生まれた意味
気づけば彼女と出会ってから1ヶ月が経とうとしていた。おそらく現在、頭上の数字は20になっているだろう。
また何の前触れもなく死へとつながってしまうのだろうか…。まるで神がそれを望んでいるかのように。
死なせない。もう誰も死なせやしない。
俺が運命を変えてやる。
次の日もまた彼女に会いに行った。しかし病室には誰もいなかった。俺は近くにいる看護師に話しかけた。
「あの、この部屋の患者は…?」「ミツキさんのことですか?ミツキさんなら多分屋上ですね。」「屋上?」「よく行かれます。」
看護師に礼をし、俺は屋上に向かった。
空は一面曇っている。光が差し込みそうな気配もない。地平線の彼方まで同じ景色が広がってい
る。
確かに彼女は屋上にいた。独りで曇天の下、ボロいベンチに腰掛けていた。しかしその背中はいつもより小さく見えた。
「おい。」その声に反応し、振り返った彼女はいつもの朗らかな笑顔ではなかった。前と比べて少しやせ細っているし、元気がなさそうだ。
しかし俺を見て彼女はいつもの様子に戻った。
「ショウ君!」「元気か?」「すごい元気!いぇーい!」
「お前涙流してないか?」「えっ」
一瞬の沈黙が流れた。
「あくびだよー、眠いなーって。」
俺は彼女の横に座った。いつもに比べて会話が続かない。
「ねぇショウ君。」「どうした。」「私達ってさ、死んだらどこに行くんだろう。」
思いがけない問いかけに少し驚く。
「どこって…」「よく考えるんだ。でも誰もその答えを教えてくれない、当たり前だけどね。」
「…。」「もしかしたらまた違う人として生き返ったりするのかな。それともずうっと眠ってる状態だったりして。」
「そうかもな。」
「もう二度と今までみたいな暮らしは出来ないんだね…。」
そうだ、死んでしまったらもう何も出来ない。生まれ変わるにしても前世の記憶は消えてしまうのだろう。だったら何故俺達は生きているのだろうか。
彼女の一言は長い静寂を作った。
「ごめんね、変なこと聞いちゃって。」
「お前いつもそんな事考えているのか?」「暇なんだもん。」
「安心しろ。人はそう簡単には死なない。」
また嘘をついてしまった。
「わかってる。長い人生まだ始まったばかりだもんね!」
彼女はいつもの笑顔を取り戻した。
南の空が光った。どうやら雷らしい。
この調子だともうすぐ大粒の雨が降る。その前に帰らなければ。
「じゃあそろそろ帰るか」「帰り道気を付けてね。」「あぁ。」
「今日はありがとう。なんだか少し気が楽になった。」
「また明日な。」「うん!バイバイ!」
病院を出て俺は走り続けた。結局雨が降ってしまい濡れてしまった。俺は息を切らしながら家のドアを開いた。
今日はいつもよりも静かだったな。何かあったのだろうか。心配だ。
俺があいつを救ってやる。
そういえば今日あいつも言っていたが人は死んだ後どこへ行くのだろうか。空の星となって俺達を見守っているのだろうか。
コウ。お前は今どこへいるんだろう。
それは永遠に分からないことであろう。分かる必要もないことだ。
いろいろと考えている内に眠くなってしまい俺は自然と目を閉じた。




