められたものね。まぁ、仕方ないわ、私は保険みたいなもんだから。埋葬屋三席、リリィ・サンロード。埋葬屋本部を護る最強の一人。若者共、悔いが残らないために全力でかかって来なさい」
***
劃とブローニャは影縫の転移により、本部の上空に姿を現した。
「ブローニャ! 何処に敵がいる? 」
「状況把握中。確認完了、真下に埋葬屋三席が戦闘中、私達はそのまま降下すればいいと思います」
真紅の髪が降下する最中に生まれた風で靡いており、彼らは直ぐにリリィの下に向かおうとしていた。
瞬間、劃は自分が知っている何かが近付いている事に気付くとブローニャから遠ざかり、それが近付いて来るのを待った。
「質問、何をしているのですか? 」
「多分、あいつが来る! 」
その瞬間、劃の体がブローニャの目の前から消え、背中の向こう側に白い天使が二人いる事に気づいた。
「劃! 大丈夫ですか! 」
耳につけていたデバイスで連絡するも勢いよく吹き飛ばされた劃からは連絡がなく、彼を追おうとするもその直前で声がした。
「問題無い! あんたはそのままリリィの下に行け! これは俺が着けるべき決着だ! 」
連絡が途絶えるも、それを聞いたブローニャは彼が言った通りに降下する。
そして、兵士達を指揮する男の目の前に、紅の天使が舞い降りた。
「あらま、リベンジマッチと行けるっすね」
そう言うと男は銃を構え、ブローニャに照準を合わせると口を開いた。
「生命開放、水獣・貫通弾」
水を帯びた獣が放たれるものそれを瞬時にブローニャは切り裂き、放たれ方向に目を向ける。
ヘラヘラと笑いながら男は銃を構えており、その軽薄な喋り方に覚えがあった。自らの記憶を辿るとすぐにその答えが出て、声を上げた。
「あなたは「ジェヴォーダン」団長、ペッローですね」
ブローニャの口から自分の名前が出ると嬉しそうに答える。
「そう、ペッローっす。まぁ、こうまた会ったのもなんかの運命っす。その命、頂きますよ」
言葉を聞いた途端、ブローニャは二つの手斧を持って、その男に向かって刃を振った。
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