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後悔は伝わらない#0  作者: 赤坂ゆんまよりーの。
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日常の変化ー2

世界は理不尽で残酷だ。

誰かが築いたものは誰かに壊され、

誰かが願った思いは誰かが踏みにじって。


世界は広く美しい。

誰かが苦しんでいる時誰かが助けてくれる。

誰かが何かを成し遂げる時誰かがそれを褒め称える。


それでも世界は、

私達にはひとつの運命しかくれなかった。

だから私は、

どれだけ世界が残酷でも、

どれだけ世界が美しくても、

生きている内は絶対に好きになれないだろう。


ハミィとして生まれた私には、

戦うことしかないのだから。




世界は酷く悲しいものだ。

決して人間が平等になれることはないから。


世界は最高に素晴らしい。

たった1秒の時間で全てが変化している。

決して同じ1秒が存在しない。


なのに世界は、

世界に対して悲しい運命を押し付けようとしている。

だから俺は、

どんだけ世界が酷くても、

どんだけ世界が最高でも、

生きてる内は絶対好きになれない。


所詮ただの人間でただの男でしかない俺は、

運命に流される世界の中の1人でしかないんだから。






(ここに落ちてたのよね···)

山々に囲まれた小さな町。

約半分が究極生命体ヤルダによって汚染され、

約半分がハミィとシルフによって守られた、

今はもう無人の町。

ハミィは首にぶら下げたペンダントを握りしめ、

汚染された地面となんら影響を受けていない町の地面の間に降り立った。

ここで彼女は増殖したヤルダを殲滅し、

ひとつの侵攻を抑えた。

あれから3日。

既に魔力は回復し、

今日の午後までは暇な身であったため、

首に下げたペンダントの持ち主を探すために1度拾った所にやってきた。

きっと持ち主は山をもう1つ超えた先にある町に避難しているだろう。

(小さいものなら、もうちょっと拾って届けてあげれないかしら···)

ハミィは足元を見ながら、

ヤルダと戦った地面の上を歩く。

無残に破壊された家々や、

ヤルダの瘴気に汚染され紫色に変化し腐った植物や家畜が転がっている。

生命のない金属なら汚染されることも無い。

だから何かしら落ちているだろうと思った。

辺りを見回し、

ゆったりと歩きながら散策する。

(そういえば、無線機持ってくるの忘れてた···)


太陽がゆっくりと上へ上へと進んでいく。

ピシンッ

「なに!?」

音に反応し、

ハミィは身構えて周囲を伺う。

明らかに自然の音じゃない。

まるで地面に落ちてるガラスを踏むような、

人が氷の張った水の上を歩くような音だった。

ハミィは音を立てないように、

静かに背に持った剣の柄へ右手を持っていく。

風の音。

草木の揺れる音。

砂利が風に流され破壊された家々にぶつかる音。

自然の発する音を確実に捉えていく。

(そこだ!!)

「はっ!」

一気に剣を抜き、

気配を感じた方向に薙ぐ。

勢いよくふり抜かれた剣はその勢いを更に強め背から頭上、

そして前方へと流れ、

地面スレスレでハミィの腕の力によって止まる。

風のような速さでふり抜かれた剣が、

空気を切り、

カマイタチを形成してハミィが睨む方へと斬りかかり、

歩いて約20歩程にある崩れた小屋を斬り裂いた。

ズバンッと音を立て、

紫色の砂煙と共に小屋の部品が散らばった。

ガラガラと音を立て、

崩れていた小屋が更に原型を無くしていく。

音が鳴り止むと、

落ちきれず舞う砂煙と、

小屋の残骸だけがその場に残った。

(何かを斬った感じがしない···逃げた···?)

ハミィが警戒しながら小屋の残骸へとゆっくり近づく。

動物か虫だったのかもしれない。

ヤルダが残ってるなんて、

そんなわけ···

足元に小屋の残骸が近づいた時、

ハミィは自分が見ているものが信じられなくなった。

いや、

改めて視認したものが、と言うべきかもしれない。


それは、

壊れた小屋の残骸へと擬態し眠りについていたヤルダが、

初めてハミィに見せた、

美しい天使の姿へと変化した瞬間だった。






「ふぅ···こんなもんかね···」

山の中に1人の青年がいた。

彼はカゴにたくさんの野草を入れ、

木陰にあった岩に腰を下ろした。

避難した町から山を登り、

彼の住んでいた町を見下ろせる場所にはまだ届かない、

中途半端な所だった。

「休んだら、見に行ってみるかな···」

もう一度町を見て、

もし下りても良さそうなら行ってみよう。

もしかしたら、

あの時の痕跡があるかもしれない。


宙に浮く少女。

綺麗な翼を持ち、

剣を持った10歳前後の女の子。


あれが夢じゃなくて現実なら、

現実味がないとしても真実でしかない。

彼女が化け物を···倒したのかもしれない。


そう思うと、

より一層、

もう一度見たいと思った。

会って、

話してみたい。


彼は拳を握り、

よしっと気合を入れると、

カゴをそのままに立ちあがり、

山の頂上を目指して歩き始めた。


この時にはまだ、

ハミィはヤルダとは接触しておらず、

落ちてるものがないか散策しているところだった。

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