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NAME:ガモス(幼体3体:新2既1)
LV:4
HP:1/24(3/24)→24/24
HP回復ニンジン:9本→6本
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僕とガモス3体は居所の途絶えたスライム探索の為、左右前それぞれ3つの通路の内、まず左側の通路へと入り進んだ。
念の為に持ってきたにんじんはガモスにそれぞれ1本ずつ背負わせたが、残り3本は予備の予備のためと、荷物になるので置いてきた。
「スライムはこっちに進んだようだ」
僕らはスライムが通った進路マップを頼りに、進路マップと同じ道筋を後追いしていた。
とはいっても、何度か行ったり来たりしたり同じ部屋に戻ってきたりして別の通路を選んだ跡も見られるので、そういった場合は端折って、スライムが途絶えた居所まで最短ルートで進んでいる。
「にしても、ホワイトボーンなどのモンスターと出会わないな」
しばらく歩いているが、一向にホワイトボーンなどのモンスターとエンカウントする気配がない。
「2階層初期の段階で、突然湧いたホワイトボーン共5体が嘘のようだ」
あれは一体なんだったのだろうか、とすら思えてくる。
『危機察知』を持ってしても、ホワイトボーン5体が近づいてることにすら気づかなかった。今考えても、あれは異常現象だ。
「罠が発動すると、敵が現れる仕組みにでもなっていたのだろうか……? それならば仕組みが知りたい。それに、罠はあそこだけとは限らない。仮に『罠壁』とでも呼ぼうか。次あれが来たとしても、対策のしようがないしな。強いて言えば仲間と同じ側にいるか、強敵遭遇時の敵との分断に使えるくらいか」
それに罠は『罠壁』だけとも限らない。罠が発動しても回避できるよう、常に頭の片隅に置いておかねば。
「ああ……もしかすると、スライムが罠に引っかかった可能性もあるのか」
足止めではなく攻撃系罠なら敵と遭遇することも、逃げることもなく、なすすべなく殺されてしまったという、辻褄が合う。
「自分が『瞑想』に集中していたせいでスライムの危険信号に気づかなかったという線も、あり得る……『瞑想』スキルも欠点があるな……」
そのおかげで今、動けているわけだが。瞑想時は雑念を消すため探知どころ何らかの信号が送られてきても多分気づけない。
もしかすればまだ使用に不器用なだけで訓練を続けていればもう少し融通が効くようになるかもしれないが。
「それに長く『瞑想』をしたからか後頭部がガンガンする。戦闘や探索に問題はないが、普段使わない分野を使ったからか? 痛ってー」
ズキズキとキーンが混ざった鈍い痛みがある。
「まぁ、それはどうでもいい。今はスライムの安否が何よりも先決だ。もうすぐ居所が途絶えた付近。ガモス共、もしかするとこの辺りに『罠』が仕掛けられている可能性がある。細心の注意を払って進むべし!」
「モンスッ」
「モンスゥ」
「モーンスッ」
ガモス3体が返事をする。
ピ。
ヒュッ。
月型に歪曲した鋭利な通常サイズの鉄のカマが天井から振り子のように降ってきた。
「うわっ。うわさをすれば!」
噂をすれば、ってやつである。警戒していたお陰で、すんでの所で頭を反らして躱す。
「足元がやべーな。罠を警戒するというより、足元のスイッチを警戒したほうがいい。スイッチを踏めば、罠が来ると構えられる。見極め、瞬時の判断が必要になる。聴いてたか。わかったか!」
それまでの独り言を突然ぶつけるようにガモス共に諭す。
トラップの理論。
「モ、モンス」
「モ、モンスゥ」
「モモモ、モーンス!」
案の定、ガモスたちは慌てて返事をする。油断禁物だ!
「スイッチを警戒しろ。スイッチが発動すれば罠が来る。スイッチを踏まないのが一番だが、どこにあるかわからない以上、それは難しい」
スイッチの場所は視覚では判別できない。体験したことはないが、地雷と同じ感覚だろう。罠探知機もなく、土を掘りながら進むわけにもいくまい。
と、考えながら歩いていた時のことだった。
「うわ……」
僕は見てしまう。
「マジかよ……チクショウ……!」
……それは、天井から降ってきた無数の針の罠にかかって辺りに粘液が飛び散り絶命してしまった、レベル4スライムの無残な姿であった。
もしもこいつがレベル4じゃなかったら。『分裂』スキルを覚えていれば。
助かっていた命だったかもしれないのに……。
そう考えると胸がキュウと苦しくなると同時に、にんじんを食べたがっていたがケチってあげなかった時の、スライムの残念そうな仕草を思い出してしまうのだった……。
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