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散華のカフカ  作者:
三部 飢餓の弓
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三十四章 首都陥落作戦-第六首都 其の壱-

兄の仇は目の前に。

行人vs五十嵐、開幕!

 月夜に照らされ、二人の影がくっきりと現れる。

 それを見た警備員が襲いかかるも、彼らは目の前に現れた敵に向かい自らの武器を振るった。


 夜の王の大剣は一瞬で警備員を蹴散らすとそれを見ていた少年が声を上げた。


「相変わらず無茶苦茶だな! バサラ! 」


「お前もこれくらい出来るようになれよ、行人(ゆきと)! 俺はお前達に期待してるからな! 」


 そんな事を喋っている暗闇の中からゆっくりと、もう一人が姿を現れた。


「二人とも隠密行動をあれだけ言ったのにもう破りましたね」


「まぁ、許せ、イェーガー。なんたって俺がいるからな! 」


 それを聞き、イェーガーはため息を吐くも行人はニコニコしながら再び口を開いた。


「まぁ、落ち着こうぜ〜。今から俺達の任務が始まんだからよう」


 そう言いながらビルの中に入って行くとある一室に踏み入る。


 その部屋にはポットのようなモノが幾つか置いてあり、様々なコードに繋がっていた。


 ポットには英語でcocoonと書かれており、それは何かを包み込むような形をしている。


 楽園への片道切符。

 そう言われるモノをイェーガーは起動するために手前にあった端末に手を置き、作業を始めた。


「やっぱり、埋葬屋の支部は抑えられてましたね。まぁ、ここにこれがあるのはバレてなくてよかったです」


「そうだな、第六首都に入るにはこれがどうしても必要だから、多少の無理をしたがなんとかなりそうでよかった」


 そんな会話の後、沈黙が過ぎろうとした瞬間、暇を持て余した行人がそれを破った。


「そんにしても第六首都ってのは面倒な場所だな」


「まぁ、それがここの首都長の意志だからな。スランバー・ジャック、眠る楽園を作り出した男。まぁ、バーチャル空間でそれを作り出した故に、このコクーンを使わんと第六首都には入れないからな。これを押せば、よし! 二人とも起動できます。すぐに入って任務を遂行しましょう」


 イェーガーの言葉を聞き、すぐに三人はコクーンの中に入る。


 そして、そこから光が放たれると彼らはそれを浴びせられ徐々に睡魔が襲いかかった。


***


 行人は夢の中で目を覚ます。

 そこは大きな部屋であり、そこが何処かは分からない。


 しかし、そんな事はお構いなしにと自分の腰に差していた武器を確認するとグーパーと手を動かしながら体が動かし始める。


 夢の中で目を覚ますという行為すら新鮮でそれが夢であるかは分からないが紛れもなく先程とは全く別の場所である事は理解した。


「たしか、武器はそのまま使える様に設定してたんだよな。あいつらとは分けられてるし、まぁ、しょうがないな。パッパと進んで行きますか! 」


 行人は一人で進もうとするも自分の背後に立った誰かに気付くと警戒心を強めて後ろを向く。


 そこには黒と白が混ざった髪で袴に身を包んだ青年が立っており、腰には刀が差していた。


 初めて会う。

 そう思ったがそれは何処か自分が知っている人間の雰囲気とそっくりであった。


「あんた何もんだ? 」


 青年に行人は声をかけると彼はケタケタと笑い出し、口を開く。


「カカッ! まぁ、気付かんわな、仕方ない仕方ない。カカッ! カカッ! 」


 笑い声。

 それは何処か聞いたことある様な懐かしい音。


 彼はそれを無理矢理違うと思い込み、先に進もうと後ろを向くと部屋の外へと出ようとした。


「のう、(ボン)。お前、師匠の事を忘れたとは言わないよな」


 背を向けた途端、行人の背後にそれは立っていた。


 背後に立ったそれに腰に差していた刀を抜き、叩き切ろうと全力で力を込めて振るう。


 それをいつの間にか抜かれた刀の刃で止めると行人は怒りを込めて叫んだ。


「ジジイ! 生きてんなら連絡しろや! 」


「なんだ? 連絡したらワシを養ってくれたんか? 」


「な訳ねえだろう! あんたを超える為に俺はこの刃を研いで来た! あの時の決着も! 兄貴の仇も! 今、ここで全部晴らす! 」


 二つの刀が振るわれ、火花を散らす。

 鋼と鋼がぶつかり合うと甲高い音が鳴り響く。


 目にも止まらぬ、斬撃の応酬。

 そこに込められる殺意は憎しみと共に行人の冷静さを欠かさせる。


 それに比べて青年は余裕綽々といった様子で刀を振るい、その中で行人に喋りかけた。


「何で怒っているんだ? 久々に師弟の再会だぞ。もっと素直に喜ばんと師匠泣くぞ」


「どの口が、そんな事を言ってやがる! お前が兄貴を殺したんだぞ!? それを知っていてその言葉が出てくんのか? 」


「あれはお前を強くする為には必要だったんだよ! 分かってくれ、可愛いワシの弟子! あの時のお前の殺意は本物だった。だから、お前の中に潜む鬼を見てたかなってしまってのう! 味見をしてしまいたくなった! すまない、お前を未熟なまま食そうとしまい。それについては謝ろう! だが、綾人(あやと)を殺した事は悪いとは思わん! 今、ここでお前がワシの目の前に立ってくれたんだからのう! 」


「黙れぇ!!!!!!!! 」


 行人は怒りを込めた一撃を入れ、青年を少し吹き飛ばすと刀を鞘に収め、燃え盛る殺意を込めながら声を上げた。


生命開放(オープン)、抜刀・百華(ヒャッカ)!!!」


 燃え盛る炎の様な怒りとは打って変わって、放つ斬撃は冬に舞い散る、白き雪。


 襲い掛かる斬撃を見ながら笑みを溢すと青年も刀を鞘に収め、行人と同じ構えを取った。


生命開放(オープン)、抜刀・薄命(ハクメイ)


 そして、青年は刀を抜き、光を放つと共に白い斬撃を受け流した。


 壁に斬撃が生まれ、攻撃がいなされた事を理解した途端、目を閉じて行人は既に構えていた。


 そして、必殺の一撃を入れる為に目を開く。


生命開放(オープン)、抜刀・龍舞(りゅうまい)()()(かた)・電電雷雷」


 抜刀と共に龍が降り、それは光の速さで青年との距離を詰める。


 雷を体に纏い、目にも止まらぬ速度で青年の目の前から消えると行人は背後に立っていた。


 走り去った場所からバチリバチリと雷が鳴り、焦げた道が生まれていた。


 青年の体には切り傷が生まれ、地面に膝を突く。


 一泡吹かせたと思い、青年に目を向けようとするも唐突に視界が揺れ、彼もまた同じ様な地面に膝を突いた。


 行人は自分が過ぎ去った頃には刀が抜かれており、カウンターを食らっていた事に気付くと青年はいち早く立ち上がっていた。


「カカッ! やるな、やる様になったじゃないか! かつて、俺に歯向かうことも出来なかったお前が、綾人に守られてばっかりであったお前が、今は目の前に立っている。あの時、お前を殺さずに生かしておいて正解であった。さぁ、始めよう! いざ、参らん! 殺し殺されの御前試合! 我が名は五十嵐(いがらし)! 貴様の師であり、お前の兄を殺した張本人! 乗り気でないなら俺から行くぞ! ここからが全力だ! 」


 そう言うと五十嵐は行人に向けて走り出す。

 

 彼らはお互いに同じ流派の剣術を使っており、それは抜刀術にのみ特化したものであった。


 故に、その動きは抜刀のみに決められたモノであり、刀を抜くのに最善の手を打つ。


 行人もそれに気付き、すぐさま構えるもそれは彼が刀を抜くよりも速く、五十嵐の手には刀が抜かれていた。


生命開放(オープン)、抜刀・殉職者の太刀」


 再び切り傷生まれる。

 それは二度切られた事により十字の傷となり、そこから血が止まらずにドバドバと流れていた。


(ボン)、お前と俺の戦いは始まったばかりだ! じっくりとお前の熟れを味あわせてくれ! 」

感想、評価、ブクマ、レビュー、頂けると作者が小躍りします。

感想、レビューいつもありがとうございます!

嬉しくて狂喜乱舞です!

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