最初の召喚
NAME:ゴブリン
称号:ザコゴブリン
LV:1
HP:10/10
MP:5/5
攻撃力:ゴミ
守備力:カス
素早さ:ザコ
運:0
スキル:『危機察知』
性格:不明
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女悪魔が去ると、禍々しいオーラを放つ空間も消え、僕は現世へと降り立った。
空は闇色に染まり、大地はどこまでもひび割れが続き、荒れていた。人間どころか、動物の気配すら感じられない。
目の前には、女悪魔の残した『召喚杖』が落ちていた。
地面との目線が低く、改めて自分がゴブリンになったことを実感する。
「これが『召喚杖』か……」
ぼくは取り敢えず、目の前の『召喚杖』を拾った。
召喚杖の頭には禍々しい紫色をした勾玉が頑丈に固定されており、持った瞬間生気を吸い取られているような感覚を味わった。この勾玉部分から魔物が召喚されるのだと、感じ取った。
僕は召喚杖を試しに振ってみる。
「悪くないな」
使い心地は悪くなさそうだった。足が疲れたら杖の代わりにもなるし、緊急時にはこの杖で攻撃を躱す必要も出てくるだろう。今はまだ襲われていないからいいが、魔物に転生したからだろうか、生存本能や危機察知能力が常に敏感に周囲に働いているのがわかる。
「痛いのは嫌だ……」
太く短く汚らしい緑色に変色した右腕を見て言った。
殺されたくない、という感情が常に内部から湧き出ている。それは人間に対しても、そして魔物に対してもであった。
「あーあ、ザコゴブリンに転生してしまったのは、痛いな。これも、そうなる運命だったと諦めるしかないけど。本当なら、女悪魔じゃなくて、女神に、勇者にしてもらって新しい人生を歩みたかったけどな……」
おっと、女神という言葉を女悪魔に聞かれたら、殺されてしまう。僕は口をつぐみ、二度と言わないよう『女神』の二文字を胸の奥底に仕舞った。
「よし、愚痴はこの辺にしておくか」
僕はさっそく、『召喚杖』で魔物を召喚することにした。
杖の使用方法は、召喚杖を手にした瞬間に脳に直接流れ込んできていたので、理解できた。
紫の勾玉に向かって、ありったけの魔力を込める。MP5しかないけど。
「……ハァッ!! 出でよ、スライム!!」
杖の先端で円を描き、文言を唱える。
勾玉がそれに反応し、勾玉と描いた円から禍々しいオーラを放ち始めた。
詳しい仕組みはわからないが、魔分が勾玉に反応し依代となる円に目掛けて集まっているのがわかった。魔物が誕生する瞬間である。
ジューワッ……。ボッ。ボボボボンッ。
円の上に浮いた毒色の小さな球体が魔分から生成されたかと思った瞬間、目では追うことの出来ない速度で密度が増え、またたく間にドロリと蠢くスライムが生成された。
それも5体。
NAME:スライム
LV:1
HP:1/5
MP:1/2
攻撃力:1
守備力:1
素早さ:1
運:1
スキル:『粘液』『捕食』
「ぷるん」
「ぶるん」
「ぷるりん」
「ぶるーり」
「ぶるりん」
「……まぁ、こんなもんか」
さすが、THE・雑魚モンスター。
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