速攻
NAME:キングデスラビット:第一階層大ボス
LV:17
攻撃力:?
守備力:?
素早さ:?
運:?
スキル:?
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「よし。速攻で終わらせるぞ。絶対に攻撃はするなよ。相手を撹乱し、疲弊させる。スライム共、行け!」
「ぷるぅ!」
第一階層大ボス、キングデスラビットとの戦闘が始まった。
まず、スライム7体が飛び出し、散開する。
「グーグア……?」
キングデスラビットが、近づいてくる7体のスライムの存在に気づいた。
威圧するキングデスラビットに対して、スライムたちは、バックステップで距離を取った。
キングデスラビットはおもむろに立ち上がると、足に力を入れ、臨戦態勢を取る。その巨体がさらに強調される形となる。
そして、
「グガァ!!」
ガキンッ!
キングデスラビットはさっそく『デスクロー』スキルを発動した。
一撃の殺傷能力は凄まじいが、スライムたちはそれなりに距離を取っているため、難なく躱すことに成功する。
そもそも、交戦する意思はスライムたちにはない。
わざわざ敵の攻撃を食らいに行く必要などないのだ。
躱すことさえできれば……
「ぷるぅ……!!」
「おい、大丈夫か!」
1体が鋭利な爪をもろに食らってしまった。
思っていたよりも行動が素早い。攻撃に一切の迷いがない。だからこそ、その隙をつかれた。攻撃をしない命令をしたことが、逆効果になってしまったのだ。
油断が命取り。
スライムが鋭利な爪により真っ二つに切り裂かれる。
「スライム!! ……って、え?」
「ぷるーっ!」「ぷるぷるーっ!」
真っ二つに引き裂かれたのにも関わらず、そのスライムは2体に『分裂』し、ピンピンしていた。
まさか『分裂』スキルか?!
「しかもHPが減っていない。『分裂』スキルは『増殖』スキルと同じようなものかと思っていたが、攻撃を受けても、確率で分裂し攻撃を無効化するスキルなのだろうか」
だとしたら、使用用途は全く異なる。
だが、攻撃は無効化しても、1個体のHPや他ステータスが半分以下になってしまった。
これでは、次に攻撃されたらひとたまりもない。
いや、1度回避出来ただけでも、御の字か。
「分裂したスライムは、即座に最後尾に下がれ! まだ分裂してないスライムの後ろに隠れつつ、前方敵の警戒を怠るな! 2度はないと思え!」
「ぷるぅ!」
何度『分裂』スキルが発動するかはわからないのだ。不用意に期待するべきではない。
まだ分裂してないスライムは、6体。
ここまで攻撃速度が早いのは想定外だったが、それを認め、今は全スライムで時間を稼ぎ隙を狙うしかない。
「攻撃はするなと言ったが、及び腰では勝てるものも勝てん! もしもの時は、相打ち覚悟で全力で突進せよ!」
「ぶるぅ」
「ぶるーり」
スライムのフットワークがこころなしか早くなったような気がする。
潜在的な魔物の意欲が、高まったのかもしれない。
「そろそろマヒスライムだ。準備はいいか。行け!」
「ぶるぶるー」
「ぷるりー」
マヒスライムが2体同時に飛び出す。
距離を保ちつつ、キングデスラビットの背後を伺う。
マヒスライムがキングデスラビットをマヒさせることなく2体ともやられたらアウトだ。
スライム8体は、かろうじて攻撃を躱している状態。長くは保たない。
「モンスッ!」
「モーンスッ!」
「なに!? お前らも行きたいのか?」
「モンスーッ!」
ガモスが戦いの意思を訴えかける。どうする。今安易に突入するのはそれなりにリスクが高い。
だが、この熱意、尋常じゃない!
「よし、ならお前らを信じる。行って来い!」
GOサインを出した。全ては僕の責。これでガモスが倒れたらかなり痛いが、最終手段、ゴブリンが控えている。まだ大丈夫……たぶん。
ガモスは後ろ足で地面を蹴り上げ、軽々と前方敵へと向かって移動していく。
「モンスーッ!!」
「モーンスッ!!」
「なんだあれ……!?」
ガモスの身体が真っ赤に染まっていく。
ここで未知だった『怒り心頭』スキルが発動したらしい。
身体の染色に合わせて、ガモスのスピードが物凄い勢いで上がっていく。
「グゴウゥ……!!」
キングデスラビットがガモス2体の動きに気づく。
「ウガアッ!!!!」
キングデスラビットも負けじと自慢の脚力でその巨体を飛ばせ、『デスクロー』スキルを発動させた。
だが、その攻撃はガモスに当たらない。
ガモスはその跳躍力を生かして、さらにギアを上げていく。
「は、はえぇ……」
ガモス2体の動きはまるで弾けるポップコーンの如く。
残像すら見えてしまうほどに、目まぐるしく飛び上がっていた。
「モンスーッ!」
「グガア……ッ」
隙をつきガモス1体が後ろから『毒突き』をかます。だが毒にはならなかった。
「モーンスゥ!!」
「ググァ……」
後ろに振りかぶった反対側から、狙っていたもう1体のガモスが背中に鋭利な頭頂を突き刺す。しかし、これも毒にはならなかった。
その後も、何度もガモスが突撃を食らわしたのにも関わらず、毒は一度も付与されなかった。
「くそっ、また毒異常にならないのかよ。なぜだ……! まさか、LV差が関係してたりしないよな……?」
あり得ない話ではない。先程まではたまたま運で100%状態異常が付与されたが、低レベルが高レベルに対して状態異常が効きにくいのは、道理といえば道理だ。
「どうする……このままじゃ、身を挺して突撃したマヒスライムのマヒも効かないって恐れが出てくる。作戦を変えるとして、状態異常のない相手とまともにやりあえるかどうか。状態異常が効かないとすれば、勝率は必然と低くなってしまう」
僕はまだまだ弱いと思い知らされる。
ザコゴブリンだって頭が切れれば強くなれると思っていたが、圧倒的に力不足。
もっと、欲しい。力を。誰にも負けない武力。そして知力が。
「ハァーッ! スキル『ゴツゴツ拳』発動!」
僕は新しく覚えた『ゴツゴツ拳』スキルを発動させた。
まだ使ったことはないが、使える手は全て使う。そうしなければ勝てない、と直感が教えた。
僕の手が岩のように腫れ上がり、まるで石のグローブを付けているかのようにゴツゴツとした突起がいくつも出現した。
ちょっと見た目が気持ち悪いが、これなら鋭い爪に対抗できそうだ。
「スキルポイント5使用! 土魔法スキル『ドスケル』付与!」
さらに僕は即席で魔法スキルを覚えた。
土魔法『ドスケル』。
どんな魔法かわからないが、なんか強そうだ。とりあえず使ってみなきゃわからない。他の魔法はファイアーと同系統そうだったので、保留。
回復魔法を覚えたいが、スキルポイント20必要なのでぜんぜん足りない。
「行くぜキングデスラビット! こいつでケリをつけてやる!」
僕は両拳を合わせてゴツゴツ拳をゴンゴンと打ち鳴らすと、最終ラウンドよろしくキングデスラビットへと向かって飛び出していった。
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