緑<13>
氷の隣りに座ったものの、肌寒くなって来た。
「そろそろ、中に戻る?」
その言葉で氷はやっと、私の方を見てくれた。
「このまま、帰っちゃいけないかな?」
…毎年ほぼ慣例化している学校主催の懇親会を途中で抜けても問題はない。
ましてや、先程の一件があるので堂々と抜けられるだろう。
問題があるとすれば、私が氷とダンスしたかっただけで…。
「せめて、一回だけ踊ろう」
そう駄目元で言ってみた。
「分かった」
…まさかダンスしてくれるとは思ってなかった。
そのまま中庭でダンスする事になり、踊ってみると上手な方だった。
もう一回踊りたかったが、またの機会にする事にした。
私達には、まだまだたくさんの時間がある。
だから、焦らずゆっくり行こう。
懇親会を何事もなく抜けて、私の家の車で帰る事になった。
それにしても今回の一件で、私の気持ちが変わってきている事に気が付いた。
茜への想いは、すでに過去のいい思い出になっている。
逆に氷の事はというと…。
(友達以上恋人未満…)
そう思っていたみたいだ。
つまり、新しい恋が始まりそうなのだ。
「氷…」
私の膝を枕にして、寝てしまった氷。
小さく名前を呼び、頭をゆっくり撫でた。
氷は、すっかり私に気を許している。
始めは、警戒していたのに…。
私は、氷を見つめた。
そして、頭を撫でていない手で軽く氷の唇を触った。
そう言えば、キスはまだ出来ていなかった。
氷の初めては、全て私の物になる。
だから焦らず確実に手に入れる予定だ。
「ふふ♪…」
(…氷は私の物になる)
少し、執着しすぎだろうか?
きっと諦めない恋が出来そうだから、手放したくなくて恋になる前から執着しているのだ。
氷には、悪いが絶対に結婚してもらう。
(逃がしてあげない。)
逃げるなら、恋人にした理由を話した後にでも別れたら良かったのに…。
今更逃げようとしても、もう遅い。




