粉砕
「「「シャァァァ!!!」」」
ホワイトボーン5体が『奪取』スキルにより自分の武器を取られたことに腹を立て各々に叫び怒りを顕にする。ジャリジャリジャリーンと敵から奪取したアイテム『錆びた長剣』5本を地面に落とした。
「ふぅー、なんとか厄介な武器を奪うことには成功した。だが、敵を怒らせてしまったようだ。更に今の『奪取』スキルで腕と肩に負担がかかり、肩が動かない。流石にこれ以上のスキル発動は難しいか……」
肩と腕に力が入らず、僕の両腕がぶらんぶらんと垂れ下がる。
「残すは、両手が無防備になった敵の転倒、または粉砕。倒せずとも、この袋小路状態から抜け出せれば御の字。だが両手が使えないのはこちらも同じ。数でも、戦闘力でも、未だに圧倒的に不利な状態。知略と最後の手段で、勝機を引き寄せられるかというところ」
勝てば官軍。負ければ死。弱肉強食の世界。それだけのこと。
「おい、どうした。来ないのか? 来ないなら、こっちから行かせてもらうぞ」
残りMPは16。覚えている魔法スキルはどちらも消費MP5。計3回使える計算だ。
『ファイア』は骨相手に有効なのかわからないが、あまり期待は出来ない。どちらかと言えば、物理攻撃っぽい未だ未使用の『ドスケル』にかけるしかない。
僕は残り10本ほど残っているにんじんの内の1本を取って口に頬張ると、土の味の苦味に耐えながらガクガクの腕を前に出す。
残りMP:16/19
消費MP5:『ファイア』
「死ね!! ファイアー!!」
手の平からホワイトボーン5体を包み込むほどのファイアが放射される。
「ゴ、シャァァァ……ッ!!!!」
敵は注がれる炎に両足をバタつかせて悶え、腕でそれを払おうともがく。
ファイアが消える。
バランバランッ、と2体のホワイトボーンが壊れ地面にバラバラに散らばった。
だが、手応えは薄い。
すぐに『蘇り』スキルで、バラバラになった骨が元に戻る。
ホワイトボーン LV:9
ホワイトボーン LV:8
「「「シャァァァ!!!」」」
「くそ、やっぱダメか……」
しかし、それは想定内。
ファイアは囮。挑発の道具に過ぎない。
奥の手を、最大限に活かすためのブラフ。
「どうした、怖くて手が出せないか。死ね、渾身のファイアー!!」
消費MP5:『ファイア』
まだ警戒している。怒りの沸点に達していない。これを使えば後がないが、怒りなくして勝利は掴めない。目には目を、パニックにはパニックをだ。僕は渾身の2度目のファイアーをお見舞いした。
「「シャァァァ……ッ!!」」
今度は4体ものホワイトボーンがバラバラに崩壊した。
だがやはり、すぐに『蘇り』スキルで再生する。
「「「ゴ、ゴゴゴ、ゴ、シャァァァ!!!」」」
カランカランカランカランと頭蓋骨から湯気が出始める。なんだよ、ここにきてまた新しいスキルか……!?
ホワイトボーンが『ヒート』スキルを発動し、シュゥゥゥ、とホワイトボーンの身体から湯気が出る。
「なんだ『ヒート』スキルって。攻撃力強化系か? あっちー。だが、負けるわけにはいかん!! 来い!!」
熱により湯気の上がったホワイトボーン5体が、僕目掛けて突進してくる。武器のない今、次の敵の攻撃手段は捨て身のタックルだと思っていた。これを待っていた。もし『骨ブーメラン』でも使われたら計画はおじゃんだったが、これなら、使える、最後の手段、『ドスケル』!
運否天賦、お前にかける!!
「ハァーッ、これで終わりだホワイトボーン共! 土へと帰りやがれ、土魔法『ドスケル』!!」
僕は全身全霊をかけて腕を前に出すと土魔法『ドスケル』を発動した。
消費MP5:『ドスケル』
その土魔法は手の平、からではなく、下から現れた。
怒りをぶつけるように向かい来る熱気を伴ったホワイトボーン共5体。
その光景は、絶体絶命の大ピンチ。
されど、最大の好機。敵が接近すればするほど、相手に食らわすダメージは増幅する。
結論から言うと、『ドスケル』とは、攻撃魔法ではなかった。
攻撃魔法ではなく、防御魔法。
下から出現した土のウォールによって、敵からの猛攻を防ぐ技。
だが、怒り狂ったホワイトボーン共の突進力が、そのまま自分に帰ってくることとなった。
勢いそのままにぶつかり、爆ぜる。
ガシャンガシャンガシャガシャーン。
5体全ての骨が、バラバラに霧散した。だが、まだ終わりではない。僕はその骨共が再び再生する前に骨をかき集めると、限界オーバーしている腕を身体のひねりにより無理やり動かすと、『ゴツゴツ拳』を強制的に発動させ、木っ端微塵に粉砕した。
これで本当に、フィニッシュだ。
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