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トイレの花子さんと醜い俺氏

作者: ko×2ro

起承転結にまとめたのですが、圧倒的に承が長すぎました。短編小説とは。

人間のみんなは妖怪を信じるかい?


 …いや、信じない人の方が多いだろう。

 言ってしまえば幽霊よりも信憑性は薄いからね。


 じゃあもし妖怪が実在したとしよう、妖怪ってどんなイメージがある?


 怖い、悪戯をする、人に危害を加える。

 少なくともあまり良いイメージを持たないだろう。


 …今、座敷わらしのことを考えたでしょ。

 確かに座敷わらしは人に幸福を与えるだの何だの言い伝えがある。でも、みんなはこう思った事は無いか?


 …何で座敷わらしは見ず知らずの自分達に幸福を与えてくれるのだろう、と。


 絶対考えたことも思った事もないだろう。なぜなら人間は自分が良ければ他のことなどどうでもいい生き物だからね。


 現に、街中で何かしらの騒動が起きたとして、それを止めるのは後からやってくる警察であって、警察が来るまで、君たちはSNSでバズりたいが為にその騒動の一部始終を撮影し投稿する。


 被害が拡大しないように警察が来るまで自分がなんとかする、もしくは自分が警察と協力するとかは一切考えない。


 …それが人間というものだろう?


〜起〜


 俺の名前は化夜シキ。霊感があって幽霊とかが見える事以外はそこらへんの人と何ら変わりのない人間である。


「いつも夜中のトイレでスタンバッてたんだけど、最近の子はスマホ?とやらを片手に来る奴が多くてさ。ちょっと音出してやるとすぐに取れ高取れ高〜とか言って驚かす気失せたのよね。」


 そして、今俺に愚痴を言っているコイツはみんな知ってるあの有名な、トイレの花子さん。

 と言ってもここは高校なので、このトイレの花子さんはおかっぱでもなく、髪型はショートロング、服装はJKの私服みたいになっている。


「…あのさ、そろそろテストだから黙っててくれないか?予習の邪魔になるから。」

「え〜いいじゃ〜んどうせシッキーは成績優秀なんだからさー」

「俺が成績優秀なのはこの予習をちゃんとやってるからなんだぞ?つまりこれをやらないと成績悪くなるんだぞ?」

「…つまんないの〜…はいはいわかりました黙ってます〜」

「…ありがと。そうしてくれると助かる。」


 そういうと花子さんは拗ねて体育座りをした。

…俺の机の上に置かれた教科書を座布団代わりにして。


「…いや邪魔だよ」

「…。」


 花子さんは石像のように動かない。


「どいてくれよ教科書見れないだろ」

「…。」

「何か喋れよ」

「だって黙れって言ったのシッキーじゃん。」

「…わかったよ、俺が悪かったよ。」


 俺は頭を掻きながらめんどくさそうに言う。

 すると花子さんはドヤ顔をして言った。


「反省心が足りないわね、土下座しなさい。」

「わかったよもう二度とお前と関わらない。」


 俺がそう言うと花子さんは机から降り、俺にしがみついて言った。


「ごめんごめんごめんごめん私が悪かったから!関わらないのだけはやめて…ね?…ね?」


 花子さんは涙目になっていた。そこまで関わられないのが嫌なのか。


 …でも確かに花子さんは元々、ただ友達が欲しかっただけなんだよな。でもやり方がアレだから全然出来なくて、それを俺が受け入れた訳だし。


「わかった、わかったから。でもテスト中は絶対に黙っててくれ、わかったな?」

「はーい!」



〜テスト終了〜



 俺達はいつものように自宅へ帰ってくる。


「ただいまくらい言いなさいよ。」


 花子さんが言った。


「誰もいないのにただいまなんて言っても意味無いよ。」


 そう、俺の家には基本誰もいない。

 別に事件に巻き込まれて親が死んだとかそう言うわけではなく、単に親が共働きでたまたま二人が海外出張、さらに新型ウイルスの影響で日本に帰ってこれず、海外出張が長引いているのだ。


 俺は家に帰るとすぐに二階にある自室へ行き、ベッドにダイブする。


「にしてもアンタの部屋ホントに何も無いわね。」

「金が無いから買いたくても買えないんだよ。」

「バイトしなさいよ。」

「面接とかが面倒くさい。それに成績を維持していたいし。」

「アンタが家で勉強してるとこ見た事ないんだけど。」


 …。


「花子さん、何かいいバイト知らない?」

「何でアタシに聞くのよ、アタシ妖怪だよ?」

「ほら、妖怪が集まる飲食店とか無いのか?」

「…まぁ、無い訳じゃ無いけど…。」

「じゃあそこでバイトするか。」

「どんな奴がいるかわからないんだよ?もしかしたら人間を毛嫌いする奴とかいるかもよ?」


 なぜ花子さんがここまで止めるのかはわからないが、妖怪が集まる飲食店とか興味しかない。


「そこで殺されたら殺されたで別に構わないし。」

「…私が嫌なんだよぉ…(小声)」



 そんなこんなで連れてこられた場所が。


「…ここ、肝試しで有名な館じゃん。」

「外見でそう見せてるだけ。本当は人を寄せ付けない為なんだけど、最近になってそういうマニアの人とかが関係なしに入ってきたりするの。」

「現代人ってホント害悪でしかないな。」


 そして何の躊躇いもなしに館の玄関を開けると…



「いらっしゃいなのじゃ。まぁいつも通りの小汚いカフェだが勘弁してくれ、うちも大変なの…」


 そこにいたのは豪華そうな椅子に座って書き物をしているロリッ娘がいた。


「…え?」

「…お主人間じゃな?!なぜここに来れたのじゃ?!」

「なぜここにって、普通に玄関開けたらここに来たんだけど。」 


 ロリッ娘は少しの沈黙の後、俺の後ろにいる花子さんに気づき、花子さんを指差して言った。


「…あ!花子!お前さんの仕業か!」

「はーい!そうでーす!」

「ぐぬぬ、あれだけ易々と人間を入れるなと言ったのに…!」

「だってシッキーがここでバイトしたいってうるさいんだもーん!」


 別にそんな意地でもここでバイトしたいって訳ではないのだが…。


「ほう…という事はお主がシッキーという事か?」

「あ、ああ。そうだけど。」


 そう言うとロリッ娘はゆっくりと椅子から立ち上がり無言でこちらへと近づいてくる。


「…。」


 …一体何されるんだ、俺は。


「ま、折角の、そして初めての、そして唯一の人間の来店じゃ、歓迎するのじゃ!」


 ロリッ娘がそう言うとどこからともなく様々な妖怪達が姿を現した。 


「よう人間!よろしくな!」

 とか、

「人間の客なんて初めてね。友達になってあげようかしら」

 とか妖怪達の色んな声が聞こえてくる。


「そしてバイトの件じゃが、お前を受け入れよう、ようこそ、我が妖怪カフェへ!」


 妖怪達の手からクラッカーが発射される。

 これは相当の歓迎具合だ。


「これからよろしくなのじゃ、人間。儂は岸藻玉きしもため。おたまさんと呼んでくれなのじゃ。」

「…俺は化夜シキ。これからよろしく、店長。」


…こうして、俺のちょっと変わったバイト生活が始まったのだ。



〜承〜


 出勤1日目。


「学校帰りにバイトするって結構キツいんだな…」

「まだまともに仕事してないのに何やりきったみたいなこと言っとるんじゃお化け屋敷。」

「いや何時間も皿洗いばっかしてたら流石に…ってお化け屋敷?!」

「お主の事じゃが?」


 …確か小学生ぐらいの時にやーいお化け屋敷〜って馬鹿にされた事あるけどさ。


「というか客全然こないのに何でこんなに洗い物溜まってんだよ」

「儂の店が不人気みたいな言い方しおって…洗うのが面倒くさいのじゃああーー!!!」


 そう言うとおたまさんは店内のどこかへ逃げた。何か納得いかないがそれでも一応仕事なので残りの食器を全て洗う。


「おたまさんの情緒どうなってんだよ‥」

「よーシッキー。調子どおー?」

「うわぁ?!」

「きゃあ?!」


 音もなく横から花子さんがひょっこり顔を出してきた。俺は驚いて皿を投げ飛ばしてしまった。そしてその先にいたのは…


「あー疲れたのじゃ。やっぱり急に動くと体に悪いのじゃあああああ!!??」


 皿はおたまさんの顔に直撃した。そしておたまさんは目を回してその場にぶっ倒れた。


「おたまさん!!!!!!」


 俺は倒れたおたまさんに駆け寄った。


「あ…星が…三途の川が見えるのじゃ…」


 …いや妖怪だからすでに死んでんだろ。

 そう思っているとおたまさんが勢いよく立ち上がって叫んだ。


「この乱暴者!いくらブラック企業だと思っても店長に皿を投げて殺そうだなんて!」

「いや悪かったけど別に殺す気もブラック企業だとも思ってねえよ!…てか意外とピンピンしてるんだな」

「そりゃ一応妖怪じゃからな。全く、お主ここでバイトしておいて良かったの。他でこんなんやったら即逮捕&退学じゃぞ?」


 …何、俺ってドジっ子だったのか?

 いや違うな、そもそも俺が皿を投げた原因は…!


「ていうか元はと言えば花子さんが驚かさなければこんなことにはならなかったんだぞぉ!」


 俺は花子さんの事を指差して言う。


「…てへぺろ♡」

「てへぺろ、じゃねえよ!!今度からは驚かすのやめてくれよ、な!!」

「…そもそもアタシ、驚かすつもりもなければ、勝手に驚いたのはシッキーじゃん。」



 〜休憩時間にて〜


 椅子に座って休んでいたら、おたまさんが突然隣に座ってきてこう言った。


「そういえばお主、花子とはどういう経緯で出会ったのじゃ?」

「え、急になんだよ?」

「儂も一応女の子なのでな、そういう出会いとか気になるのじゃ。」

「別にそんな大した出会いじゃないよ。」

「いいのじゃいいのじゃ!教えてくれなのじゃ、お主人間と妖怪の出会いのラブストーリーを!」


 おたまさんは目をキラキラ輝かせて言った。


「…別にラブストーリーとかじゃねえんだけど…そうだな、花子さんと出会ったのは俺が高一の時だから…一年前かな?…」



〜一年前〜


「ねーねー、この学校にトイレの花子さんがいるって噂知ってるー?」

「知ってる知ってるー、夜中に女子トイレ入ってドアをノックすると返してくるって奴だろ?」

「やーん怖ーい♡…でも気になるから今日やってみよーよー」

「おーおーいいぜ!」


 入学してから、周りはずっとこの噂話の事しか聞かない。確かにこの高校にはトイレの花子さんが出るとは知ってはいたが、正直、そこまで興味は無かった。

 信じていない訳ではないがトイレの花子さんなんて有名すぎて俺の中では今更感が拭えなかった。


 例えるなら、数年前に大ブレイクしていた俳優に会えるよと言われても、いや、今は売れてないのなら別に会わなくてもいいやってなるあの感じだ。

 でもみんなからしたら例え今更売れてなくても、昔大ブレイクしてた人なら会いたい!と思うのだろう。


「あ、あの…シキさん…」

「え、何?」


 彼女の名前は桜木望女さくらぎもちめ

 別に幼馴染という訳でもなく、初対面の筈だが…。


「あ、あの、私達もトイレの花子さんに会ってみませんか…?」


 …こいつ何なんだ?初対面で肝試しに行こうだなんて。…別に一緒に行くのは全然構わないんだが。


「…良いけど、何で俺なんだ?他の明るそうな奴と組めば良いじゃねえか?」

「ああいうタイプの人は嫌い。」


 …つまり俺は根暗な奴だと思われた訳だ。まぁ少なくとも確かに自分は陽キャではないが……



「ふむふむ、つまりその桜木とかいう女が理由で花子と出会う事になった訳か。」

「まぁそんな感じだ。」

「お主を誘ったという事は…その女はお主のことが好きなんじゃないのかの?」

「正直それも頭をよぎった。でもこの後の出来事でそうじゃないって確信したんだ。」

「…ほう?」



 〜夜中の学校にて〜


「夜中の学校って普段と雰囲気が段違いです」

「あぁそうだなー」


 何故桜木の肝試しに付き合ったのかはわからない。

 毎日のつまらない人生に刺激が欲しかったのか、初対面の人間を肝試しに誘う桜木の人間性に惹かれたのかわからないが来てしまったんだからもうその場の雰囲気に身を任せるしか無くなってしまった。


「ここです」

「意外とフツーだなー」


 俺は興味が無い故、夜中の学校に、トイレの花子さんに対して何の恐怖心も抱いていなかった。だからとりあえず棒読みだがそれっぽい事を言っていた。

 …別に女と一緒にいるからカッコつけてイキッている訳では無い。

 しかし流石にこの状況で棒読みなどしていたら当然変だと思われる。


「…怖くないんですか?」

「正直トイレの花子さんとか時代遅れが過ぎるし、あんま興味が無いからそんな怖くは無いかな。」


 …うーん、やっぱりカッコつけてるように見える。

 クール系男子を演じているようにしか見えない。


「…なぁんだ、つまんないの。」

「え?」

「あ、いえ、怖くないなら先にドアにノックとかしてみてくださいよ。」


 「つまんない」という言葉がここで出てくる事に違和感を感じながらも、そのトイレの花子さんが出るらしいトイレに入り込み、適当にノックをする。


「はーなーこさん、あーそびーましょ(棒)」


 本来ならここでノックが返ってくるはずだが。


「はーぁーい…」

「?!」


 普通だったらノックが返ってくるはずなのだが、なぜか声が返ってきた。

 俺はふと思った。

 …普通ならここで開けて花子さんに何かされるんだろうがここで敢えて何もせずに無言で帰ったらどうなるのだろうと。


「…………。」


 俺は足音を立てずにトイレから出た。


「どうでした?」

「声が返ってきた。」

「それでどうしました?」

「無視した。」

「無視?!」

「いや、無視したらどーなんのかなって思ったから」


 そういうと、望女はため息をついて言った。


「アンタって本当に恐怖心のないつまらない人間なのね。」

「…は?」

「私ね、そうやってカッコつけてる奴のビビってるとこ見るのが好きなの。だからアンタを誘った訳。」


 …俺って基本まともな人間だと思われてねえんだな。根暗なカッコつけって何だよそれ。


「なのにアンタって本当に恐怖心とか無いのね、本当つまらない!」


 そういうと望女は女とは思えない程の力で俺を片手で押し飛ばした。何故望女がこんな力を持ってるのかわからないが、押された場所が痛むが、それ以前に…俺何でキレられてんの?


 そう思っているといつの間にか望女は姿を消していた。多分帰ったんだろう。


「…オメーから誘っておいてそりゃないだろ。」


 …ふとトイレの花子さんの事が気に掛かった。

 無視して呪われて普段の生活に危害を加えられたら面倒だし、一応…。


「…んで、戻ってきた訳だが。」


 女子トイレを開けると、そこには女の子が後ろ向きで体育座りをしていた。

 トイレにはすすり泣きの声が響いている。


「…何この状況。」


 そういうとこちらに気付いたのか、泣きながらトイレの花子さんがこちらを向いてきた。


「…何で無視したの。私のことが見える筈なのに」

「あ、いやー悪かった。頼むから呪うのだけはやめてくれ、面倒だから。」

「ようやく私の事が見える人に出会って、友達になれると思ったのに、酷いよ…。」


 そう言いながら、トイレの花子さんはこちらに近づいてくる。


「貴方が私を拒むなら‥力尽くで友達にしてあげる」


 …うん、どういう事?

 友達って力尽くで作れるモンじゃないぞ。


「…えいっ。」


 俺は押し倒された。するとトイレの花子さんは俺に馬乗りになり、顔を近づけて言った。


「友達にしてあげるね…?」


 そういうとトイレの花子さんは俺にキスをしてきた。


「?!?!?!?!?!?!」


 訳がわからなかった。

 ファーストキスを奪われた事よりも、こいつにとって友達になる行為はキスなのか?!


 随分長い時間唇を重ね、そろそろ息苦しくなってきた時、俺の唇から花子さんの唇が離れた。


「これで私達は…ずーっと友達…だよ…?」


 花子さんは顔を赤らめながらも、とびきりの笑顔で俺に言った。




「うっひょおおおおおーーー!!!!!!これじゃあーーーー!!!!!!!儂はそういうのを求めておったのじゃーーー!!!!!!!!ええなーええなー儂もそういう経験してみたいのぉ、なぁお主、儂と友達にならんかの?」

「断固否定する。」


 おたまさんは目をダイヤモンドのように輝かせて言ってきた。冗談に聞こえるが多分本気だろう。…嘘であってくれ。


「えー良いじゃろー儂とキスしよーよー」

「俺の唇はオメーの性欲満たすためにある訳じゃねえよ!」

「いやー改めてシッキーとの出会いを振り返るとアタシ結構攻めてたのね…♡」

「お前も聞いてたのか花子さんッ!」


 花子さんは顔を赤らめて顔を手で覆っている。


「いやー儂は幸せじゃのー…はぁ〜…」


 そんな感じでおたまさんが尊死して1日目は終わった。



 数週間経ったある日。



「お主もようやくテキパキ仕事をこなす事が出来る様になったの。儂は嬉しいのじゃ。」

「まぁ最近は客全然来ないけどな。」


 冗談で言ったつもりだったが、最近は妖怪達の姿を全く見なくなった。人間が来ないのは当たり前として、妖怪すら来ないのはおかしい。


「うーん、いくらなんでも妖怪達がずっと来ないのは流石にちょっとおかしいのじゃ。」

「俺という人間が来たから…?」

「いや、むしろお主は妖怪達に好かれとったじゃろうが。」


 そういうと突然扉が開いた。


「客か?!」

「いや、九尾じゃ。」

「九尾?」


 九尾って狐の尻尾が9本になっちゃったよみたいな見た目の妖怪だよな。そう思い、別に意味はないのだが構えると、現れたのは金髪のイケメンだった。


「やぁおたまさん。‥何か前より店の雰囲気変わった?」

「久しぶりじゃな九尾。まぁ見ての通りだ。あ、そういえば人間のバイトが出来たのじゃ。」

「へぇ。人間はここには来れない筈だけど?」

「アタシが案内してあげましたー!」


 俺の後ろから花子さんがひょっこり手を上げて言った。


「そう…花子さんは相変わらずだね…シッキーとやらは君かい?」


 九尾は席に座り、俺を見て言った。

 …目を見る感じ人間を恨んでいたりする訳ではなさそうだ。


「…あ、あぁ。化夜シキだ。」

「なるほど。君がシッキー改め、シキ君か。人間である君が妖怪である花子さんとはどういう経緯で出会ったんだい?」

「あ、アタシが説明しまーす!」


 花子さんに話させた結果、物凄く話を盛られていた。


「…なるほど。君にとってシキ君がそれほどの大切なのかはよくわかったよ。」

「儂が聞いた話とだいぶ違うのじゃ。ところで九尾、最近妖怪達が全然来なくなったのじゃが何か知っとらんか?」


九尾は少し考えた後、思い出したように言った。


「あくまでも噂だけど、妖怪を喰らう妖怪がこの世にいる…とかいう噂を聞いたよ。」

「妖怪を…喰らう…?」

「なんじゃあそれ。そんな危険そうな妖怪聞いたことも無いのじゃ。人間を喰らう妖怪とかは知っとるのじゃが…」

「妖怪を喰らうなんて、そんなの共食いと同じじゃない。」

「あくまでも噂だよ、本当かどうかは僕にもわからないけどね。」


 そういうと九尾が突然場違いな事を言い出す。


「そういえば風呂に入りたいな。おたまさん、風呂を沸かしてくれないか。」

「え、なんじゃあ急に。」

「長旅で疲れたし、久々に入りたいし、何より、シキ君が来たんだから。」

「…まさかとは思うが俺も一緒に入るパターンの奴?」

「もちろん。」


 その途端、突然花子さんが出てきた。


「九尾…アンタまさかアタシのシッキー狙ってるのね?!このBL妖怪め!渡さないわよアタシのシッキーはぁ!」


 そういうと花子さんは俺の身動きが取れないように抱きしめ、九尾から遠ざける。


「大丈夫だよ花子さん。BL展開は絶対しないから。」

「…本当に?ずっとアタシの事好きでいてくれる?」

「う、うん。」

「じ、じゃあいってらっしゃい。気をつけて…ね?」

「残念ながらまだ風呂は沸けてないのじゃ。」


 …そういえば確かにまだ風呂沸いてねえわ。今の完全に入る雰囲気だったわ。



〜お風呂にて〜



「そういえば九尾…」


 そう言って湯船に入っている九尾の方を見ると、そこにいたのは金髪イケメンではなく、尻尾が9本生えた狐だった。


「…ごめんね、人間態でいるのは疲れるんでね。リラックスしたい時は基本元に戻るんだ。」

「そ、そうなんだ…。ていうか、九尾は俺…人間を嫌ったりしないのか?」

「確かに人間は醜い。でも、君はだけは例外だ。だって花子さんをどんな形であれ救った。それだけで僕からの好感度はかなり上がっているよ。」

「本当にBLみたいな展開になりそうな事言わないでくれねえかな。」

「だって、人間なんて、自分が良ければそれでいい生物じゃない?現に人間達は座敷わらしに対してどうして見ず知らずの自分達に幸福を与えてくれるのだろうなんて絶対考えたことも思った事もないだろう?」

「確かに、考えた事はあまりないかな。」

「しかもましてや、その座敷わらしを金儲けに使っている連中も人間の中にはいるらしいじゃないか。その時点で自分の事しか考えてないのさ。座敷わらしは過去に人間に助けられたからお礼として幸福を与えているのに、座敷わらしを助けてすらいない人間共がそれに目をつけて幸福を願ってくる訳だ。」


 でも座敷わらしは過去に人間に助けてもらった恩があるからお礼に幸福を与えるしか無い。

 与えなかったら人間達から文句やら色々される訳だし。


「…でも君は花子さんを救った。自分に何も得は無いのに。どうして助けたんだ?」

「うーん、呪われたりして普段の生活に支障が出るのが面倒だからかな。」

「…つまり君は花子さんに呪われて生活に支障があると面倒だから花子さんを助けたと。」


 突然九尾の目つきが変わった。

 憎悪に満ちた目だ。


「…そうか。結局君も、そこらへんの醜い人間と同じだという事か。」

「…ああ。俺は花子さんを助けたいと思って助けた訳じゃない。正直言うと後が面倒だからってやってたら、成り行きで助けてただけなんだ。俺は、九尾の言う醜い人間と同類だったんだ。」

「…。」

「でもあの後結局、花子さんに気に入られ、取り憑かれて毎日付き纏われて、正直、邪魔だって思ってた。お陰で、周りから変な奴だって思われて、友達も居なくなって、皆んなからは距離を置かれて、いつも仲間外れにされたり、陰口言われたり、普通だった俺の生活は花子さんに全部ぶっ壊された。」

「……それで被害者気取りか?」


 …そうだ。俺は被害者面している。そう、あの時の俺は自身を被害者だと思っていたのかもしれない。


 …でも。


「…でも、そんな醜い俺を救ってくれたのは花子さんだったんだよ。」

「…何?」



〜半年前〜


「…ねえシキ君…。」

「…。」


 コイツは地縛霊の筈なのに、何故か俺についてくる。

 どうやら俺はコイツに取り憑かれたらしい。まぁ別に普段の生活に危害を加えなければ別に良いのだが。


「…ねえシキ君、何で無視するの‥?私達…友達でしょ…?」

「頼むから今は話しかけないでくれ。俺とお前は友達でもなんでもない。」


 キスをしたからと言って友達になると言うわけではない。というか友達というのは自然と出来てるものであって、この行為をすれば友達だよ、なんてものは存在しない。


「…酷いよぉ…せっかくキスまでしたのに…」

「大体なぁ、知らない人間にキスするとか、お前の気は確かか?!」

「…で、でもぉ…」


 俺はふと我に帰り、辺りを見渡す。


「あー何あいつ、ひとりで叫んでるよ…怖ぁ〜」

「きっと霊感あるアピールしたいんだろ、陰キャは黙ってろよ…」

「妄想は家でやってろよオタクが…キモいんだよ…」


 ああ、やってしまった。

 コイツは俺にしか見えていない。故にコイツの声は俺にしか聞こえない。

 だから周りからしたら一人で叫んでるヤバい奴だ。


「いいか、俺が学校にいる間は話しかけられても返せないから、絶対に話しかけるなよ。わかったな。」

「…う、うん…わかったよぉ…」


 コイツがこう言う性格で良かった。

 もしJKみたいな性格をしていたら、さらに面倒だっただろう。



「今日は羅生門について勉強するぞ。羅生門というのは昔、死体を捨てる場所で…」


 俺は黙々と黒板に書かれた事柄を書き写す。


「…書き写すだけじゃ…頭に入らないよ…?」

「うわぁびっくりした?!急に出てくんなよ…ってか話しかけないでって言ったろ?!」


 授業中のペンを走らせる音しか聞こえなかった教室に、俺の叫び声が響く。

 俺はハッとなり、周りを見渡す。

 皆んなが変な目でこちらを見ている。


「シキー。急に叫んでどうした?幽霊でも飛んできたか?」

「え?あ、いやぁ幽霊なんているわけないじゃないですかーははは。」


 …隣に妖怪がいるなんて言えるわけがない。

 平穏な学校生活になんて事をしてくれたんだコイツは。


「…え、シキ君は私が見えてる筈なのに…信じてないの…?」

「ちょっうるさい黙ってろよ!」


 俺がそうコイツに言った瞬間。


「お前が黙れよ!」

「そうよあんたがうるさいんだよ!!」

「虫ごときでビビんな陰キャが!!」


 周りの生徒から罵詈雑言を浴びせられた。

 先生はやめろと叫んでいたが、誰も聞く耳を持たず、そのまま授業が終わってしまった。

 いじめられるかもしれないからと先生の配慮で相談室へと案内された。


「なぁシキ。お前どうしたんだ?急に叫んで。」

「い、いやぁむ、虫が飛んできてびっくりしたんですよ〜」

「だったらあのうるさい黙ってろよは何なんだ?まさか虫に対して言った訳じゃないよね?」

「…。」

「先生に何か言いたいことがあれば、なんでも正直に言っていいんだぞ?…流石に死ねは駄目だけどな?ある程度の悪口なら別に言っても構わないんだぞ?先生そこまでメンタル弱くないからさ。」


 俺は素直に言おうと思った。


「…俺、取り憑かれてるんです。」

「…お、おう。」


 先生は少々困惑していたが、俺は続けて言った。

 …何としても、信じて欲しかったのだろう。


「前にここでトイレの花子さんってヤツに一緒にいこうって誘われて、それでついて行ったらトイレの花子さんに気に入られて、それ以降ずっと取り憑かれてるんです。」

「それで、ずっと話しかけられるのかな?」

「…はい。でもみんなには見えてないし、勿論先生も見えてないと思うから…信じてもらえないと思うけど…」

「うーん、まぁ確かにこの学校にはトイレの花子さんが出るって噂があるし…現に生徒が取り憑かれて悩んでるんだったら、信じるしか無いよな。」

「ほ、本当ですか?!」

「おう。でも…それを解決するってのは難しいと…」

「いや、理解者がいるだけでもかなり助けになります!本当にありがとうございます!」


 …良かった。先生は俺を信じてくれた。

 ひとりでも理解者がいてくれるのはとても心強い。


 そして俺は、先生の配慮で学校を早退させて貰った。成績は先生がなんとかするとの事だった。



「…シキ君…信じてくれる人…いて良かったね…」

「お前がついてこなければこんな目には合わなかったんだけどな!」


 そうだよ、信じてくれた人も何も、そもそもコイツが俺に取り憑いていなければこんな事にはならなかったんだ。


「…シキ君は…私が嫌い…?」

「あぁ。嫌いだ。今すぐ学校の女子トイレに帰れ」

「…せっかくシキ君に出会えたのに…お別れなんて…嫌だよぅ…」


 わがままだなと思ったが、それ以上に俺は理解が出来て嬉しかった。今は、それだけだった。


 雨がどしゃ降りのある日。


「先生、トイレ行ってきていいすか?」

「おう、行ってこーい。あ、2階のトイレ封鎖してるから、1階のトイレ使ってくれ。」

「あ、わかりましたー。」


「あいつ、トイレの花子さんに会いに行くんだ〜」

「行ってろ行ったろ、帰ってくんな」


 などという下等生物の声が聞こえたが無視してトイレに向かう


 トイレへ向かう道中、あの先生の声が聞こえてきた。


「…この声…あの理解者先生…じゃない…?」

「あぁそうだよ。そりゃ職員室だからな。」


 しかし聞こえてきた内容は、聞きたくも無かった内容だった。


「そういえば例の…化夜シキ…だっけ?あの子はどうよ?」

「うーんやっぱり取り憑かれてるとか嘘でしょ。多分ただの疲れを幽霊のせいにしてる痛い子供と一緒でしょ。」

「…?!」


 …そんな…先生が…そんな事…信じてくれたんじゃなかったのかよ…!


「流石にそれは言い過ぎですよ、◯◯先生。」

「いやーでもどうせあの時黙れよって言ったのも、ちょっとした事でキレる時期あるでしょ?多分それでしょ。確か、反抗期ってヤツ?」


 俺は先生の言葉に絶望した。

 あの時の理解してくれた言葉が全部嘘だったって事なのか?

 俺はその途端、頭が真っ白になった。何も考えられなくなり、そして何も考えたくなかった。


「…そんな…酷い…」


 コイツは俺に同情しているつもりなのか?

 …全て、全てお前のせいだと言うのに!!


 俺はその場に崩れた。

 そして保健室で頭痛いと言ってその日の最後の授業を休み、帰りのHRで戻った。


「それじゃ皆、さよならー」

「さよならー」


「…あれ、おかしいな。俺の傘が無え」

「…傘…持ってきてた…よね?…酷い…」


 ま、どうせ誰かが悪戯でどっかに隠したんだろう。友達に折りたたみ傘でも借りて明日返せばいいや。

 丁度そこに友達のヒロが傘をさして帰ろうとしていた。


「あ、ヒロー!傘貸してくんねーか?」

「…。」

「ちょっ、おい、無視すんなって!おい!」


 俺はヒロを追いかけ、肩を掴む。


「はぁ、はぁ、ちょっと待ってくれよ、何で無視すんだよ?!」

「…頼むから関わらないでくんねーか?」

「は?」

「…お前と関わってるとさ、こっちまで変なヤツだと思われるし、俺だけじゃない、彼女とかにも迷惑掛かるからさ…」

「え…ちょっ、おい」

「頼むから…俺に関わらないでくれ。ごめん。」


 そういうとヒロは俺の手を振り払い、一目散に帰っていった。


「…う、嘘…だろ?」


 雨が降っている中、ずぶ濡れになっている俺はその場に立ちすくんでいた。


周りからは

「うわーあいつ遂に友達無くしたーワロスー」

「つーか傘ぐらい持ってこいよ…」

「濡れてる俺かっこいいとか思ってそー」

「お友達の幽霊さんに助けてもらえよ、まぁ幽霊なんて居ないけどな!」

…など、いろんな声が聞こえてくる。


 …下校する生徒が少なくなってきた頃、後ろから声が聞こえてきた。


「おいシキ!風邪引くぞ!何やってんだ!」


 あの先生の声だ。でも、あの先生は俺の事なんか信じちゃいない。俺はずぶ濡れになったまま先生に言う。


「…先生は俺の心よりも風邪引く事を心配するんですね…」

「え?」

「聞きましたよ、今日。先生、俺の事なんか信じてなかったんですね。」

「…あれ、聞いてたのか。」


 まさか授業中のあの時間、ピンポイントで俺が来るとは思ってもいなかっただろうな。でも…。


「酷いっすよ、本当…そりゃ確かに現実離れした話だけどさ。それでも、先生は信じてくれた。俺は、俺はそれにどれだけ助けられたか…でも…結局裏切られた。」

「…でもどんだけ心が病んでいても、ここで死んだら解決も何も無いじゃないか!」

「そんな病んでて理解者が欲しかった俺の手を離したのはアンタだろ!!」

「…!」

「…良いんだよ、アンタが理解してくれないのなら、もう誰も理解なんてしてくれないんだよ…」

「お、おい!」

「俺と同じ思いしてる奴なんてどこにもいないから…!共感者なんて…どこにも…いないんだよ…!」


 そういうと俺はずぶ濡れになったまま先生の言葉に耳を傾けずに帰った。



 …どこかの路地裏にて。

 雨は未だ止んでいないが、夜になっていた。


「…シキ君…大丈夫…?」

「…何もかも…全部お前のせいなんだよ…!」


 全部、全部全部全部全部、コイツのせいだ。

 コイツが俺の人生全てを狂わせた。


「…ごめんね…。」

「………お前の謝罪なんて求めてねえんだよ……!」

「…でも…ごめんね…私のせいで…全部…無くしちゃって…。」

「…そうだよ…信頼も、友達も、理解者も、平和も、楽しかった居場所も、お前のせいで…お前せいで……!俺は…何もかも失ったんだ……!」

「…ごめん…なさい…ごめん…なさい…ごめん…ねぇ…」


 コイツはなぜか泣いていた。まるで自分の事のように。


「…何で…お前が泣いてるんだよ…!!」

「…だって…私が…私が…友達のシキ君に…酷い事しちゃったんだもん…」

「だから俺はお前の友達じゃ…」

「…私の…!たった一人の…!友達を…!大切な人を…!私が傷つけてしまった…!」


 …たった一人の…友達…大切な人…?


「私が…助けてあげようとしても…!結局…それはシキ君を…苦しめるだけで…!」


 …俺を…助けようと…?


「誰よりも…一番…シキ君を…知ってるのに…!」


 …誰よりも…俺を知ってる…?


「…シキ君には…助けて貰ったから…今度は私が…助けてあげようと…したけど…!」


 …俺に…助けて貰った…?


「…私がいなくなれば…シキ君は…救われる…でしょ?」

「…お、おい…」

「…どんな返答でも…ちゃんと返してくれてありがとう…」

「そんな、嘘だろ…」


「…さよなら…私がいなくなったら…頑張ってね…」


「待ってくれッッッ!!!!!!!!!!」



 そう言うと、アイツはどこかへ消えていった。




 俺の理解者は…最初からいたじゃないか。



「…書き写すだけじゃ…頭に入らないよ…?」

「…シキ君…信じてくれる人…いて良かったね…」

「…シキ君は…私が嫌い…?」

「…そんな…酷い…」

「…傘…持ってきてた…よね?…酷い…」



「…シキ君…大丈夫…?」



 …何で、どうして俺は気づかなかったんだ!

 俺は周りの目を気にし過ぎて、アイツの思いが見えてなかったんだ…!


「…いや、周りの人間のせいにしちゃいけねえよな。もちろん、アイツの…いや、花子さんのせいにしても駄目だよな、全部…俺の…俺のせいなんだ!」


 俺が周りを気にしなければ、理解者の花子さんとも一緒にいれた。


 俺が望女の誘いに従わなければそもそも花子さんとも出会わなかった。


 でもあの時、あの場所で出会わなければ花子さんが救われる事は無かった。


 だから…だから!


「出会っちまって向こうが救われたんだから、その運命を受け入れなきゃいけなかったんだよな…!」


 まだ雨は降っている。相変わらずずぶ濡れの俺は学校へと向かった。



 夜なので当然高校には誰もいない。

 まぁ職員室で先生が残業しているかもしれないが。


「…待ってろよ花子さん…!」


 俺は花子さんと出会った、あのトイレへと向かう。


 廊下は走ってはいけないが、そんな事はどうでも良い。しかし、道中、先生と遭遇してしまった。


「…シキ!」

「先生…何でここに?残業なら職員室でやれば良いんじゃないですか?」

「いやー2階の封鎖したトイレからすすり泣く女の子の声が聞こえるから見に行こうと思ってな」

「…2階の封鎖されたトイレか…わかった!」


 居場所がわかった俺は走り出す。

 しかし廊下を走る生徒を先生は止めなかった。


「…シキの言ってた事は…本当の本当だったんだな」


 そこで先生はようやく信じ難い俺の話が本当だとわかった。



 2階の封鎖されたトイレに着いた俺は、扉を開ける。


 そこには、あの時と同じく、後ろ向きで体育座りしてすすり泣く花子さんがいた。


「花子さん…。」


 俺の声に気付いた花子さんは俺のいる方へ振り返る。


「…どうして…?」

「俺、ようやく気付いたんだ!俺の求めていた理解者はずっとそばにいてくれた花子さんだって!」

「…で、でも…私は邪魔なんじゃ…」

「ああ。確かに今までは邪魔だと思ってた。でも、俺にとって花子さんが、花子さんにとって俺がどんな存在なのかが、ようやくわかったんだ。」

「…で、でも」

「もう…周りの目とか、周りの評価とかそんなの関係無い!!俺はお前とちゃんと向き合うから…!」

「…!」

「…だから…また…一緒に…俺と…友達になってくれないか…?」


 少しの沈黙。緊張感が漂うトイレで花子さんが出した答えは…。


「…うん…これで…正式に友達だね……♡」


「花子さん!!!」

「シキ君っ!!!」


 そして俺たちはお互いに抱き合った。

 そしてあの時とは違う、お互いを想ったキスを交わした。




「…つーわけで、俺たちはちゃんとした友達になったって訳だ。」


 皆んな忘れているだろうが、これで俺と花子さんの過去をほぼ同じ全てを九尾に話した。


「…なるほど。君はしっかり自身の罪、醜さを受け入れ、同時に花子さんを受け入れたと。」

「あぁ。あの時は本当に花子さんには申し訳ない事をした。」

「途中むせかえる程の醜さで風呂場を出て行こうとしたが、ちゃんと最後まで聞いてよかった。ちゃんと君は改心したんだね。」

「ま、まぁな。」


 というより随分の長話をしていたので、のぼせそうだった。


「…なぁ、そろそろ出ないか?」

「…同感だ…。」


 そして風呂場を出て、服を着ていた時だった。


「きゃあああああああ!!!!!!」

「んじゃああああああ!!!!!!」


「?!」


 花子さんとおたまさんの悲鳴が聞こえた。


「…急ぐぞ、シキ君!!」

「ったりめえだろ!」


 カフェへ戻るとそこには右腕を失くしたおたまさんが倒れていた。


「おたまさんっ!!」

「おいおい何だよコレ…?!」

「うう、あれじゃ、例の妖怪を喰らう妖怪が現れたのじゃ。そ、それで儂の右腕をガブリと…」


 その話題、完全に忘れてた。それよりも俺が真っ先に気付いたのは…!


「…花子さんは?」

「花子は…例の妖怪喰らいが攫っていった。」

「なにぃ?!」

「一体何が目的で…!」


 何故喰わずに攫っていったんだ?

 …いや喰われてないに越した事はないが。


「ね、狙いは…お主じゃ、シキ。」

「お、俺ぇ?!」

「理由はわからんのじゃがお前に相当な執念を持っていたのじゃ。」

「シキ君…何か心当たりはあるかい?」


 俺は考えてみた。過去に何か人関係で揉め事とか…いやあり過ぎてどれだかわからんが…心当たりというと…!


「うーん、まさか望女か?」

「望女…確か花子さんと出会ったきっかけを作った同級生だっけ?」

「でも何でその子なんじゃ?」

「花子さんと出会う前に、


「私ね、そうやってカッコつけてる奴のビビってるとこ見るのが好きなの。だからアンタを誘った訳。」


みたいな事言ってたからまさか俺をビビらせる為だけにこんな事を…?!」

「だとしたらなんて害悪な奴なのじゃ。」

「おたまさん、奴がどこへ行ったかわかるかい?」

「確か…学校の屋上とか言っておった気が」

「学校…シキ君の通ってる学校かい?」

「だろうな。望女もそこに通うJKだからな。行くぞ!九尾!」

「ああもちろんだ!シキ君!」


 そういうと九尾は人型から狐へと姿を変えた。


「僕に乗れ!君の走るスピードよりは速い筈だ!」

「OK行くぜぇ九尾ぃ!」


 そういうと九尾とそれに乗った俺は猛スピードで飛び出し、カフェの玄関扉を破壊した。


「ここで飛び出すのではないのじゃああーー!!!…ああ、扉の修復代が…ああ…」



〜転〜



「君の通う学校はどっちだい?!」

「そんな遠くねえ!」

「それなら!」

「うわぁああああ!!??」


 そう言うと九尾は高く跳んだ。


「建物の上を走っていけば着く!シキ君、学校はどの建物?!」

「あの建物だ!」

「よし、行くぞ!!」


 まだ学校まで100メートルはある筈だが、九尾はひとっ跳びで学校の屋上へと跳び移った。


 慣性の法則が働いて九尾の爪が屋上の地面との摩擦で火花が散っている。

 九尾に乗って月が綺麗な夜空から火花を散らしながら着地して登場なんて世界一カッコいい登場だと思う


「あら、随分とカッコつけた登場ね。」


 そこには案の定、桜木望女がいた。


「ぽっと出の変な同級生かと思いきや、まさか最後の最後で重要キャラになって再登場するとはな!」


 俺はメタいことを言ったが雰囲気にかき消された。


「望女!花子さんをどこへやった!」

「あら?九尾もいるじゃない?花子さんならあそこよ?」


 望女が指差す方向…望女の真上を見ると、そこには十字架に架けられた花子さんがいた。

 どうやら気を失っているようだ。


「あれだけカッコつけた登場したのに、まさか気付いてなかったの?本当にカッコつけてるだけで周りの見えてない人ね。」

「悪いな、周りを見過ぎたせいで辛い目にあったんでな、基本周りは見ない事にしてんだ。」

「でも、見なさ過ぎて彼女までも見えなくなってしまっては元も子もないわね。」


 ぐうの声も出ません。


「というか、九尾はともかく、貴方は無力なのにどうして来たのかしら?」

「大切な人は、自分自身の手で取り戻さなきゃ駄目だからな。」

「貴方、本当にカッコつけるの好きね。」

「彼女の前で彼氏がカッコつけるのは当たり前だろう?…もしかして恋愛経験無い?」

「ウザい黙れ!お前のそのカッコつけた面、ビビった顔で歪めてあげる!」


 そういうと望女はこちらへ向かってくる。


「…シキ君、これを。」

「…何これ。」

「この小太刀は特殊な妖力を秘めていて、妖怪の妖力を弱めて妖怪を断つ小太刀だ。あ、僕にもちょっとは効果あるから早く受け取ってくれないかな…」

「お前それ早く言えよ!」


 俺は九尾から即座に小太刀を受け取り、向かってくる望女に対抗するべく小太刀を突き立てる。


「そんな見え見えの攻撃、当たらないわ!」


 さらっと避けられ、小太刀を突き立てた右腕を望女のやけに伸びた爪でガリっといかれる。


「いっって!!!」

「シキ君っ!!くっ!!」

「九尾?アンタもビビらせる対象なのよっ!」


 ガリっとやられた傷口から血がボタボタ垂れる。このままでは血液不足でぶっ倒れる。

 

「せめて花子さんだけでも助けるっ!!」

「させないわ!!」


 花子さんのいる十字架に向かうが、血液不足の影響なのか、走る力が弱く速度がかなり遅い。

 それに対し望女は本当に九尾と対峙してたのかと思う程に攻撃対象を俺に変更し迫ってくる。


「これでも喰らいやがれ…血散攻撃ブラッドアタック!!」


 攻撃名はかっこいいが実際はただ傷口から出る血の量が多いのを利用し、腕を振りまくって血を飛び散らせてうまく相手の目に入れると言う地味に痛い攻撃である。


「ぎゃあああカッコつけの血が私の目にぃい!!」

「…そんなやられ台詞聞いた事無えぞ…はぁ…」


 とはいえ血を飛び散らせているので血液不足になる時間が早まるのだ。当然血液不足の兆候は出ている。


「シキ君…!」

「頼む九尾…!俺もう動けねぇ…お前が代わりに花子さんを助けてやってくれ…!」

「…わかった、シキ君!」


 そういうと九尾は十字架へと走り出す。


「…行かせないわ…!」


 望女は九尾のを足止めをしようとするが、そんな事は俺が許さない。


「お前が行かせねえよ…!」


 俺は最後の力を振り絞り、小太刀を望女にぶっ刺す。


「ぎゃあああああ!!!!!!」


 望女の悲鳴が聞こえる。

 血液不足で遂に目も開けられないのでどこを刺したかはわからないが別にどこでも良い。

 力尽きるまで滅多刺しにする。


 …向こうが思いもよらぬ事だったとしても、花子さんと出会わせた事への怒り、そして、感謝を込めて、俺的にも、望女的にも最後の一刺しを決める。


「…これで……終わ…………」


 そこで俺の意識は途絶えた。



〜結〜



 僕はシキ君に任された…最後とは思いたくない頼み事を任された。


「頼む九尾…!俺もう動けねぇ…お前が代わりに花子さんを助けてやってくれ…!」


 シキ君の為にも、僕は花子さんを助ける。

 後ろで望女の悲鳴が聞こえる。やっぱりシキ君は死なないよね。

 恐らくだが、シキ君の中で決着をつけたのだろう。

 彼にとっての全ての始まりは、桜木望女だから。


 僕は人間態になり、十字架の鎖を力尽くで破壊する。

 そして解き放たれた花子さんの体を抱き抱える。


「…あれ?ここは?」

「目覚めましたか、花子さん。」

「シッキーは?」

「シキ君ならあちらに…シキ君っ!!!」


 シキ君の方を見やるとシキ君は望女の子宮部分に小太刀を刺し、小太刀を握ったまま大量の血を流して倒れていた。


「シッキーっ!!!」


 花子さんはシキ君に駆け寄る。


「シッキー!!ねえシッキー!!しっかりして!!」

「花子さん、学校って電話はあるかい?」

「あるわよ、早く救急車!」

「私が救急車を呼びます!」

「あ!シッキーを裏切った先生!!」

「…貴方は?」

「そうだ、私は裏切ってしまったシキのかつての理解者だ。そんなことよりこれはどう言う状況だ?まさかシキは幽霊と戦ったのか?」


 何で僕らが見えているんだろうと思ったが、シキ君の事を理解していたからなのだろうか?


「…はい。シキ君は悪質な妖怪と戦い、勝ちました。ですが、それと同時に血液不足で倒れてしまいました。早くしないとシキ君が死んでしまう!」

「あぁ、急ごう!」


 救急車を呼び、シキ君を一階へと運ぶ道中。


「…もしかして、シッキーの事、ようやく理解してくれたの?」

「…もしや君がシキに取り憑いていた幽霊かな?」

「うん、そうだよ。あと幽霊じゃなく妖怪です。」

「妖怪だったのか。彼にはとても申し訳ない事をした。だが半年前に彼が君に…トイレの花子さんに急いで会いに行ったとき、私は確信したんだ。彼が言っていた事は本当だったと。」

「てか、何で僕達が見えてるのですか?」

「…実は、シキの事を本当の意味で理解して以来、私にも幽霊の類の物が見えるようになってしまってね。」


 …やはりか。シキ君の事を真に理解すると、幽霊とか妖怪やらが見えるようになるのか。


「…だが、それを言うとかつてのシキのような思いをしてしまうのではないかと思い、ずっと、シキにすら隠して来たんだ。」

「…やっぱり人間って醜いな。」

「何?」

「貴方が妖怪が見えるようになったのなら、それを他の生徒に言ってシキ君の理解者を増やしてあげれば良かったのに、貴方は自分の身を守ってしまった。それって自分の事しか考えてないって事じゃないか。先生が生徒を守り、理解者になってあげなくてどうするんですか!」

「…そうだな。今まで隠してきたが、君の言う通りだ。私は先生であり、生徒を守る理解者なんだ。シキという1人の生徒も守れず、理解してやれずに何が先生だ。」


 …人間は醜い。

 …でも、それでもちゃんと伝えれば、理解し、改心する人間だっているんだ。

 …まぁ一番の理想は自分で気付いて変わる事だが、そんな簡単な事が、人間にはできないから。



 その後、数分後に救急車が来て、シキ君を病院へと運んでもらった。


 …しかし。



 手術室の扉が開いた。


「シキは?シキはどうなったんですか?!」

「…。」

「そんな…嘘ですよね…?!」

「…我々は最善を尽くしました。ですが、かなり時間が経過していたので…。」


 そういうと、医師は歩いていってしまった。


「…そんな…シッキー…。」

「くっ…シキ君…っ!!」

「くそぉっ、わたしがもう少し早く来ていれば!」


 …シッキーが…死んだ。

 もう、シッキーとは一緒に過ごせない。


「そんなの嫌…嫌ぁあああ!!!!」


 アタシの叫びは、その場にいた九尾と、先生だけにしか聞こえなかった。



 カフェにて。


「おお、戻ってきたのじゃ。…あれ?突っ込みたい事が2つ。その人間は誰じゃ?」

「シッキーの真の理解者。シッキーの学校の先生。」

「お初にお目にかかります。」

「お、おう。…で、シキはどうしたのじゃ?」

「…」

「…」

「…」


 アタシ、九尾、先生の3人の沈黙でおたまさんは察した。


「…そうか…。シキ…もっといっぱい話をしたかったのじゃがのう…」




〜数ヶ月前〜



「ていうかお前、その見た目いくらなんでも時代遅れじゃ無えか?」

「…え…そうかな…?」

「もっと可愛い服着ろよ。そんなちびまる◯ちゃんみたいな服装じゃなくてさ。」

「…う…うーん?」


 シキ君の超絶怒涛の注文に私は混乱していたけど、シキ君は止まらない。


「髪型とかも変えたほうが良いな!」

「…ど…どんな髪型が…?」

「何かしょーとろんぐ?だなんだか知らないがそれが一番可愛いらしいぞー」

「…へ…へぇ…」


 と言われてもよくわからないので、とりあえず外に出てみたが。


「…そういえば私…髪型は自分で出来るとはいえ服装はどうにもならないじゃん…」


 そう思ってそこら辺を彷徨っていたら…


「お主、こんな所で何しとるんじゃ?」

「ひゃああぁあ?!」


 突然小さな女の子が話しかけてきた。

 何故私が見えるのかはわからないけど、多分この人も妖怪なんだと思う。


「そーんなに驚く事でも無かろう。どうしたんじゃ?」

「…あ…あのー…髪型と服装を変えたい…良い所知らない…かな?」


 私がそう言うと…


「そんなもん儂が注文通りにしてやるのじゃ。」

「…ほ、本当!?」

「本当なのじゃ。儂について来るのじゃ。」


 そして連れてこられた場所が…。


「ここじゃ。儂のカフェなのじゃ!今日は本当は定休日なんじゃが、特別に入れてやるのじゃ。入るのじゃ。」

「…お、お邪魔しまーす…」


 中に入ると、外見では想像もつかないお洒落な内装が広がっていた。


「いらっしゃい…って、今日は定休日なんじゃないの?」

「仕方ないのじゃ、この子は特別なのじゃ!…というか九尾、お前が言えたことでは無いのじゃ。」

「…え…君もしかしてあの有名な妖怪の…」

「…?僕は九尾だけど?」

「いちいち気にかけてたら話が進まんのじゃ。」


 よくわからないけどとってもメタい!


「じゃあまず髪型じゃな。どんな髪型にしたいのじゃ?」

「…しょーとろんぐ。」

「ショートロングじゃな。任せとけなのじゃ!」



「…いっちょあがりなのじゃ。」

「…わぁ…可愛い…」

「自分に酔うのは後にしてからなのじゃ。次は服装。どんな服装にしたいのじゃ?」

「…か、可愛い…服…」

「ほう…好きな人がいるんじゃな?ええのぉ」

「…はい、相手は人間なんですけど…」


 人間という言葉に九尾さんが反応した。


「人間だとッ?!」

「九尾、お主は黙っとるのじゃ。で、その人間の名は?」

「…ぷらいばしーの侵害になっちゃう…」

「ならニックネームでもええぞ?」

「…じゃあ…シッキー…とか?」

「なるほど、シッキーじゃな?敢えて本名は考察してやらないでおくのじゃ。」



 そんなこんなで髪型も服装もバッチリ!


「…お主、名前はなんという?」

「…花子です。」

「花子か。ええ名じゃな。ちなみに儂はおたまさんじゃ。」

「…あ、ありがとうございます…」

「あとせっかくの可愛い感じなのに口調が引っ込み思案っぽいのじゃが、それ、変えたほうが良いぞ。」

「…え、えぇ…変えろって言われても…」

「じゃあ儂が指導してやるのじゃ!」


 いや、どういうことーーー?!?!




「おおーおかえりー花子さッ?!」

「た、ただいま、し、シッキー…?」


おたまさんに全て選んでもらったり、指導してもらった口調などを全開にしてみる。


「え?し、しシッキー?…てかどうしたんだよその髪型と服装!」

「い、良いでしょ?か、可愛いでしょ?ほ、ほ褒めても良いんだよ?」

「…何か口調変わった?」

「…やっぱり変かな?」

「いや?むしろそっちの方が俺は良いと思うよ!」

「ありがとうシッキー♡大好きだよ♡」


 私はシキ君…いや、アタシはシッキーに抱きついた。

 当時のアタシは相当嬉しかったんだと思う。



「…。」


 シッキーがいない今、アタシはもう喜ぶ事は無いだろう。

 シッキーがいたから今まで頑張ってこれた。

 そのシッキーは…もう…いない。


「まぁそう落ち込むな…って言う方が無理か。」

「無理だよぉ…おたまさん…アタシにとってシッキーがどんな存在か知ってるでしょ…」

「そりゃもちろん知っとるよ。だから掛ける言葉が見つからんのじゃ。」


 もう…シッキーには会えない…二度と会えないんだ。



「そういえば九尾、お前に貸した小太刀はどうしたんじゃ?」

「あ、そういえばシキ君に貸してから返してもらって無いな…」


 九尾がそう言った瞬間。

 九尾の足下に例の小太刀が突き刺さった。


「わりいわりい、貸してもらったっきり返すの忘れてたわ。」


 どこからともなくカフェ中に響いた聞き慣れた声。


「お、お前は…!」

「まさか…!」

「そんなバカな…ありえないのじゃ!」


「シッキー!!」


 そう、そこにいたのは死んだはずのシッキーだった!



「よお、待たせたな!」

「シッキー?!本物のシッキーよね?そうだよね?」

「お、おうそうだよ。逆に偽物の俺ってなんだよ」


 辺りを見回すとみんな俺が現れたことに対してかなり驚いている。

 でも俺が一番驚いた事は。


「なんで先生いんの?!」

「あ、あぁこれには訳があって…」

「どんな訳だよ今すぐ教えろや!」

「いやお前こそ教えるのじゃ!!」

「そうだよシキ君、君は確かに死んだはずだ!」

「ま、みんなからしたらそうだよな。まぁ説明すると…」



望女の悲鳴が聞こえる。

 血液不足で遂に目も開けられないのでどこを刺したかはわからないが別にどこでも良い。

 力尽きるまで滅多刺しにする。


 …向こうが思いもよらぬ事だったとしても、花子さんと出会わせた事への怒り、そして、感謝を込めて、俺的にも、望女的にも最後の一刺しを決める。


「…これで……終わ…………」


 そこで俺の意識は途絶えた。


 しかし、俺の体の中に突然小太刀の妖力と望女の残留妖力が合わさり、一つの新しい妖力となって流れ込んできたのだ。

 お陰で体は幽体離脱し、肉体はそのまま死んでしまったので俺は人間では無くなってしまったが、それでも俺は死んで無い。


「妖怪になった俺は、そういえば小太刀返してねーやと思いカフェへと向かって、カフェに言ったら丁度その話してたからカッコつけて投げたって訳。」

「つ、つまりお主は妖怪になったと言う訳か?!」

「まぁそうなるかな。」

「だから君からこの小太刀の力が感じられるのか。でもどうして僕たちにはなんの影響も無いんだ?」

「知らねーけど多分俺が敵だと思う奴に効果はあるんじゃね?」

「つまりお主は妖怪を倒す妖怪、という事なのか?!」

「何かかっこいいなそれ、でも多分そうだと思う。」


「ねえシッキー。」

「何?花子さん。」

「そろそろ花子さんっていうの、やめない?」

「…わかったよしゃーねーな。」


 空気を読んだのか、おたまさん、九尾、先生はどこかへいった。



「じゃ、これからずっと一緒にいよう、花子ちゃん」



「そうじゃなーーーい!!!!!」

「え?」

「花子って呼んでよ、花子って!」

「ったく、注文の多い客だぜ全く…」

「良いでしょ…これくらい。」




「…じゃあこれからずっと一緒にいような、花子。」

「…うん♡」




ちなみに多分親達には死んだと伝えられるだろうが、俺はこれから、妖怪として生きていくから。


 この後、化夜シキ改め、シキは、正義の妖怪殺しとして妖怪業界を轟かせるのであった。

正直成り行きで書いていたんですが、まさか自分でも主人公が最後妖怪になって終わるとは思ってもいませんでした。


いや、待つのじゃ。


どうしたんですか?おたまさん。


何かハッピーエンドで終わらせとるが、儂の右腕はどうなったんじゃ?


正直あなたはネタキャラ枠なのでギャグ補正でいずれ右腕復活します。


なんじゃあそりゃあ?!意味がわからんのじゃ!てかいずれっていつなのじゃああーーーーー?!

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