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デスラビット


僕とスライム5体+チビスライム1体は、先程その内の一体が敵モンスターとエンカウントしたという場所へと向かっていた。ダンジョン内は薄暗く、しかし魔法の蝋燭が両壁に灯っているため、光魔法や明かりを持たなくても十分に周りの状況を把握することが出来た。


「確かこの辺だったよなー」


僕は通路を進み大きめの部屋に出たところで足を止め、付近を観察する。

ダンジョン内は基本、通路を進んだら部屋があり、通路を進んだら部屋があるという横式のアリの巣のような構造になっている。部屋とは、開けた広場のようなところで、そこでいくつかの分かれ道が出来ていることもある。ただし、通路にはほとんど脇道は存在せず、魔物が通路を通っていた場合、身を潜めることが出来ず強制的にエンカウントという形になってしまう。


「もう別の場所に移動してしまったのだろうか……」


魔物の気配がないことに安堵し、

ふぅ、と胸を撫で下ろす。

当然だ、こちとら初めての戦闘だ。敵モンスターがどんなやつなのかもわからない。出来ることなら素性の知れない魔物との戦闘なんて御免被りたい。しかし、そう考えるのは自分のLVが低いからなんじゃないかと思う節もある。

なぜなら、LVが相手よりも高ければ恐れる必要などないからだ。こちらの方が9割9分強いのだから。

しかも自分のLVは最低の1。これでは自分よりも低いレベルを探すのは無理寄りの無理。てゆーか、レベル0なんているわけがない常識的に考えて。百歩譲って同レベだろう。


「っておい、何食べてるんだよ。ダンジョンに落ちてるものを勝手に捕食しちゃダメだろーが」


さっき何かを捕食してLV2になったスライムがまた道端に落ちてる何かを食っていた。

僕はその物を確認しようとしたが、その前にそれは飲み込まれてしまった。


「ぷるりん」


ぷるりん、じゃねー。なにすまし顔で歩きだしてるんだよ。


「しかもなんか光ってるし……」


こころなしか道端の得体の知れないものを食ったLV2のスライムは薄らぼんやりと発光していた。


「ヤバいものでも食ったんじゃないだろうか。確認もせずに道端のろくでもないものを食うから、副作用みたいなことが起きるんだ。もしも有毒なものだったらどうする。あーあ、勝手に弱って死んでも知らないからな。回復薬も持ってないし」


そういえば、回復系の草はダンジョン内に生えているんだろうか?

生えていたら、無我夢中で取るんだが。冒険者には一本たりとも渡さん。

回復系に関わらず、冒険者に有利になりそうなアイテムは一ミリ足りとも残さん。ダンジョン内のアイテムは全てダンジョンマスターである僕のものだ。全部僕が回収する。


と。

さらに一本通路を進んだ先で、薄っすらと蠢く影がゆらりと傾いた。


「いた……!」


僕は咄嗟に立ち止まる。危機察知スキルがビンビンに反応していた。脳が危険信号を発している。

そして、それはのそりと動いた。

おもむろに、影は巨大な形を顕にする。

頭の先には長い縦耳が生えており、

身体は肥満のような巨体。

普段僕が目にしていたものよりも、それはずっと巨大だった。


デスラビット LV:9


ステータスは現れず、ただ名前とLVが敵モンスターの頭上に表示された。

向こうはまだこちらに気づいている様子はない。


色は黒。

名前の通り、死靈でも背負っているかのような出で立ち。

思っていたものよりも、ずっと巨大で、力強く、手こずりそうな相手だった。


「思ったのとちげー……。これは流石に……死ぬかもな」


ボソッと僕は呟いた。

LV1のザコモンスターが相手になるような敵ではなかった。

極限の選択が迫られる。


逃げるか。

闘うか。


「慎重を期して、いったん戻りたいのは山々だが、立ち向かったとして果たして勝てるのかどうか……」


僕が選択に二の足を踏んでいると。

そいつは何かを感じとったのか、のそりとこちらに方向を変え、鼻をスンスンとかぎ始めた。


「ヤバい、気づかれたか……」


スライムを見ると、スライムたちは既にヤる気満々だった。

バチバチに戦闘態勢決めていた。


「おい、お前ら、我の指示を聞かずに勝手に戦おうとするんじゃない」


僕は声を潜めて言ったが、その言に制約が通らなかったのか、魔物の血が騒ぎ出したスライムたちは意に介さず敵モンスターの方へと向かってしまった。


「グル……ッ!」


案の定、物音を察知してデスラビットがスライムたちに気づく。

デスラビットの顔面は、醜く、口から飛び出した数本の牙からは、ヨダレが滴り落ちていた。


「ああ、終わった、もう終わりだ……」


僕はその威圧的な形相を見て完全に戦意喪失した。情けない。スライムがやられれば、僕は逃げるしかない。


「ぷるー!」

「ぶるり!」

「ぶるりん!」


そこに、前に出た3体のスライムが思いも寄らない咆哮を上げる。

その咆哮に、僕はふと戦意喪失状態から目を覚ました。


「そうだ。我はダンジョンマスターである。このダンジョンを支配するもの。召喚せし主が命じる、スライム共、そこにいるデスラビットを葬り去れ!! 異論は認めん!!」


6体のスライムが咆哮した。


6体のスライムが跳躍する。

デスラビットも怯むことなく強靭な後ろ足を蹴り上げ、巨体を物ともせず物凄い高さで跳躍した。


そして、デスラビットと6体のスライムは、互いに交わらない。デスラビットは軽々とスライムたちを飛び越え、向かう矛先は、なんと、ダンジョンマスターであるこの。


「……ってえ、なんで僕なんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」


鋭い牙が遠くから一気に迫ったかと思うと、前に突き出した杖に突き刺さった。間近でギラリと光る恐怖を象った眼光。


「クソつええええええーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」


僕は一瞬にして後ろの部屋にぶっ飛ばされ背面から床面強打した。


「ガハッ……ッ!」


何度も地面を打ち付ける。意識が吹き飛びそうだ。

ヤツは僕の首筋に噛みつきたかったのだろうが、それを杖を前に出すことによってなんとか一撃即死は回避したのだった。




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