第二話ー嗚呼、姪姉妹、久しぶりの再会!-
「や、やよいっ。」
「な、何よ!?」
「久しぶりに帰ってきたけど、なぜだか緊張するんだよね、何でだろう!?」
「緊張じゃなくて、ドキドキの間違いじゃない!?これから、わたしとの新生活が始まるんだから!」
「いやいや、東京で1年、シリコンバレーで3年、計4年も一緒に暮らしているやよいに今更ドキドキする訳ないだろう!それにこれは間違いなく緊張だ。」
ードスッー
「いててっ、何するんだ!」
「たまちゃんって、相変わらず、ホントーーーっにデリカシー無いのね!」
やよいのわき腹へのひじ打ちがクリーンヒットし、さっきまでの緊張が一気にほぐれた。やよい、まさか、俺の緊張をほぐすためにわざと、かっ!
「やよい、ありがとう!お陰で緊張がほぐれたよ!」
「何言ってるのよ!ほんっとーにっ、たまちゃんはわたしの求める答えの斜め上を行くのね。緊張ほぐれたならさっさと行くわよ!、春といっても日本はまだまだ寒いんだから!」
「へいへい。」
俺の返答を待たず、ープイッーとしたやよいはさっさとマンションのエントランスに向かった。
ーピンポーンー
良く出来た我が姪は迷うことなく9、0、1の順で番号を押す。
そして、待つこと数秒、インターホンのスピーカーから懐かしい声が聞こえてきた。
「はーい、お姉様、お帰りなさいっ!、あ、あと拓馬様お帰りなさいませ!今開けますね。」
オートロックの扉はすぐに開き、俺たちを迎え入れた。
「ね、ねえ、今の、はづきの声よねっ!ねえっ!」
「多分、そうだな。どうした!?」
「今お姉様って言ってた気がするんですけど!わたしの気のせい!?あの、丁寧語とは無縁の、敬語とは無縁の、あのはづきだよ、何でそんなに冷静なの!?たまちゃんだって、拓馬様って呼ばれてたでしょ!?おかしいでしょ!疑問に思うでしょ!?普通!」
「あ、そっか、やよいはしばらくはづきとはやり取りしてなかったもんな!そうかそうかっ。」
「ん?今たまちゃん何て言ったの?まさかあっちではづきと連絡取ってたの?わたし、はづきのこと、気になっても、我慢してたの知ってるよね?知ってるよね?」
「あ!!ま、まあ、はづきも色々とこの3年間悩みも抱えてたし、思春期ってやつかな。ちょくちょく俺の方に相談の連絡がきてたから、大事な姪を無視する訳にはいかないだろ?」
「それはそうだけど・・・、ちがーう!わたしたち東京離れる前に約束したじゃない!はづきはたまちゃん離れするって!あ、あのアマっ!」
「お、おいっ、自分の妹に対してアマって、口が悪いぞ、やよい!」
「じゃあ、ビッチ、ビッチ確定!」
「更に悪くなってる気がするんだが・・・。」
「さすが、油断ならないわね、はづ吉。たまちゃんははづ吉の本性を知らないからそんな呑気なこと言ってられるんだから。一皮むけばあの女は・・・。」
「お、おい、そんなことよりエレベーター来てるぞ!」
「う、もーっ、わたしも乗るってばー!」
プンプン頬を膨らましたやよいがエレベーターにいそいそと乗り込んだ。
9階には901号室しかない。そのため、迷うことなく部屋の前に辿り着いた。
ーガチャー
そう、そこには3年間で綺麗に成長したはづきの姿があった。
「お兄様、お帰りなさいませ。」