二人
それから俺はなすすべもなく1日1日、時を過ごした。俺は何も考えないようにしていた。
もしかしたら数字なんてなんの意味もなさない、ただの羅列なのかもしれない。そんなことだって考えていた。ただただ、俺は目の前の闇から逃げていた。
ついにあれから一週間が経とうとしていた。友の数字は1へと変化していた。
俺達は放課後、またあの丘にいた。
俺は口を開いた。「なぁ、この前言った話だけどさ」「何のことだよ」
次のセリフをいうまで、俺は何度もためらった。そのせいか気味の悪い間が出来てしまった。
「何もないなら、俺そろそろ帰るわ」「いや、待ってくれ」「だったら早く言えよ」
「お前の上にある数字、もう1になってるんだ」
「なんだ、またその話かよ。 俺は信じねーぜ」
「そうか…」
「ショウ。」「…どうした?」
「お前の将来の夢ってなんだ?」
唐突な質問に少し驚いた。
「まずは良い大学に入って、その後は大手企業に就職して、結婚もしたいし家族も作りたい。そんで老後はお金のことに困らないように必死に働いて…」
「そうか。」
「なんで急にそんなこと聞くんだ?」「…疲れないか? 後先考えるの。」「えっ」
「俺はなぁ、将来の夢なんかないんだ。だって俺達が生きてるのは未来じゃなくて今なんだぜ。
今を楽しめれば、もうそれでいい。」
俺は何も言うことは出来なかった。確かにそのとおりだ、コウ。
「ほら上見てみろ」
気づいたら辺りは暗くなっていた。空を見て俺は息を飲んだ。友は口を開いた。
「綺麗だな…満天の星空。」「あぁ」「星だって今を生きてるからあんなに光ることが出来るんだぜ。''日"を''生きる"、その二つが合わさって星って漢字が出来たんだろうな。」
妙に感心してしまった。
「このままずっとこうやって寝そべっていたいな」
そうだ、このままずーっとこうして…
「あっ!!」
突然、コウが叫んだ。
「ヤベー!門限過ぎてるし!!」「俺も過ぎてる!」「走るぞ!!」
二人は全速力で夜を駆けた。
全身脈動している。心臓が必死に俺の体中へ血液を送る。俺は必死に空気を取り込む。
俺は生きてるんだ。そしてコウも。今を生きてるんだ。
「じゃあ俺ここで曲がるわ!また明日な!」コウはそう言い残して交差点へと駆け出した。
「気をつけて帰れよ!!」…聞こえてねえか。
「…!!」俺は胸を抑えた。なんだこの動悸は…!?
瞬間、俺の前でものすごい音がした。




