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私、メリーさん。  作者: iris
9/13

九夜 人形の夜 

前回のあらすじ「メリーさんからのメール」

―「女子寮・自室」―


「きちゃった……」


 いやいや。何を言ってるんだ私!これを待ち望んでいたんだろう?するとまた次のメールがやってくる。


―私メリーさん。今○○コンビニの前にいるの。―


 来てる……ここへ確実に来てる。えーと秘策のあれはどこだっけ!?


―私メリーさん。今○○ビルの前にいるの。―


 来たメールに私は目をやる。やばい早い!早すぎる!!ちょ、秘策…秘策はどこに……!


―私メリーさん。今あなたの部屋の前にいるの。―


 いやちょっと待って!!すっ飛ばしてないかな!?ここは一度、あなたの住む女子寮の前にいるの。とか来ていいよね!?


 そんな私の心のツッコミを無視して、直ぐに次のメールがやってくる。


―私メリーさん。今あ・な・た・の・う・し・ろ。―


 今、後ろにいる……ここであの子はメリーさんに何かを尋ねたような話をしていたから……と、とりあえずここで!


「ご用件は何ですか!」


「……私ト遊ビマショウ?」


 今度はパソコンから音声が流れる。


「どうぞ!大したオモチャは用意できないけどいいかな?」


「…………」


 しばらくの沈黙。すると、パソコンに不規則なノイズが入る。それはどんどんひどくなり……そこから……金髪碧眼の西洋人形の顔が出て来る。


「ひっ!」


 私の悲鳴にお構いなしでパソコン画面からその体をその手を使ったり、体を揺らしたりして出てこようとする。決して人のように滑らかな動きはせず、人形劇のようなぎこちない動きをしている。


 動きを観察してあることに気付く。この人形の服装はあの三人を襲う前に着ていた紫を主調とした西洋のアンティークドレスだったことに……そんな事を思っていると完全に画面から出て来て机の上に立ってこちらを見ている。


「…………」


「えーと…………」


 何も言ってこない……どうしよう。人形のせいで表情が読めないから何を話せばいいか分からない。


「大人ノ……女性?」


「え…そ、そうよ!えーと、えと……ミキちゃん知ってる?あなたと遊んだ子なんだけど……」


「エエ!知ッテルワヨ!アノ子ト遊ンデ楽シカッタ!」


「そ、そう……」


 本当に表情が読めない。それに口の動かないタイプの西洋人形なのにどこから声を発してるのだろう?


「それで、私あの子から聞いて……それで、こんな状況で来たって話を聞いたから……」


「アノ子ノ……オ友達?」


「うーん。そこまでじゃないかな?あの時、一回だけだから……」


「フーーン……正直ナンダネ」


「ふぇ!?」


 正直?どういうことだろう?すると人形が机から降りて来てこちらへと歩き始める。


「アナタ……私ニ遊バレルノガ怖インデショ?コノ前ノアイツラミタイニ?」


 心臓が力強く脈を打った。心の中を読んでる?


「ソレデ……私ヲ探シテイテ捕マエヨウトシテルンダヨネ?……怖イお姉サンダネ……」


 メリーさんに言われて、頭の中に警察官として捜査している状況を浮かべてしまう。そしてその時の心境も……。


「私ヲ捕エヨウトスル悪イ人ハ……」


 感情の無い表情で詰め寄ってくるメリーさん……逃げる?高速で走った車に一瞬で追いつくのに?メリーさんが近づくに合わせて、私は後ろへと下がりついに背中が壁にぶつかる。そしてぶつかった拍子でサイドボードから何かが落ちてくる。


「あ!」


 私はそれを手に取る。


「か、かみ!」


「カミ?」


「髪を梳いてあげる!」


「……」


 これでどうなるのか?というのはあるがもうこれしかない!ど、どうだろう……?


「フ、」


「ふ?」


「フフフフ!面白イオ姉サン!怖イノニ私ノ髪ヲ梳イテアゲルナンテ!!」


 め、メリーさんが笑っている?た、助かったのかな?


「イイワヨ?デモ……」


「分かってます!それ以上は何もしません!」


 警察として情けないが、ここは情報収集ということで逮捕するのは諦めよう。ここで死んだら小見先輩に墓前でお説教をくらいそうだし……。すると人形が私の足の上に上がって背中を見せる。


「フフ!ソレジャア、オ願イ!」


「は、はい」


 私は手に持ったブラシを使ってメリーさんの髪を梳き始める。


「うわ……滑らか」


 思わず声が漏れる。ブラシで梳くが引っかかることが無い。ここ仕事のせいでおろそかになっていた自分の髪と比べて羨ましい限り……いや、人形の髪だから材質が違うのか?


「フフ!自慢ノ髪ナノ!」


「へ、へえ~……」


 確かにここまで滑らかだと自慢したくなるのも頷ける。昔、世界が嫉妬する髪へ。とCMがあったけどこんな物なのかな……。


「でもこれだと髪をアレンジするの大変かも……」


「エ?」


 ここまで滑らかだと、編み込んでもすぐ解けそうだし……髪を束ねるヘアゴムはすぐに外れそうだな……。クリップとか…西洋人形ならフリルの付いたカチューシャでもいいかもしれない。


「フフフ……同ジコトヲ言ウノネ。アノ子ト」


「うん?あの子?ミキちゃんのこと?」


「ウウン。ヤヨイチャンガ言ッテタノ。スグホドケチャウ!ッテ」


 ……やよい?この人形の元の持ち主ってこと?メリーさんのお話って人形を捨てたところから始まるんだよね?


「あなたを……捨てた人?」


「捨テテ無イヨ?デモ、遊ンデクレナイノ」


「遊んでくれない?どうして?」


「ウーン……大キナ揺レガアッテ……ヤヨイチャンガ大慌テデ私ヲ連レテドコカニ行コウトシタノ。デモ、今度ハ狭クテ暗イ場所ニ逃ゲテ……マタ揺レガアッテ……ソレカラ何カニ怯エナガラモ私ヲ撫デテクレタノ」


「それって……」


 この人形の言う揺れはここで起きたあの大地震のことだろう。そしてその子は恐らく……。


「ソレカラ遊ンデクレナクナッテ……アマリニモ遊ンデクレナイカラ、誰カ遊ンデ欲シイナ……ッテ思ッテタラ」


「あんな力を手に入れた?」


「ウン」


 もう、この人形が幽霊の類で間違いないだろう。そしてこの人形も本体では無いのかもしれない。


「それなら何で間を空けて遊びに来るの?それに人を殺めたり……誰かと遊んで欲しいんだよね?」


「ワカラナイノ。遊ベル時ト遊ベナイ時ガアッテ機会ガ来タラ遊ビニ出掛ケテタダケ。ソレニ……私、遊ンデタダケダヨ?アレッテ遊ビナンデショ?」


 人を殺めるのが遊び?


「そんな遊びを誰が教えたの?」


「知ラナイワ?遊ビニ行クトソンナ遊ビヲ知ルノ」


 遊びに行くと遊び…いや、殺しを知る?どういうことだろう?


「ア……」


「どうしたの?」


「ソロソロ帰ラナイトイケナイミタイ」


「どうして?」


「分カラナイ」


 分からない?どういうことだろう?


「ソウダ!オ姉チャン!オニゴッコシヨ!」


「え?鬼ごっこ?」


「ウン。ヤヨイチャント一緒ニイルカラ、見ツケテネ!見ツケナイト……」


 そう言って、人形がこちらを見つめてくる。感情の読めない瞳でも何言いたいかは分かってしまった。


「分かったわ。でも、期限は長いと助かるんだけど……」


「エー!!ソレハダメ!」


「いや!だって、あなたがどこにいるか分からないし……少し広すぎるから」


「ムー―……分カッタ。ジャア、2週間ネ!」


「2週間!?そこを……何とか……」


「ダメ!ソレハ譲レナイノ!」


「どうしても?」


「ドウシテモ!!」


 もし、これが本当の子供だったら頬を膨らませて拗ねているのだろう。


「ふふ!分かった」


「……ヤット笑ッタワネ」


「そうね。あ!そうだ」


 私は立ち上がって机の引き出しから、子供の頃に着けていたピンクのリボンが付いた思い出のヘアクリップを取り出して、その人形に付けてあげる。子供用とはいえ人形にとっては大きいので後ろ髪が大きなリボンで隠れてしまった。人形は部屋に置いてある姿見の方を振り返って確認する。


「フフ!」


 人形から笑い声が聞こえる。どうやら気に入ったようだ。


「見つけた時にこれがあればあなただって分かる目印ね」


「エエ!アリガトウ、オ姉サン。ソレジャア……マタネ」


 そう言って、人形は消えていった。一気に静かになった部屋……。時計の音が時を刻む音しか聞こえない……?気になった私はカーテンを開けて窓の外を確認する。


「あ、雨……」


 窓に付く水滴……いつの間にか雨が降っている。ふと、時刻を見ると3時を過ぎていた……。


「とりあえず……寝よう……」


 緊張で疲れた私は部屋の灯りを消してベットの上に横になる。そしてそのまますぐに眠りに就いてしまった。先ほどまで殺人まで起こしているお化けと戯れていたのというのに……。

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