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そもそも異能(俺)と魔法使い(お前)は合っていない。  作者: 千田千代 キグリ
1章:そもそも彼は日本を救ってない。
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Y1:「ガラスの棺で鉄の夢を見る」

少年は孤児であった。

少年は研究所に引き取られた。

少年は実験体にされた。実験体として生きたのだ。

「メスも、のこぎりも、チェンソーも彼の身体を傷つける事が出来なかった」からだ。

誰もが実験体にすらならないと不思議に思った。

しかし、彼にとって毎日は退屈だった。

研究所を壊す力があっても、自身にそんな力があるとは知りえなかった。

彼は毎日五月蠅い機械を自分の身体に取り付けられて、

「防音ガラスの先の研究者の笑い声を聞くのも」飽きてしまったのだ。

飽きたから殺した。一息で殺した。いや、呼吸の間に殺した。

少年の殺戮は1分で終わったのだ。

1分で56人以上の研究者を殺したのだ。



しかし、少年の心は優しいままで、装置を外しても生きていける実験体を開放していった。

そのうちにロボットやキメラも居た。

彼は感謝されて「良い事」をしたのだと思った。

そのうちに「おかしい奴」もいた。「おかしい奴」は少年に告げるのだ。

「た、助けて貰って悪いんじゃが、このままだと日本は終わってしまうんじゃ…

ちょいと手伝ってくれんか?」

「…」

少年は無視した。

「いやいや、ほんとじゃぞ!嘘はついとらん!マジでガチじゃ!本当に信じて!」

「…喋り方おかしい。変なやつ。変な事信じない」

むぐっと何かを喰らった様な声を出す霊体は難しい顔をして次の言葉を言った。

「その力を見込んで頼みがある…。我が妹が我の存在を認知して日本に核を撃ったんじ…撃ちました…」

「かくって何」

「その…この研究所なんて丸ごと吹き飛ばせるような大きな爆弾じゃ!」

口調戻っていたが気にはしなかった。

少年からの印象は、こいつはダメな奴だ、というものだった。

そもそも小さい爆弾をぶつけられたこともあったが、大したダメージを受けなかった。

しかし大きいとダメージが増えるのではないか、と思った。

「…そんなのどうにかできるの」

「その…できぬ。わけではない。彼方には空に障壁を張ってほしいんじゃ。とびきり柔らかい障壁をな」

「しょうへきって…なに」

「か、壁じゃ!こういうのじゃ!」

といって研究所の壁をバシバシ叩く。

「どうやって作るの」

「彼方に力を貸す!どうじゃ、儂の純契約者だぞ!光栄に思えい!」

「…帰る」

「待って!ちょっと言いたかっただけなんじゃ!本当にすまぬ!」

誇るほどもない胸を張ったかと思えば、引き腰になってぷるぷる震える小鹿になるソレは、

いずれ日本の特殊な魔法形態の中心軸ともなるシリーズの本体なのだ。

「も、もう時間がないっ!契約をする!よいな?!」

「……」

「はよう答えい!」

「…いい」

「どっちじゃ!」

「…契約すればいい」

彼女は大きく息を吸った。そしてペラペラと長い言葉を言うのだ。

「禁書としての在り方をここに示す。彼の者を背とし、彼の人生を我が書の在り方とす。

書は此処に始まり、対価である彼の身は我の財産とし、我が力の4割を貸し与え契約を成す。

書の終わりは、汝の死である。それでも良いか?」

「良い」

少年は素早く答えた。彼女の言う事に嘘がないかもしれないと思ったからだろうか。

または、青白い光をビリビリと放ち、共に流れる風が邪魔だったからだろうか。

その瞬間、少年と禁書は繋がれた。青い紐の精神エネルギーを介する事で。

少年には、少しだけ彼女の記憶が流れてきた。難しい話は脳が処理しきれず見れなかった。

ただ彼女が平たい胸と、自分より少しだけ高い背、目はブラック、

黒髪で巫女のような髪型をしているのを確認した。

流れてきた記憶には色々な魔法もあった。そこには確かに、障壁魔法というものがあった。

「契約は果たされたぞ!」

「障壁を張ればいいんだな」

「う、うむ!なんじゃ話し方が変わったのぅ」

「お前の変な記憶が流れてきたんだ。あとちょっと気持ち悪い」

この契約によって少年の精神年齢と、それを裏付ける知識は10歳分は上がっていた。

「わしに変な記憶などないぞ!この世界に落ちてから悪い事もしとらんしな!」

「うるさいうるさい。空に柔らかい障壁を張ればいいんだろうが、張れば。

後は全部任せていいんだな?」

「うむ!物分かりが良くて助かるが…その容姿で言われると違和感があるのぅ…」

「行くぞ。なんだかんだで日本が嫌いじゃないんだろ」

「ま、待つのじゃ!早い早いぞ!」

足早に日本を守るソレと、核を撃ちこまれる原因であるソレは共に歩みだしたのだ。

軽く日本という国を変えに。


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