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散華のカフカ  作者:
一部 支配の天秤
11/119

八章 夜明

祝一部完結!

多くの方から手に取って頂けて誠に感謝しております!

次の投稿はいつになることやら泣

ストーリー自体は出来ているのでなるべく早く更新出来るよう精一杯努力して参ります!

 東 (クアク)の意思を持つ天使は白髪の男を殴りとばし、再び彼に向かい走り寄る。

 倒れている白髪の男は防御の構えもとれず、只一方的に殴られた続け、無我夢中に殴る天使は彼を殺す事だけを考え手を動かす。一撃一撃は確実に命を奪える程の威力で殴り続けた。


 白髪の男に最後の一撃を入れようと手を上げた瞬間、バンと言う音と共に天使の首元に何かの薬剤が入った注射が刺されていた。


 「なんだ、こ、れ、は? 」


 彼の意識は三度消えて行く。

 バタリと倒れた音がするとその注射を放った持ち主が現れた。


「矢我、あんたが寄越していた薬しっかり効いたじゃないか。それと、危なかったね、あんた」


 巨大な銃を背負いながら彼女は現れた。


「やあ、とっくの昔に逃げおおせたかと思ったよ、来栖」


 矢我と呼ばれた白髪の男は自分の顔を撫でながら立ち上がると彼の顔には幾つもの痣が出来ており、それらを確認すると眠る天使の下に近づいた。


「実験は失敗だ。<支配>の顕現は出来なかった。僕のキリアルヒャはいない。僕の20年間は無駄に終わったらしい」


 そう言うと彼はダガーナイフを取り出して悲しみに暮れながら声を上げる。


生命開放(オープン)熾天使(ラファエル)


 ダガーナイフは彼の悲しみに呼応して両刃の大剣へと姿を変えた。


「実験を失敗させるなんて不甲斐ない。恥ずかしい限りだ。

だから、後始末は僕の手でする。ああ、キリアルヒャ。君とはいつになったら出会えるんだい?」


 矢我は惜しみながら天使の首元へと大剣を振り下ろした。

 

生命開放(オープン)水獣(ビースト)


 振り下ろされる大剣を青い獣が受け止める。


「ああ、君まだいたんだ? せっかく逃げる機会をあげたのに実に愚かだね。」


 矢我は容赦なく獣を切り裂くと銃弾の持ち主へと近づいた。しかし、ペッローはこちらに来る彼に対して啖呵を切る。


「自分はその天使の回収を任務とされてるっす。ペトゥロさんに託された任務はどんなことがあってもやり切るっすよ。それが「ジェヴォーダン」団長の務めっす」


 そう言うと再び開放を行おうとした瞬間、研究施設の固く閉ざされていた筈の扉が開き、四つの影が躍動する。


 那須川はその中で一番強い相手を見極め走り寄る。

 柊は近くにいたペッローに標準を絞り、抜刀する。

 イェーガーはそんな状況を見極め前線から一歩引く。

 スペクターはその中、天使の下へと近づくと声を上げた。


「任務を最終段階に移行。各自、己の任務を遂行せよ! 」


 張り詰めた空気は一気に喧騒へと変わり、那須川は隻腕でありながら矢我を吹き飛ばす。


「今日はなんていい日だ! こうも多くの強敵と巡り会えるなんて! やっぱり、埋葬屋に入ってよかった! 」


 那須川は愉悦に満たされた声を上げ、吹き飛ばした彼の元へ走り寄った。


 「黙れよ。この戦闘狂(バトルジャンキー)。お前はいい日かもしれないが僕にとっては最悪の日なんだ。今すぐそこをどけ」


 吹き飛ばされはしたもののすぐさま体勢を立て直し、彼は那須川へ大剣を振るい、大剣と蹴りがぶつかり体重の乗った重低音が鳴り響く。



 激化する戦いの影で、闇に身を潜め眺める来栖は那須川に向けて照準を捉え、彼の頭を弾こうとする。


 バンッ。


 放たれた銃弾は綺麗に彼の後頭部を目掛けて飛んで行く。

 彼がどんなに動いても、それ以上の速度を持った銃弾は彼の後頭部を貫く筈だった。


 しかし、その弾は彼の後頭部を貫くことなく何かに弾かれていた。


(へぇ、やるじゃない。私の弾を狙って弾いたのかしら。少しし……、燃えてきたわ)


 そう思った彼女は燻る様な闘志を胸に開放を行う。

 

生命開放(オープン)怪鳥(カイム)


 彼女は再び那須川の頭を狙い、銃弾を放つ。

 だが、またしてもその弾が彼を貫く事はなかった。

 

 (中々腕利きのスナイパーがいるな。ならば、こっちも)


 敵の攻撃に感心すると同時に危機感を覚えるとイェーガーも小さな声で開放を行った。


 「生命開放(オープン)、鷹の(ホーク・アイ)


 彼が開放を行った瞬間、先程弾かれた銃弾からと灰のようなものが上がった。

 その様子を見据えたと同時に、灰の中から再び銃弾が那須川の頭を狙い飛んでいく。


 しかし、イェーガーはそれを許さない。那須川を弾く前に彼に向かって銃を向ける。


 キンッ。


 金属と金属が重なり合い、火花と共に甲高い音が上がる。

 銃弾は三度弾かれ、彼女は驚愕した。


(開放した状態での弾丸も弾くの!? ……ふふっ、そうなのね。でも楽しくなって来たわ。次は、次こそは確実に奴の頭を弾く)

 

 もう1人の狩人も、また別のところで動揺を隠せなかった。


(危なかった。開放を行っていなかったら確実に那須川さんの頭が弾け飛んでいた。集中するんだ、僕。こっからは一度もミスは許されないぞ)


 身を隠す狩人達の対決は、今静かに幕を上げた。




 ペッローは刀を振るう青年と対峙していた。


 筋は悪くない。しかし、まだまだ練度が足りない。そんな事を思いながら彼の攻撃を捌いていた。


 「なぁ、君。そんな刃じゃ僕には届かないっすよ」


 そう言うと青年は一度腕を止めた。


「そうか?俺はそんな気はしないけどな。おっさんこそ、そんなおぼつかない足で大丈夫か? 」


 

 「おっさん……? まだこれでも、29っすよ! 」


 ペッローは再び走り寄りながら、少しキレ気味に叫んだ。


 「生命開放(オープン)炎獣(ビースト)


 燃ゆる獣は現れると同時に、青年の体を切り裂こうと襲いかかる。

 しかし、青年は刀を鞘に収めると足に力を込め、目を瞑りながら声を上げた。


生命開放(オープン)、抜刀・霞喰い」

 

 一瞬にして真っ二つにされる赤い獣。


 ペッローは目の前に立った青年はたしかに未完の獣であると見据える一方、ある一点に置いてはこの場の誰よりも優れた獅子である事を理解した。


「君は受けに置いては相応の能力を持っているみたいっすね。訂正するっすよ」


「……? 」


 ペッローは青年に向かい照準を定める。


「君の評価は、僕が本気でやるに相応しい相手だって事にね! 」


「ようやく本気って所かな。舐めるのも、大概にして欲しかったな。まぁ、いいよ、おっさん。存分に殺り合おうぜ。

埋葬屋九席、柊行人。あんたに敗北の苦渋を舐めさせる者だ」


 彼らは再び刀と拳銃を引き抜き、殺意を込めた足取りで走り出す。


***


 喧騒の中で唯一、それらに交わらない者がいた。

 彼は天使を抱き抱えるとその場から立ち去ろうとしており、矢我はそれを許すことは無く那須川との戦闘中でありながらも彼に目を向けた。


「そいつは失敗作だ置いていけ」


 矢我の声は乱戦の中でも大きく聞こえる。


「それはあんたが判断する事じゃない。僕達はコレを持ち帰るのが任務なんだ。失敗作なら尚更捨てておいていいだろ? 」


 那須川と競り合っているのに彼は喋り続けた。


「黙れ!それは本来、キリアルヒャの物だった。だけど、不純物が混ざっていた。だから、俺の手で壊して作り直す」


 すると那須川は自分との戦いに集中していない矢我に対して怒りを向ける。


「ねぇ、今僕と死合ってるんだよ? 他のやつに気が行くなんて腹が立つな」


 そう言うと足に怒りと力を込め叫んだ。


 「覇号鉄鋼槍! 」


 蹴りは槍の様に飛んで行き、大剣ごと矢我を蹴り上げた。

 大剣を伝い響く痛み。

 それにより矢我の怒りは頂点に達し、その怒りのありったけを大剣に込め叫んだ。


同化(ユナイト)堕天使(ルシファー)


 大剣はみるみる形を変え彼の体に纏わりつく。

 そして、那須川とスペクターの目の前に現れたの黒い八枚の羽を携えた天使であった。


 那須川は嬉々としてそれに向かう。

 

生命開放(オープン)失楽園(パラダイスロスト)


 しかし、黒羽から放たれる眩い光は那須川を飲み込んで行く。スペクターはその眩い光により目を瞑った。

 そして、光が止み目を開けると那須川は黒焦げになっており、地面に倒れていた。


「マジかよ、那須川さん」


 そう言うと武器を携え、急いで開放を行う。


生命開放(オープン)絶霊(スペクター)


 彼は再び自ら人間の紛い物へと変貌を遂げる。


「早く、それを寄越すんだ! 」


 しかし、そんな事はお構いなしに黒い天使の咆哮と共に羽から光が放たれた。


(やば、あれ僕にもダメージ入る奴じゃん)


 スペクターはそう思うとなんとか光に当たらない様にまた、手に抱える天使を傷つけない様にフロアから逃げ出そうとするも光は周りを巻き込むと施設での喧騒を一気に終幕へと導いた。

 

 施設の床が抜け全員が足場を失い地面に叩きつけられた。

 止まらぬ黒い天使。

 スペクターは光に足を焼かれ動けずにいた。


(まさか最後でやらかすとはな。最悪、みんなを透過させて逃すしか無いな。ごめん、スカディ。約束は守れそうに無いや)


 彼は覚悟を決め、自分のありったけを開放しようとした瞬間、先程まで眠りについていた天使が目を覚ましていた。それの立つ姿を眺めながるとスペクターは完全に意識が無いものだと思っていた故に驚きを隠せなかった。


「なんなんだ、あんた? 」


 その質問に天使は口角を少し上げそれに応える、ら


「僕はキリアルヒャ。君達が求めてる兵器の一つさ。そして、君、実に面白い体をしているね。いいね、気に入ったよ。助けてあげる。その代わりに君の電鋸を少し借りるね」


 そう言うと勝手に彼の電鋸を手に取った。


 「無理だ。生命武器はその武器の根源と繋がっていないと扱う事は出来ない。あんたが何者か知らないが辞めておいた方が良い」


 それに向けて放った言葉が聞こえたのか、黒い天使が此方を向く。


「また目覚めたか! 失敗作が! お前だけは俺が処分する! 」


 怒りを彼らに向け再び光が無慈悲に襲いかかる。

 射線には天使とスペクター。

 明らかに不利な状況下で何故か、天使は笑っていた。


「いいね、いいね。その感情、君にそっくり返すよ、翔悟」


権能解放(オープン)支配(キリアルヒャ)


 電鋸はスペクターが使っていた以上に異様な程の轟音を上げ、彼らに向かう光を一瞬にして断ち切る。


「服がないのは辛いな。あ、君の服でいいや」


 そう言うと天使の背中から羽が生え自分の身を包むと少しして羽が開きら天使は黒いスーツに身を包んでいた。


「なんだ、それは。失敗作の分際で思い上がるな! 」


「ほう、僕のことを忘れたって言うのかい、翔悟? 」


 その一言は怒る天使の動きを止めた。


「何故、お前が俺の名前を。まさか、キリアルヒャ? 」


 そう言った途端、スーツを着た天使は空を飛ぶ黒い天使の目の前に一瞬にして現れ、彼の顔をこれまでの恨みを込めて殴り地面に撃ち落とした。


 あらゆる生命に対しての支配。

 それこそがキリアルヒャの権能、その本領である。

 抗うことは出来ず、全ての命あるものはそれに平伏す。

 まさしく、絶対的権能。


 顔を殴られ、地面に落ちた黒い天使は口を開く。


「本当にキリアルヒャなのかい? 」


 彼は未だに信じきれずにおり、白髪の天使は元気よく「ああ、そうだよ」と答える。

 そして、その天使は黒い天使に背を向けた。


「君と世界を壊すって案ね、あれは却下。僕は僕でやりたいことが出来たから、それじゃあね」


 そう言うと天使はこと切れその場に倒れ込んでしまった。


生命開放(オープン)絶霊(スペクター)同化(フレンドリー)


 その一瞬をスペクターは逃さず、彼は自分の仲間と保護対象に対して、自分の全力を使い、埋葬屋の面々と天使の依代は一瞬にして地面をすり抜け落ちる。


 その場に残されたペッローは彼らを追うためすぐさま姿を消していた。


 先程までの喧騒とは打って変わって流れる束の間の沈黙。

 取り残されたのは来栖と黒い天使。


 「これからどうするんだ、矢我? 」


 彼女が声をあげるとこれに答えた。


「どうもこうも無いさ。実験は成功だが不純物が混ざってる。ならば、それを取り除くだけさ。これからが本当の戦いらしいね。僕たちも混ざらせてもらおう。とりあえず、来栖、肩貸してくれない? 起き上がれないや」


 彼女は溜息を吐きながらも肩を貸すと再び口を開く。


「何処に向かうんだ? 」


「上に行けば妹背山が待ってるはずさ。いなかったらあいつを探して殺すまでだよ」


 そう言うと彼らもまたその研究所を後にした。


***


 研究所の最下層まで彼らは落ちていた。

 地面に落ちた衝撃により痛みが体中に響いていたが柊とイェーガーはなんとか体を起こすことが出来た。


「イェーガー! ヤバいって! 那須川が焦げてる! 」


 柊が声を上げるとそれを見たイェーガーは彼を宥めた。


「柊落ち着け。スペクターさんだって足焼かれて動けないし、僕達に対して開放を使ったから大分体に負担をかけてしまってる。騒いでも仕方ないし、那須川さんには今から応急処置をするから、お前は確保した天使の見守っていろ」

 

 しかし、それでも柊は未だに落ち着けずにおり、幾らか立った後、デバイスが鳴り響くとそれをすぐさまイェーガーは取った。


「皆様お疲れ様です。スペクターさんより任務完了の知らせが来たのでお迎えに参りました」


 デバイスを介して声がするとその声を聞き彼は安堵し、直ぐに状況を伝える。


「影縫さん! 良かった。スペクターさんと那須川さんの意識が無いんです。なるべく早く回収出来ないですか? 」


「畏まりました。すぐに回収いたします」


生命開放(オープン)影海(カゲウミ)

 

 デバイス越しから声が聞こえると少しして、彼らの地面の影が大きくなり、彼らを食らうと、その場から埋葬屋がいた痕跡は跡形もなく消え去っていた。



これからも物語はドンドン加速していくので応援よろしくお願いします!

時間がある時、感想、評価、ブクマ、レビュー頂けると作者が嬉しくて小躍りします。



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