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ダンジョンちゃん2


近場のスライム帰還まであと約15分。ダンジョン内のこの部屋にはガモス2体と僕、そして、目の前にはダンジョンちゃんと名乗る少女が微笑を浮かべて立ちはだかっている。


ダンジョンちゃんとは何者なのか。

味方なのか、敵なのか。

なぜいきなり目の前に現れたのか。

そして、なぜ透けているのか。


疑問が多すぎて、何から聞けばいいのか、話がさっぱりまとまらない。


NAME:ダンジョンちゃん

LV:13


どうやら、本当にダンジョンちゃんという名前らしい。

LVは僕よりも7も高く、ガモスが2体いるとはいえ、今戦えば、返り討ちにあってしまう可能性が高い。

よし、こうなったら、答えてくれるようなら片っ端から聞いてしまえ。


「君は、味方なのか? 敵なのか?」

「私は……味方? 敵? どっち?」


どっち? 

こっちが聞きたいわ!


「なぜ、いきなり目の前に現れた? どうやってここに来た?」

「なんでだろう? 私、寂しくて、気づいたら、ここに来ていたの」

「寂しい? それは、どういう意味?」

「わからないの……」


わからない?

なんでだよ! 自分のことだろ!


「ここは、ダンジョンだぞ? 君は、人間じゃないのか?」

「私は、魔物よ」

「え!?」

「本当よ」


人間と魔物のハーフみたいなのを想像していたが、魔物なのか。

だったら、味方、なのだろうか?


「君は、僕と戦う意思はある?」

「どうしてたたかうの? 私は、たたかいたくないよ」


突然、ダンジョンちゃんの目から涙がこぼれる。

えー!? なんでいきなり泣くの!?


「ご、ごめん、そんなつもりじゃ……」

「えーんえーん」

「ごめんごめんめんごめーん! マジでごめんなさい失言でした!」


少なくとも、戦う意思はなさそうだ。

それに、泣かせてしまった。


「ごめんごめーん。なにそれ、おもしろ~い」

「え?」


ダンジョンちゃんの顔がパッと明るくなりケラケラ笑い出す。

わけわからん。


「ああ、泣き止んで良かった。さっきは疑ってごめんよ。どうやら君は、敵ではないらしい」

「あはは。こんなに笑ったの、はじめて!」

「そう? それは良かった……」


うん? 今の、ちょっと可愛かったな。いや、かなり。ギャップ萌えかな。


「私は、ずっと待っていたの。貴方が、来るのを」

「え?」


急にすごい展開。


「僕を?」

「うん。私は今、このダンジョンの、最下層にいるの」

「最下層って、何階層?」

「全部で、5階」

「あ、そうなんだ」


気軽にすごいこと聞けた。


「てか、最下層にいるって、じゃあ、今ここにいる君は誰なんだ?」

「これも私。でも、本当の私じゃないの」


なに、僕は今、幻影と話しているの?


「本当の私は、最下層にいるよ。本当はもっと、君と遊びたいけど、あんまり長く『スキル』を使えないから……」

「あぁ、スキルを使っていたのか! なんかいきなり現実感湧いてきたな」


スキルに現実感湧くっていうのも、どうかと思うけど。

それにしても、幽霊とか悪霊とかじゃなくてよかった。


安心してくると、僕が目の前の子に対して、気持ち悪い笑みを浮かべてしまっていることに気づいて、顔をひっぱたいた。


「顔が! 顔が! ……あの……もしよかったらだけど、君、じゃなくて、ダンジョンちゃんって……呼んでもいいかい?」

「うん、いいよ!」


ダンジョンちゃんの言葉に、僕の顔が再びふにゃけていくのがわかる。顔! 顔!


「私も、貴方のこと、ゴブリンって呼んでもいい?」

「え? やめてよその呼び方」


やだよそんな呼ばれ方。いくら僕がゴブリンといえど、僕にも最低限のプライドはある。それに、好きな子にそんな呼ばれ方されたくない。

え、今、好きな子って……違う、そっちじゃない。


「どうして? だって、ゴブリンって名前でしょ?」

「うん、まぁ……」


NAME:ゴブリン

LV:4


のゴブリンだけど。


「そ、そうだ。僕はダンジョンマスターだ。僕のことは、マスターと呼んでくれ」

「あ、わかった。じゃあ、ゴブちゃんは? うん、決まり!」

「あの、話聞いてる? だから、僕はダンジョンマスターだから、マスターと……」

「ゴブちゃんがいいよ! そうしよ、ね?」

「ゴブちゃん? なーんか、他にそう呼ばれてるやついっぱいいそうだしな……」

「いいじゃん、私、好きよ」

「!?」


ドキッとした。なんなのだろう、この感情。


「あ、もう、時間……」

「え、うそ」


もう行っちゃうの?


「もっといっぱいお話したかったね。でも、もう少ししたら、いっぱいお話できるよ。ゴブちゃんが、無事に最下層まで来れたら、また、いっぱいお話しようね」

「あ、うん……」

「ずっと、1人だったから、すごく、嬉しかったよ」

「ずっと?」

「うん。私は、このダンジョンを守るためだけに召喚された魔物なの。だから、ずっと、ここで待っていたんだ。新しいダンジョンマスターが、ここに来てくれるのを」


……なるほど。そういうことだったのか。


「良かった、優しい魔物で」

「その言い方もどうかと思うけど」


こちとら魔物だ。その言い方は誤解を生む。敵が現れれば倒すし、目の前に立ちはだかるものは排除しなければいけない。明日は我が身、生きるか死ぬかの、過酷な生活だ。


「最後に、ゴブちゃんに、これをあげるね」


そう言うと、消えかけているダンジョンちゃんは両手を僕の頭にかざして、何かを発動させた。

僕の中に温かいものが流れてくるのがわかる。変な意味じゃないよ。


特殊スキル:ダンジョンの加護(ダンジョンマスター専用)

自分と仲間のHPとMPを全回復することが出来る。一度使用すると消えてしまう。


僕のステータスに、『ダンジョンの加護』スキルが付与された。


「絶対に……死なないでね……」


そう言い残し、ダンジョンちゃんの幻影は完全に消えてしまった。










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