幕間 模像
一部完結間近!
一応、四部構成の予定で遠い道のりになりそうですがお手にとって頂けると幸いです。
起動する。
曇る意識とは裏腹に魂が入り込むのを感じる。
コードに繋がれた人形は目を開け、かつて、自分だった物に目を向けた。
「さっきは死にかけたな、危ない危ない。まさか、同化もせずに絶化を何度も使うと根源側に引き込まれるなんて思ってもいなかった」
自分だった物は穴という穴から血を出しており、口と目からは大量の触手が飛び出し動いていた。
「こんなところで体を失うとは思ってもいなかったなー。もしもの時に作っておいた自分の肉体のリペアが役に立ったよ」
そう言うと自分だった物の首を千切り落とし、触手の命を断ち切る。
「はぁ、魂は持ってこれたけど大分消耗してるし、この体のリペアも想像以上に燃費が悪いな。だが、矢我さんとの約束は果たさないと。報酬分は仕事をしないとね。あー、本当に彼について行ったよかったー。あんな素晴らしい素体に会えるなんて何ていい気分だ!スカディ、スカディかぁ〜。ふふふふふふ、あははははははは」
傀儡はその身に宿す武器に人の真似をして、声を上げた。
「生命開放、人形王・空魚」
彼の足下の地面が割れ始め、神話の獣が躍動する。
「とりあえず、彼らを迎えに行くとしよう。こんな体にはなってしまったがこれはほんの序章だ。私が欲しいモノは見つかり、凪良もこれからそれを手に入れる頃。さて、始まるのは「審判」の再来か、はたまた、「地獄」の顕現か。ははははは、楽しみだ。実に、実に、楽しみだ」
不気味な笑い声と共に空魚は夜空の海を泳ぎ始めた。
少年は目を覚ます。
壁に打ち付けられた身が地面に置かれているの分かり、敵に塩を送られたと思ったが那須川に対して感じた昂りはこれまで以上に心地が良い物でティフォンは気持ちを抑えて傷ついた体を起こした。
「負けたのか、俺は。完敗、これが敗北か」
誰にも負けた事がなかった彼にとっては敗北とはもっと屈辱的な物だと思っていた。
しかし、彼にとって敗北は想像以上に心地が良い物でまた那須川と死合いたいその気持ちの方が強くなっていた。
「ティフォン様、お目覚めの様ですね。迎えに参りました」
後ろを振り向くと「ジェヴォーダン」の一人が声を上げる。
「任務はどうなった?」
「そちらの方は後でペトゥロ様から説明をするとおっしゃっております。なので、とりあえずここから出ることにします」
淡々と喋る獣に怒りを覚えたがペトゥロからの命令というので何も言わずにその場を去ろうとした。
「待ってくれ」
ティフォンは口を開く。
「どうしましたか?」
「この腕を持って帰る。」
獣は少し驚き、訝しんだが「分かりました。こちらの布にお包になってからお持ちください」そう言うと白い布を渡した。
ティフォンは焼け焦げた腕を布に宝物を隠すかの様に包んだ。
他人の焼け焦げた腕になど本来は興味は無い。しかし、これは自分が取った戦利品、いや、好敵手の残した自分に対しての敬意だと感じ、それを捨てずにはいられなかった。
全てが済むと彼は「待たせたな、行こう」そう言うと彼らは夜が明ける寸前の空を走り去った。
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