緑<4>
「緑…、本当にそれで良かったの?」
もう決めた事だから…。
「私の妹を本当に好きなのかしら?」
………。
「貴女がそれで納得しているのなら、私はもう何も言わないわ。でも、ちゃんとその子を見てあげなさいね…」
…努力する。
「私を何故…」
ごめんなさい…。
利用する為に恋人にしてしまって、本当にごめんなさい。
私はかなりの熱にうなされて、目が覚めた。
「…夢…」
正確には、氷を恋人にしてから皆に色々言われた時の記憶だが…。
あの時氷は、何を言いたかったのだろう?
聞きたいが、聴きたくないとも思う。
「どっちにしろ、今は聞けない…。」
そう呟き、せきこんでしまった。
氷を恋人にしてから、もうすぐ一週間がたつのにまだ、恋人らしい事をしていなかった。
それどころか、全く会っていない。
私のファン達や元カノ達,周囲の騒ぎなどを落ち着かせたり、氷に何かしないよう忠告したりしていて会えなかったのだ。
やっと落ち着いたと思えば、今度は私が風邪を引いてしまった。
まぁ、忙しさを理由に会いたくなかったのかも知れない。
会って、どうして恋人にしたのかと聞かれるのが嫌だった。
風邪のせいか色々考えてしまう。
また、寝てしまおうかな。
次に目が覚めた時、側に氷がいた。
「あ、起きました?」
何故、私の部屋に?
「どうしてここに?」
私の問い掛けに氷は、困った顔をした。
「一応恋人らしいので、お見舞いに来たんですけど…。寝ていたので、帰るつもりが緑さんのお母さんが泊まっていけと…。しかも、家に連絡してお泊まりする事になっちゃいまして…」
…恐らく、母が余計な気を使ったようだ。
しばらく会えていなかったから、明日丁度休日だし…とでも考えたのだろう。
この機会にもう少し、仲良くなっておきなさいと言うことだ。
「母が余計な事を…」
ため息混じりに言った私に氷は、何故か笑った。
「フフ♪別に構いませんよ。せっかくだし泊まって行きます。ついでに緑さんの看病もしてあげますね」
何故か楽しそうだった。
「緑でいい。敬語もいらない…恋人だから…」
「分かった。…そう言えば恋人だったね。忘れてた」
忘れてた?
「むぅ…もう忘れないで」
「分かってる。だから、恋人にした理由教えてね?」
氷は、まっすぐ私を見ながらそう言った。
私は、仕方なくうなずいてしまった。